| ■ コンテンツ産業を認知して貰うためにはプロデューサーが必要 |
|
アニメアニメ
(以下AA)
|
コンテンツのプロデューサーがいま非常に必要だといわれます。けれども、実際には教えている場所は少なくて、どうしても制作側の教育になりがちです。
こうしたなか、なぜTDCSでのプロデューサー教育を始められたのですか。
|
|
公野勉氏
(以下公野)
|
私はもともと映画のプロデューサーだったんです。けれどもその業務の中でコンテンツ産業の地位が低いと常々感じていました。
例えば新しい事業を起こします、資金繰りのために、銀行に融資を受けるための事業説明に行きます。しかし与信が通らない。あるいは、経団連の会合などに行くと、大きな産業群の中では、コンテンツ産業は数段下に見られていたと感じていました。
それはどういうことかなと思ったら、ビジネスをやって投資に対する対価を、お金を出してくれた人に返す通常のルールがあまり守られてない産業だと思われていたんです。
「映画好きが自分たちが好きな映画を撮るためにヒトのお金を騙して集めている」というように。実際、利益の幅は大きくブレる産業ですしね。
通常のビジネスと同じように、集めた資本に利益を乗せてお返しするという当たり前の構造をきちんとコンテンツの業界に持ち込まないと、いつまでも地位が上がらないと感じていました。
|
|
AA
|
地位をあげるために必要されていることは具体的にどういったことなのでしょうか?
|
|
公野
|
そのためにはクリエイティブの――コンテンツを作るだけの――スキルだけではいけない。ビジネスの仕組み、会計、あるいは商法のスキルを積み、しかもそれを後進へ継承させていってシステム化することがものすごく重要だと思ったんです。
そしてその中で体系だってテキスト化された教科書もないということにも気付きました。
それで同じようにコンテンツ産業に危機感を持ったビジネスプロデューサーたちと、後進にスキルを伝えていく場を設定しなければならないと思いたち、ここに辿り着いたわけです。
|
|
AA
|
東京大学の産学連携教育プログラムがありました。あれは残念なことに今年で終わってしまいました。
その中で4年間教壇にたっておられたわけですが、そうした経験が活きているというのはありますか。
|
|
公野
|
そうですね。TDCSは現在、東京大学さんそのものとは関係ないのですが、私や当時特任教員で産業界の方で講師として教壇に立っていたかたが、発起人になって今回カリキュラムを組成しています。
「産業と学術が連携することによって初めて健康的で実践的な人材の育成が可能になる」という、産学連携教育プログラムの精神性を仰ぎながら、カリキュラムを開発しているんです。
実際にコンテンツを作っていく中で、ロジカルな技法などで東京大学の先生方にはいろいろと教えられました。マーケティングリサーチから造型するコンテンツ像のシミュレーションだとか、厚いデータを背景としたマーケットの未来予想ですとか、さすがに産業界以上に蓄積・分析が進んでいます。
我々産業界の人間は、実際に戦場で戦っている人間ですから、戦場経験や地政情報、海図を背景に講義の内容を構築していました。
|
|
AA
|
具体的にはどういった視点が考えられるでしょうか?
|
|
公野
|
その産学連携という観点は当然残していこうと思っています。現在、東京大学さん以外の研究機関との共同研究事業もスタートしています。とはいつつも受講生や学生が一番欲しがっているのは、テキスト化されていない実際の生の情報です。
事実、トレンドにより戦略はかなり移り変わりますし、会計のルールなどもすごく短いタームで移り変わるんです。そうした生の情報を提供できるような環境をTDCSでは作っていきます。
現場の生の声、そして学術的な背景やデータ、戦略をまとめて開示して渡していくというスタイルですね。ここであればそうしたOJT的でありロジカルなセミナーモデルが成立すると考えています。
|
| ■ カリキュラムはクロスオーバー型、秋葉原という場所の意味 |
|
AA
|
大学で教える時は学生に教えるというのが前提で、ほかの人が聞けないという敷居の高さがあると思います。TDCSでのターゲットは変わっていくんですか。
|
|
公野
|
産学連携教育カリキュラムも一般に門戸を開放していました。多かったのは30代の社会人の方です。会社に入ってこれまで違う仕事をしてきたんだけれども、新しくコンテンツの仕事を渡されてしまい、それをこなすためのスキルを求めている例です。
テレビ局のプロデューサーが『今まで情報番組を作っていたんですが、映画事業部に転属になりました、映画のことは何も知らないので映画のビジネスのルールを教えてください』とか、そういう背景を持っている受講生が多かったんです。
そういう意味では、TDCSのカリキュラムは社会人向けの面が極めて強いんです。
セカンドターゲットとしては、これから就職しよう、コンテンツビジネスをしようする学生に対して、事前情報を与える場です。就活のための準備をする場として、TDCSを活用してもらえればいいのではないかなと思っています。
|
|
AA
|
プログラムの内容の特徴はどういったところですか。企画から制作、興行、宣伝もかなり入っているようですが?
|
|
公野
|
クリエイティブ寄りの講座や学校はたくさんあるのですけれども、いわゆるディストリビューション、流通と小売りをきちんと講義・伝達する場所はなかったんです。
我々は映画でいえば配給と興行、物流でいうと流通と小売りを極めて重要に捉えています。そこを体系だて、講座にしていこうと考え、展開しています。実際、そのビジネスパートはこれまで秘匿されてきた、極めて保守的な商フィールドでした。
|
|
AA
|
映画やキャラクターといった分野ごとの講座はこれまでにもいくつかあったと思います。ここではかなりコンテンツがクロスオーバーをしています。これはどうですか?
|
|
公野
|
これはコンテンツ産業そのものが、そういう状況にあるということです。
例えばゲーム原作の映画があったり、あるいはゲームからヒットするようなキャラクターもあったりします。昔のような映画、テレビ、ゲームというような明確なセグメントではなくなってきているんです。
トータルプロデュースするなら、いろいろなプラットフォームに対して、あるいはメディアに対して、俯瞰して見ていなければならない。「その原作を映像化するとすると、実写もできればアニメーションも展開可能だ」という発想が必要になります。
またそういう映像スタイルに関するレイヤーだけでなく、一方では「コミックと映像」「ゲームと映画」の同発メディアミクスというプラットフォームのレイヤーもあります。映画だけじゃなく、テレビシリーズとカップリングさせて展開するというケースやネット配信などもあることを考えたら、やはり各プラットフォームとメディアの構造、商態を知っておかなければコンテンツの流通と小売りには、辿り着かないだろうと考えています。
|
|
AA
|
秋葉原という場所を選ばれたのは、どうですか?
|
|
公野
|
いくつか理由があります。ひとつは秋葉原はターミナル大規模駅としての、都心でいうと最後の開拓地だったということ。もうひとつは5年前とはまったく違う街の様相です。
今の秋葉原はキャラクターやコンテンツの原点、メッカのような場所になっている。
秋葉原発のコンテンツが今後、出てくるかもしれないと思ったときに、教育・学習事業者としての我々としては、まだ特定企業の色が濃くない、この秋葉原という場所が“学び舎”サロン“”としては理想的な気がしたわけです。このふたつは秋葉原を選ぶ大きな要素になりました。
|
|
AA
|
秋葉原自体がコンテンツ創出の街だということですね。
|
|
公野
|
そうですね。面白いことにクリエイターの方とか、秋葉でミーティングというと皆さん遠くても来てくれるんです(笑)。
皆さんやっぱり行き帰りと、街を回ったりするのが楽しいのかもしれないですね。
|
|
|