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2007年05月23日
本の紹介 ]
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 今年4月にNTT出版より発売された『アニメ作家としての手塚治虫 その軌跡と本質』(津堅信之著)は画期的な本である。
 ひとつは著者津堅信之氏が述べるように、これまでマンガ家手塚治虫に対する研究は数多くあったが、アニメ作家手塚治虫の研究はほとんどなされていないためである。それゆえに、この本はマンガ家手塚治虫に匹敵するアニメ作家手塚治虫を正面から取り上げたことに大きな価値がある。

 しかし、この本の意義の大きさはそれだけではない。アニメ作家としての手塚治虫を取り上げるなかで、これまで通説とされていた数多くの事実に疑問を投げかけていることだ。
 それは単なる思いつきではなく、調査と資料に裏付けられた結果である。

 例えば、手塚治虫はディズニーのようなアニメーションを作りたかったとされることが多い。これに対して津堅氏は、多くの発言や手塚の行動から、手塚治虫はディズニーアニメーションのようなアニメーションを作れるとは考えておらず、一貫して実験アニメーションや個人作家の作品に惹かれていた可能性を主張する。
 それはひとつの可能性に過ぎないかもしれないが、津堅氏の論旨には説得力がある。何より重要なのは、これまで議論がなかったことについて別の可能性を提示したことである。

 さらに個別に注目したいのは、日本初の本格的テレビアニメシリーズ『鉄腕アトム』を巡るトピックである。これまで手塚治虫は1話あたり50万円から60万円とされる常識を超えた低価格で、『鉄腕アトム』の制作を引き受けたとされている。
 その結果として、採算割れのテレビアニメ制作受注やアニメのクオリティの低下、不足分を補うための商品ライセンスビジネスが始まったとされる。こうした結果については、賛否両論で、手塚治虫はしばしば厳しい批判にさらされることもある。

 しかし本の中で津堅氏は、そもそも55万円という格安受注は存在しなかったことを明らかにしている。極端に格安な受注が実際は存在しなかったのに、なぜそれが定説となったかは詳しくは本書を読んでもらいたい。
 ここではこれが手塚治虫の複雑な性格と思惑に由来することだけを述べたい。そして、個人的にはそうした間違った定説がまかり通ってしまったことに、やはり手塚に責任があると思っている。

 それでも当時の虫プロの給与体系や経営内容を例にとり、虫プロが現在のアニメーターの低賃金を引き起こしたとすることや、虫プロが導入したリミテッドアニメが日本のアニメのクオリティを落としたとすることに対する疑問は非常に説得力がある。
 少なくとも一部で考えられている、現在の日本アニメの悪い部分は全て手塚の責任という極端な意見は退けなければならない。

 この本を手に取る多くの読者は、これまでどれほど自分たちがアニメ作家としての手塚治虫について知らないことが多かったかを知るに違いない。
 そして、もう少し手塚アニメについて研究する必要があることを感じるだろう。それこそが、著者津堅信之氏の狙いであり、それは見事に成功している。

アニメ作家としての手塚治虫―その軌跡と本質
著者: 津堅信之
エヌティティ出版

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2007年05月06日
調査・レポート ]
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 日本貿易振興機構(JETRO)は、海外コンテンツ市場の調査レポートをあらたに3本公開している。今回新たにまとめられたのは、「欧州におけるコンテンツ市場の実態」と「中国におけるテレビ番組販売ハンドブック」、「北米音楽市場進出ハンドブック」である。

 これらのレポートはJETROが進める海外のエンターテイメントコンテンツ市場調査の一環で、日本企業が海外に進出する際のビジネスハンドブックとなることを目指している。
 これまで北米のアニメビジネスを本格的に調査したことで高く評価された「米国アニメ市場の実態と展望」を初め、映画や音楽、テレビ番組、アニメ、マンガなど様々なエンターテイメントコンテンツビジネスの世界各国での現状をまとめている。また、調査対象は中国、韓国などのアジア、北米、ヨーロッパなど世界各国に及んでいる。

 今回の報告書でアニメやマンガに一番関わりが深いのは、「欧州におけるコンテンツ市場の実態」である。これはこれまでJETROが各国別、各分野別に調査してきた最新の情報をひとつに統合した決定版となっている。
 調査分野は映画、アニメとテレビ番組、マンガ、音楽、ゲームソフトの5つ市場になり、各国別に観客動員数や販売・上映・放映タイトル、関連企業一覧などの豊富な資料とともに紹介している。
 今回はフランスのマンガ市場や英国のゲーム市場など潜在的なビジネスチャンスが大きい分野は、特に詳細な内容となっている。

 「中国におけるテレビ番組販売ハンドブック」は、中国にテレビ番組を輸出するためのノウハウに特化したものである。単なるビジネスのやりかただけでなく、中国のテレビ市場の成り立ちから市場規模、放送局の紹介、中国の視聴率など118ページにわたり中国のテレビ市場について解説している。
 昨年秋にJETROが開催した「日中テレビ番組交流シンポジウム」では、中国側からの日本のテレビ番組に対する関心の高まりが見られた。中国向けのテレビ番組販売は、今後成長の可能性がある有望市場とみられ、今回のレポートも大きな力を発揮しそうだ。

 また、北米の音楽市場を特に取り上げた「北米音楽市場進出ハンドブック」は、今回全く新しい試みにとなる。これまで北米の音楽ビジネス進出を集中的に扱った書籍やレポートは、民間でも発行されたことがなく、音楽ビジネス関係者にとっては貴重な資料になるだろう。
 このレポートは、J-ポップが中心のためアニメやマンガにはあまり関わりはないが、日本のアーティストたちを紹介する場所としてアニメエキスポやオタコンなどの大型アニメコンベンションを紹介している。

 いずれのレポートも100ページを超える詳細なもので、個別の企業が単独で行なうには難しいものばかりである。これらのレポートは、JETROのホームページで無料ダウンロードが出来る。また、JETROは今後も様々な地域の調査を積極的に進めて行く方針である。

当サイトの関連記事 
日中テレビ番組交流シンポジウム:レポート

日本貿易振興機構 http://www.jetro.go.jp/

上記で紹介したレポート
■ 欧州におけるコンテンツ市場の実態(輸出促進調査シリーズ) 2007年3月
ヨーロッパの主要マーケット、フランス、ドイツ、イタリア、英国を調査。映画やテレビ番組、アニメ、マンガ、音楽などのエンターテインメントコンテンツを広く網羅している。
特に世界第3位とされるフランスのマンガ市場とやはり世界第3位の英国のゲーム市場に関する分析が貴重。

■ 中国におけるテレビ番組販売ハンドブック(輸出促進調査シリーズ) 2007年3月
中国へのテレビ番組輸出の仕組みと現地の関連機関・主要な企業、それに具体的なノウハウがまとめられている。ビジネスの現場での利用に対応している。

■ 北米音楽市場進出ハンドブック(輸出促進調査シリーズ) 2007年3月
北米進出のなかでも特に難しいとされている音楽分野のビジネスの仕組みと現状をレポートしている。実際の成功例や現地の関係者へのインタビューが豊富になっているほか、音楽ビジネスの様々なパターンと契約方法を紹介。

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posted by animeanime at 20:00 | コメント (0)