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『イヴの時間 劇場版』 吉浦康裕監督インタビュー その2

(2009年12月)■ 監督はずっとチームで作りたいと思っていた ■ 次は『イヴの時間』でなくてアクションぽいものも 吉浦康裕監督インタビュー

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■ インターネットとインディーズと

AA
『イヴの時間』はインターネット発という定冠詞がよくつきますが、これについてはどう思いますか。

吉浦
実は最初作っている時は、発表媒体はまだ決まっていなかったんです。将来的なことを考えてハイビジョンで制作していたくらいですし、絵の見せ方もむしろ映画っぽかったですね。
作っていく最中で発表媒体が決まったので、実はウェブ配信を前提とした映像作りは全く意識していなかったんですよ。

AA
ネット発を意識してでなく、たまたまネットだった、それが劇場になったみたいな感じでしょうか。

吉浦
そうですね。結果として「ネット発」というのはいい宣伝文句になりましたので、それはそれでいいかなとは思っています。これからはそういった発表形式のアニメも増えていくでしょうけど、そのような定冠詞が付けられるのは最初期につくった特権ということで、そこは素直に喜んでいます(笑)。

AA
もうひとつ『イヴの時間』を取り上げるときに、インディーズとして取り上げられることも多いのですが、でも今回劇場公開もしたし、「Yahoo!」で流しているし、これはメジャーだなと思えます。吉浦さん自身の考えるインディーズというのはどういったものですか。

吉浦
確かに自分の制作形態も、インディーズと言われる所以は少なくなってきました。まあそういったくくりは僕本人と言うよりは、むしろ他者が決めることだと思うので。
プロダクションアニメとインディーズアニメといった分け方ではなくて、今後はもっと多様な作り方のアニメが出現してきて、発表形式も多チャンネル化していくのでは?と考えることはあります。

■ 映画では1話から5話全カットほぼやり直している

AA
最後に映画でここが変わったといのはご紹介いただけますか。

吉浦
劇場アニメに関する見どころは、もちろん新規シーンの追加もそうですが、それ以外にほぼ全編劇場版のために絵や音をやり直しています。そこは劇場で見るとまた全然違うと思います。

AA  違った体験ができますという感じですか。

吉浦
実際に1話から5話に関して、ほぼ全カットやり直しているんです。1話を作ったのが2008年で、6話を完成させたのがそのほぼ1年後ですので、ノウハウもだんだん変わってきました。6話までで積み重ねた技術でもう一度1話から5話までをやり直したいなと考えて、撮影や編集を再修正していったんです。

また色んな箇所でアフレコを一部変えたりもしています。細かいところで言うと、3話でリクオが下手をやらかしてコージとリナが痴話喧嘩するシーン、映画版はリクオのセリフと表情が変わっています。
「リクオがあまりにも空気を読めなさすぎだ」と言われて、自分もなるほどそうだと納得して…。それで6話の収録の時に福山さんにお願いして、そこだけもう1回セリフを入れ直してもらいました。それで多少はリクオの性格がまともになっています(笑)。

AA  もうひとつだけお願いします。ラストシーンを付け加えられた意図は。

吉浦
見ての通り、スタッフロールからその後のラストシーンに至る流れは、一つの大きな物語になっています。皆さん『イヴ』を6話まで見終わって気になっているのは、やはりシオツキという存在…それからナギさんに関することじゃないかなと思いまして。だからそこに対して全回答じゃないけれども、ある程度見せられたら良いんじゃないか、と思いました。

実は企画当初、ナギはもっとメインヒロインのつもりだったんですよ。ただ、実際に話を転がし始めるとサミィに押されちゃって(笑)。だから配信版のラストはサミィエンドだったんですけれども、劇場版はナギさんでいこうと。そういう思いは前からずっとあったんですよ。

吉浦
だからエンディングからの流れは結構気に入ってます。実は当初、例のエンドクレジットシーンは無かったんです。でもKalafinaさんの曲を聞いて…というか聞きながら「ここで何か物語がもう1個作れるじゃないか」と速攻でコンテが浮かんだんです。歌を聴きながらそれに合うイメージとして物語を作って、そうしたら今度は作詞、作曲の梶浦さんが絵をもとにまたちょっと歌詞を変えてくれたりしました。

AA  素晴らしいですね。

吉浦  
だから絵と歌の整合性はすごく合致していて、相乗効果で心に残るシーンになったと思います。

AA
それを聞いたらもう一度よく観ないといけないですね。本日はお忙しいなかもありがとうございました。

吉浦  はい、ありがとうございます。

AA  次回作を期待しております。
《animeanime》
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