それでは次はもっと根本的で根深い問題点について説明しましょう。
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・作品の理解不足、文化と言葉の壁
やはり日米文化の違いというか、「なぜこのキャラクターはこう行動し、こう発言するのか」という部分がわかりにくいのだと思います。浪花節、義理人情ではないですが、アメリカ人には馴染みの無い概念・観念や習慣が出てきたりするわけで。
そういったところで役者さんが今ひとつ感情移入できない、なれきれない、というのがあるのではないでしょうか。
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例えば…
バレンタインデーのエピソードがあったとしましょう。なぜ女の子が男の子にチョコを渡すのがそんなに大事なのか?となる訳です。
こちらでは、バレンタインデーは逆にどちらかというと男の子が恋人に花束を贈ったり、女の子にロマンティックなことをして喜ばせる、というレディーファーストなイメージなので。
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先輩・後輩もわかりにくい。
確かに目上に対しては敬うべき、という考えはありますが、学年や年齢の僅かな差で上下関係が築かれるというのは日本ほど顕著ではありません。年功序列式ではなく、能力評価主義だからです。
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あと鼻血。(笑)日本でもかなり記号的に使われていますが、アメリカ人にはなぜ(性的に)興奮すると鼻血なのか、意味不明です。
頭に血が上った状態、つまりのぼせてるんだよ、と説明してもまだ「?」。赤顔で頭から蒸気が噴出してる方がまだわかりやすいのかもしれません。
…というように、挙げだしたらきりがないくらいです。
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また、これに関しては翻訳台本のクオリティにも左右されるでしょう。あまりにもクオリティの低い文字通りの翻訳だと、「通常アメリカ人はこんな言い方はしない」という表現がたくさん出てきてしまうのです。
日本で放送されている海外ドラマのクレジットには必ずそうした部分を馴染み深い表現に言い直す演出がなされています。そうした必要に応じてアダプテーション(翻案)を適度に適量行えるだけの人材がいないのだと思われます。
日本は長年、アメリカのテレビ番組や映画を輸入し続けてきたこともあり、そうしたノウハウや翻訳者・演出家の層も厚くなっていますが、アメリカではまだまだ経験不足と人材不足でそこまでのレベルに達していない、というのが現実です。
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・プロデューサー不足
上で述べたことにつながってきますが、そうした理解力と判断は北米版制作を担当しているプロデューサーの裁量によってもかわってきます。
日本でも収録時には監督や演出家がブースに入り、声優に対して演技指導をしていますが、それはこの人たちが一番作品を理解しているからに他なりません。
キャラクターの背景や、ストーリーの展開についてわかっているからこそ、「ここはこう演じるべき」という指示が出せるんですね。それができる人が、こちらでは不足している、というところでしょうか。
ローカライズプロデューサーって、脚光を浴びることはまずありませんが、本当はすごく大事なんですよ。こちらでの作品の見せ方を統括指揮していますから。
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おまけ1:
ロサンゼルスで収録される場合、ハリウッドのお膝元という土地柄からか俳優を目指す人たちが声をあてることが多いようです。風の噂では、元パワーレンジャーの俳優さんが声優業に転向したそうです。LA以外の収録地としては、カナダのバンクーバー(話数の多い作品が主)、テキサス州ヒューストン(ADVのお膝元)が挙げられます。
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ここで、ぶっちゃけ話として私の中で吹替えクオリティ評価の高い作品をご紹介しましょう。
私の中で「アテレコのできのよい作品」は多くがBEIから出ている作品です。これもプロデューサー次第で差があるのですが、Cowboy Bebop、Wolf's Rain、Ghost in the Shell Stand Alone Complex、などは聞いていてさほど違和感はありません。
特にWolf's Rainは声質なども似た声優を起用しており、狼の一人(一匹?)トオボエなどは聞いていてそっくりで感心しました。(日本では男性声優ですが、こちらでは女性声優でした。)
他にもFUNimationから出ているFullmetal Alchemistも悪くないと思います。(さすがに日本のメガヒット作の権利争奪戦で勝ったからには、総力を挙げての現地版制作だったに違いありません。)
Geneon USAのサムライチャンプルーも現在こちらで人気がありますが、この吹替えもよくできています。
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あとさすがにディズニーが本腰入れているせいもあり、あるいはピクサー社のジョン・ラセター氏の熱意のおかげで、最近のジブリ作品の英語版はよくできています。
「ハウルの動く城(Howl's Moving Castle)」でハウルのナルシーなセリフ"Life isnot worth living if I can't be beautiful!"は人々の笑いを取ってました。
かなりの手間とお金をかけて有能な演出家と有名俳優をひっぱってきているので、違和感がほとんどなく、でもオリジナルに忠実な現地版を制作できることを実証しています。
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おまけ2:
「千と千尋の神隠し(Spirited Away)」の吹替えも秀逸ですが、北米版には日本語版と違いがあるのをご存知ですか?作品一番最後のセリフ、あれは演出家の判断により付け加えたものだそうです。(日本語オリジナルではセリフはありません。)
でも確かにあのセリフがあるのとないのとでは、こちらの観客の作品に対する理解度も変わってくるので、私的には的確なものだと思っています。
ただし、果たして他の配給会社が同じようなことができるのか?と問われれば、残念ながら答えはノーです。現状では、そこまでできる市場規模と体力がないからです。
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ちょっと夢のない話になっちゃったでしょうか?
いやいや、そうした様々な限界や困難と向かいながら、それでもこの業界に生きる人たちはがんばっているのです。もっと多くの有能な現地版制作のプロデューサーが育ってくれることを私は願っています。
20年前に比べれば、よりオリジナルを尊重したつくりになり、リリース本数も確実に増えているのですから、不可能ではないはずです。
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