3月28日、東京・有楽町で、マンガ大賞2008の大賞作品が発表された。二次選考まで通過した12作品の中から、石塚真一さんの『岳』が選出された。 『岳』は小学館のビッグコミックオリジナルに掲載されている。山岳救助隊の主人公を中心に、骨太な人間模様が描かれる。受賞者の石塚真一さんによれば真っ当なであることを目指した作品で、多くの人に受け入れら易い物語が魅力になっている。 今回のノミネートには、よしながふみさんの3作品『フラワー・オブ・ライフ』、『大奥』、『きのう何食べた?』のほか、あずまきよひこさんの『よつばと!』、吉田秋生さんの『海街 diary1 蝉時雨のやむ頃』といったキャリアも知名度ある作品が多かった。 そのなかで今回の『岳』が最初の連載作品という石塚真一さんが選考委員の得票ポイントで68ポイントと、2位以下に圧倒的な差をつけて選ばれた。2位は『よつばと』49ポイント、3位は『海街 diary1 蝉時雨のやむ頃』の43ポイントである。 マンガ大賞は、今年から始まった賞でマンガ好きが、人に勧めたい本を基準に選考委員の投票で選出する。賞がユニークなのは、特定のスポンサーを持たない完全に中立な組織によって選ばれていることである。会の運営も完全なボランティアで行われている。 選考委員には、マンガ編集者は勿論、マンガ家も入っていないという徹底ぶりである。また、投票対象を8巻までに絞ることで、比較的連載初期にある若い作品を評価の対象とする。これは、これより長い作品は、既に世間にその評価は行き渡っていると判断するためである。 国内には既に数多くのマンガ関連の賞があるが、その多くは長年活躍する作家や作品に対する功労賞的な意味合いが大きい。 それに対してマンガ大賞2008は、作品主義、現在進行形の面白い作品を積極的に紹介する意図が感じられる。 授賞式で挨拶に立った石塚真一氏さんは、「この賞は登山に例えるなら、海抜0メートルから富士山に登るような賞、車で5合目まで行ってそこから登山するのとは異なる。それだけに凄くうれしい。」と喜びを語った。 また、「長年マンガを描きたいと思っていたが、ようやくマンガを描けると思ったのが28歳」とマンガを描くきっかけなどを述べた。さらに、「より多くの人に作品を読んで欲しい」と言い、自分のキャリアは今回、ようやく一次面接を通ったようなものという。今回の受賞で、作品がより多くの人に読まれるようになるのは間違いないだろう。 マンガ大賞は今までにないタイプの賞として、ノミネート作品発表時から大きな話題となった。主催者は来年以降も開催を続けたいとしている。 より多くの優れた作品を広げるためにも、今後にも期待したい。また、優れた作品の紹介という点では、今回大賞を受賞した『岳』以外のノミネート作品もチェックしたいところだ。 マンガ大賞2008公式サイト /http://www.mangataisho.com/マンガ大賞最終選考ノミネート作品49P 『よつばと!』 あずまきよひこ43P 『海街 diary1 蝉時雨のやむ頃』 吉田秋生43P 『フラワー・オブ・ライフ』 よしながふみ42P 『君に届け』 椎名軽穂40P 『大奥』 よしながふみ35P 『皇国の守護者』 佐藤大輔 伊藤悠27P 『とめはねっ! 鈴里高校書道部』 河合克敏26P 『もやしもん』 石川雅之23P 『夏目友人帳』 緑川ゆき20P 『ひまわりっ 〜健一レジェンド〜』 東村アキコ19P 『きのう何食べた?』 よしながふみ