『EX MACINA エクスマキナ』荒牧伸志監督インタビュー その1
                 観た人が一番満足するものを作りたい 

■ 荒牧伸志 (あらまき・しんじ)

1960年10月2日、福岡生まれ。アニメーション、CG映像の企画、演出とメカニックデザインを中心に活動。TVアニメーションでは、メカニックデザインで「機甲創世記モスピーダ」(83)「ガサラキ」(98)「鉄腕アトム」(03)「RIDEEN」(07) 他に、プロダクションデザインで「鋼の錬金術師」(04)他に参加。オリジナルビデオは、原作・企画・監督(part3)・メカデザインで「メガゾーン23」シリーズ、企画・監修・プロダクションデザインで「バブルガムクライシス」シリーズを手がける。映画では、造形デザイン・CGシーンストーリーボードで、石井竜也監督「河童」(94)、卓球シーンのストーリーボードを担当した「ピンポン」他がある。


 1. 観た人が一番満足するものを作りたい 

アニメアニメ
(以下AA)

まず『エクスマキナ』の前作である『アップルシード』の話から始めさせてください。『アップルシード』を観た時に、作品が観客の求めている「ハッピーエンド」や「エンタテインメント」、「メカ」、「アクション」だったりを全て提供している。これが自分の求めていたものだと観客に感じさせる作品だと思いました。

今回、『エクスマキナ』を観るとやはり前回と同様、観客の求めるものが見事に提供されています。映画を作る時に、観客の求めるものはどの程度意識されるのですか。

荒牧伸志監督
(以下荒牧)

1本目が公開された時に、そうした反応を多くいただきましたので「エクスマキナ」を作り始める時に、何を継承し、何を新しくしなければいけないかをかなり考えました。
1作目の持っていたカタルシスだったり、気持ちよさが受け入れられたんだと思いましたので、それは相当意識しましたね。

あとはいろいろな要素を出して楽しませようと。たとえば、ユーモアだったり、恋愛風味だったり、古い考え方かもしれませんが、映画として、観た人が一番満足するものを作りたいと考えています。


(C)2007士郎正宗/青心社・EX MACHINAフィルムパートナーズ

AA
楽しませるということでは、前回はハッピーエンドでしたが、今回もそれは意識されたのですか。

荒牧

「エクスマキナ」がハッピーエンドかどうかは観た人に判断してもらいたいですが、プロデュースをされたジョン・ウーさんが、「最終的には希望が持てる終わりにしたいね」と当初から言っていました。僕もそれは同意見でした。陰惨な事件は起こるけれど、希望だけは失いたくないなと。。

AA

アクションシーンとかメカの見せ方にも楽しませるという意識は反映されていますか?

荒牧

アクションでいつも意識しているのは、それぞれのアクションの目的を明確にして、同じようなアクションを2度続けないことです。それはすごく気を遣っています。
メカをフィーチャーしたアクションはここに集中しようとか、そのかわりここはフィジカルなアクションにしようとか、銃撃戦のシーンなんだけれども、そこに主人公の心情を強く出してトーンを変えるとか。

映画の途中でブリアレオスとテレウスが戦うシーンがあるのですが、ここは少し意味深で、単なる爽快なアクションとは異なる感じです。たくさんアクションシーンはあるのですが、それぞれに違った意味合いを持たせて、見ている人にとって違う印象になるように考えてます。

2. テレウスの存在意義
AA

今話されましたブリアレオスとテレウスの決闘シーンはアクションとして見せ場になっています。一方でストーリー上でも印象的です。これはかなり意識されたショットですか。

荒牧

そうですね。物凄く考え抜いたシーンです。物語のちょうど真ん中の位置になるので、ここのアクションに二人の心情が上手く乗せられるように考えました。
最初は、セリフも含めてもっとストレートな対決シーンでした。けれど、だんだん違うなと思えきて、相当いじり、最終的にはセリフは全部なくしました。最後に細野(晴臣)さんが、実に良い音楽を作ってくれました。

AA

テレウスという存在は非常に重要な存在なのですが、なかなかわかりにくいキャラクターでもありますね。最後まで、テレウスはデュナンを好きだったのか、好きでなかったのか曖昧なまま残りました。

荒牧
そこは非常に悩んで、脚本家の竹内さんともいろいろ相談したところです。当初もっとベタにすることも考えました。デュナンの取り合いみたいな話に持っていくシナリオも当然ありました。
ただ、バイオロイドというのは何だろうというのを含めて、彼の存在意義をどう持たせるかを考え抜いた結果です。

彼があまりしゃべらないことによる意思とか感情が出ればと思いました。本当は最初のほうの段階で、もうちょっと二人ですれ違っている描写があって、今回DVDに特典として入っています。

AA
観ているほうからは、バイオロイドだからあまり感情を出さないのかな、とも感じるのですが。

荒牧

テレウスが何をやりたいのか、たぶん本人もよく判ってないけれど、なんかデュナンに惹かれてしまうんだと思います。それがバイオロイドっぽいクールさとの葛藤を経て人間っぽくなって行けばいいなと。その過程で魅力的になっていく。

今回は原作にないエピソードなので、『アップルシード』としてこれで良いのか、ということも含めて、いろいろ試行錯誤しながら作った気がします。

 
(C)2007士郎正宗/青心社・EX MACHINAフィルムパートナーズ

AA
エクスマキナはメカとか映像が素晴らしいのですが、物語でみても凄くいい恋愛映画ですね。振返ってみると「アップルシード」も純愛ですが、物語を恋愛にしようというのは考えられていますか?

荒牧
恋愛をストレートに表現しようと言う気はあまりないのですが、主人公が男女のペアですので、ふたりが障害を超えようとする時にどうしても描かなければならない大事な要素だと思っています。

1作目では、ブリアレオスに再会したらサイボーグになっていた。ふたりの間にあるこの障害をどうやって乗り越えるかの話です。
今回もブリアレオスが陰謀に巻き込まれることが障害になる、そこにさらに異なる要素としてテレウスという存在が割って入って来る。こうした障害を乗り越える主人公の男女の話です。非常に魅力的なモチーフだと思っています。

■その2に続く 3Dとハイブリッドの方向性の相違

 
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