舞台「龍が如く」泣かせる硬派なヒューマンドラマ 2ページ目 | アニメ!アニメ!

舞台「龍が如く」泣かせる硬派なヒューマンドラマ

高浩美の アニメ×ステージ&ミュージカル談義  ■ 待望の舞台化「生き生きとキャラクターが描かれています」

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■ ゲームファンのよく知っているエピソードや演出が満載、ゲーム以上に世界観が広がる

舞台のセットは至ってシンプル。冒頭は桐生の逮捕シーン、いきなり緊迫した空気に包まれる。銃を構える警察官、桐生は親殺しの汚名を着せられて逮捕される。10年の月日が流れ、桐生は出所した。施設で育った桐生一馬、親の愛を知らない。アウトローな桐生を滝川英治が”体現”する。舞台映えする長身、登場した途端に空気が変わる。

幼なじみの錦山彰役は佐野岳が演じる。桐生に対してはある種のコンプレックスを匂わせ、負の感情に押しつぶされているやるせなさを感じる。同じく幼なじみの澤村由美、2人の妹分で、可愛い存在。同じ施設で共に育った仲間なのだが、どこでボタンを掛け違えたのだろうか、ちょっと切なくなる関係性。極道の世界、義理堅い桐生は風間新太郎の信頼も厚い。しかし、対立関係にある組にとっては桐生は強敵だ。背中の入れ墨は応龍であることから、堂島組構成員時代の桐生の異名は”堂島の龍”である。
桐生を殺したいと執拗に追いかける窪塚俊介演じる真島吾朗、その挙動や笑い声、また「桐生ちゃ~ん」と桐生を呼ぶ声には限りない狂気を感じさせて不気味さが漂う。桐生が慕う風間演じる名高達男は立ち振る舞いに風格を感じる。こと切れる場面ではある告白をして桐生に許しを乞う。人間・風間を感じる瞬間だ。

それにしても、キャスティングはなかなか見事である。大島宇三郎演じる嶋野太、もはや強面の極道にしか見えないし、芋洗坂係長のサイの花屋もなかなかのものだ。神宮京平役の加納幸和、裏社会に通じている腹黒い政治家、さすがの演技力で場面を引き締める。
伊藤高史他、どのキャストもぴったりと役にはまっていて『龍が如く』の世界を舞台に蘇らせる。アクションシーンのゲーム感あふれる動きや効果音、また、スクリーンに映し出されるゲーム同様の映像(人物が止まり、スクリーンに所属組織名と人物の名前が出る等)、その他、家庭用ゲームの演出が随所に登場するが、これが舞台効果として上手くハマっている。映像に凝りすぎることなく、あくまでも”舞台”であることを尊重した使い方で、ここはクリエイターのセンスが光る。

桐生は極道で強面だが、性格は優しく、親代わりの風間にはとことん忠義を尽くす。しかし、やくざ故に裏社会でしか生きられない。しかもやっかいな極道同士の抗争に巻き込まれるも、敢然と立ち向かう。少女・遥と出会い、遥を守る。己の孤独故に遥にはどこまでも優しい桐生だ。クライマックスはドキドキする展開で、ラストは感涙。

ゲームファンにとってはよく知っているエピソードが満載で、“ゲームではこんな感じだが、舞台では果たしてどうなっているのか”といったところが観劇ポイントになっているが、ここは期待以上、臨場感たっぷり。生身の人間が演じているので、もはや“リアルにそこにいる”という状況。ゲームを跳び超えてしっかりとした硬派なヒューマンドラマになっていた。
登場人物全てがどこか物哀しい。いわゆる悪役でもそのバックボーンには何か辛い過去があるのでは、と思ってしまう。ゲームではわかりにくいと思われる部分、キャラクターの心情や画面には映らない部分も舞台では描ける。そういった意味においてはゲーム以上に世界観が広がる。初の舞台化ということであるが、エンディングもなんだかその後がある、という雰囲気で幕。

登場人物は極道ばかりで、抗争につぐ抗争を繰り返す世界だ。その過酷な状況の中で遥と出会い、桐生は「自分はどう生きるのか」を考え、また自分の存在価値を見いだすが、これは普遍的なテーマだ。

舞台とゲームは真逆なものであり、舞台化するにはクリエイター側のハードルは高い。『龍が如く』は桐生以外のキャラクターも存在感を放つ。サブキャラクターを中心とした物語や新しいゲームの舞台化など、様々な”バージョン”が出来そうなコンテンツだ。是非、第2弾も創って欲しい。

舞台「龍が如く」
2015年4月24日(金) ~ 4月29日(水・祝)
赤坂ACTシアター
滝川英治(桐生一馬役)、佐野岳(錦山彰役)、桜乃彩音(澤村由美役)、酒井蘭(遥役)/石垣佑磨(伊達真役)/細貝圭(田中シンジ役)、芋洗坂係長(サイの花屋役)、南羽翔平(一輝役)、渡辺和貴(ユウヤ役)/大島宇三郎(嶋野太役)、秋葉陽司(寺田行雄役)、五十嵐啓輔(須藤純一役)、平田弥里(アケミ役)、加茂美穂子(麗奈役)、伊藤高史(劉家龍役)、加納幸和(神宮京平役)/陳内将(郷田龍司役)/窪塚俊介(真島吾朗役)/名高達男(風間新太郎役)
http://ryu-ga-gotoku.com/theater/
《高浩美》
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