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2007年06月19日
本の紹介 ]
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 6月23日に発売される 「星山博之のアニメシナリオ教室」は、アニメのシナリオライターを目指す人のための入門書である。そして、現在、利用出来るほとんど唯一のアニメシナリオの解説書でもある。
 この本はシナリオを学ぶ人に対する講義のかたちをとっている。「オリエンテーション」から始まって、「作り手の視点」や「プロット」、「シナリオを書く」など7日間にわけて、シナリオの考え方から実際の技術まで順番に解説している。しかし、7日間に分けられているからといって、7回に分けて読む必要はない。それは、シナリオのプロセスを判りやすく説明するための手段に過ぎないからだ。
 その解説は平易で、やるべきことや考え方は明快、アニメシナリオライターを目指す人にとっては必須の指南書となっている。

 一方で著者の星山さんは本のなかで、この本をシナリオライターだけでなく、演出やプロデューサーやその志望者にも是非読んで欲しいと語りかけている。つまり、シナリオを理解することは作品の演出と制作の基礎をなすからだ。
 ところが一旦本を読み始めてみればわかるが、この本が優れているのは、アニメシナリオの技術を語りながら、実はさらに多くのことを語っている点にある。それはアニメの物語の本質である。

 これまでアニメの作画や演出については語られることが多いが、アニメの物語の有様について語られることは少なかった。アニメの物語の根幹を成すものは脚本であるのだが、脚本を単独に取り上げる機会はあまり多くないからだ。
 星山さんは本のなかで、自らが脚本を手がけた『機動戦士ガンダム』や『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』、『銀河漂流バイファム』を例に取り上げる。そしてその解説のなかから脚本の果たす役割、それがアニメの物語を作る仕組みを鮮やかに説明する。
 アニメの幹である物語の本質を知る点で、この本はアニメに関心がある全ての人にとって価値がある本でもある。

 今、誰かがアニメの作り方を知りたいと思った時に、たぶんその人はアニメの作りかたが書かれた本を探すだろう。その時に、初めてアニメを作ることに書かれた本が、あまり存在しないことに気づくに違いない。
 作画は勿論だが、演出、絵コンテ、編集などアニメを作る技術は、きちんとしたかたちにまとめられることが少ない。脚本(シナリオ)は、そうした分野のなかでも特に技術の伝承の存在しない部分である。
 星山さんの「アニメシナリオ教室」は、アニメ制作を学ぶうえでの重要な欠落を埋める貴重な仕事である。そしてこの本は、今後、長い間アニメシナリオを学ぶ貴重なテキストとして利用されていくことになるだろう。

 著者の星山博之さんが、この本の完成を待たずに2007年2月7日に逝去されたことは、多くの人が知るところだろう。この本は星山さんの遺作ともなっている。
 私たちは日本のアニメ史の彩った星山さんの死を哀しむと同時に、その最後に残してくれた素晴らしい仕事に驚かされるに違いない。 

星山博之のアニメシナリオ教室
雷鳥社  http://www.raichosha.co.jp/
1800円(外税)

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2007年06月05日
本の紹介 ]
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 アニメや映画、マンガから音楽、テレビ番組まで、中国のエンタテイメント市場に対する日本の関心は依然高い。しかし、その高い関心にもかかわらず、そうした市場を総合的にまとめた情報はこれまでなかった。
 5月に発売された「コンテンツビジネスin中国」(青崎智行/デジタルコンテンツ協会編著、翔泳社刊)は、そうした中国における日本のエンタテイメントコンテンツをまとめた初めての本である。内容はアニメ、映画、テレビ、ゲーム、マンガ、音楽、商標権、著作権と分類したうえで現状を解説する。さらにデータ編により数字や統計などで現実を再確認するかたちになっている。

 これまでこうした本が出なかったのは不思議である。たぶんそれは、中国におけるコンテンツの領域が多岐に亘っていることに加えて、法律から文化、経済、政治まで考えるべきことがあまりにも大きいためであろう。
 今回は分野をエンタテイメントのコンテンツに絞ったうえで、各分野をそれぞれの専門家が執筆している。その結果、網羅性と内容の深さを両立させることに成功している。

 内容の深さは例えば濱田功氏による「アニメーション」の項を読んだだけでも明白である。濱田氏は現在の中国のアニメーション産業の状況を、戦後のアニメ-ション産業の立ち上がりから現在に至る文化背景、政治的思惑、既存の企業のビジネス構造、ファン動向まで含めて、複雑に思われる産業構造を見事に説明する。
 そのうえで、なぜ現在の中国のアニメーション産業がうまくまわらないかを合理的に解き明かす。濱田氏は、中国にマンガ原作がない点や行政の求める曖昧な中国らしさが、制作のクリエイティビティを阻害していることなどを原因と指摘する。

 こうした指摘にはこれまでも言われてきたことも多いが、濱田氏は、ではなぜマンガ原作が育たないのか、行政はそうした方針を出すのかとさらに一歩踏み込んでいる。
 そのうえで、現時点では中国のアニメーション産業が成長して行くのか、失敗するかは判断しがたいとする。

 内容の深さはアニメーションの項に限ったものでなく、「テレビドラマ」では韓流ブームが生まれその勢いが衰えた背景が語られている。「ゲーム」では中国のオンラインゲーム市場が生まれた流れなどそれぞれが興味深い内容である。
 一方で本書は、複数の執筆者が書くことによる編集のばらつきも見られる。各分野の内容が包括的であったり、特定の問題にフォーカスするなどのぶれが見られる。また、中国市場に対する見方もやや楽観的なものから、厳しい見方など幅がある。
 しかし、全体では事実に対する客観的な姿勢が貫かれている。むしろ、こうした見方の違いこそが、現在の混沌とした中国のコンテンツ市場を表しているだろう。
 今後の中国のコンテンツ市場がどの方向に進むのかは誰にも想像がつかない。だからこそ客観的な事実を網羅的に示し、様々な考え方を提示する本書の役割は大きい。

財団法人デジタルコンテンツ協会 http://www.dcaj.org/

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posted by animeanime at 13:00 | コメント (0)