しかし、このなかに神山健治の名前を並べる人も少なくないだろう。それは『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』で見せたドラマ性、揺るぎなく構築された近未来の舞台設定、『精霊の守り人』での豊かな物語、世界観の構築を見れば、納得の行くものだ。 ところが神山健治は、先に挙げた3人と異なり長編劇場アニメを監督したことがない。アニメに限らず監督は、映画で評価されることで初めて地位を確固とする雰囲気のある映像の世界ではやや意外な経歴だ。
実際は、神山健治は、この連載中にオムニバス映画『真・女立喰師列伝』のなかの一編『Dandelion 学食のマブ』を撮っている。また、2006年の『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』の長編『Solid State Society』は劇場公開されてはいないが、その作りはまさに映画だった。(東京国際映画祭でスクリーン上映されている) にもかかわらず今回書籍化にあたりタイトルに、連載どおりの『映画は撮ったことがない』を残している。ここに、この本の意図する全てが詰まっている。