『宮本武蔵―双剣に馳せる夢―』 原案・脚本押井守氏インタビュー 1
                      押井守×プロダクションI.G 映画最新作

■押井 守(おしい・まもる) 
1951年8月8日、東京生まれ。 1980年代に『うる星やつら』などで注目を浴びた。その後、『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』や『機動警察パトレイバー 劇場版』などの劇場作品を手掛けた。
1995年公開の『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』で、世界的にも注目を浴びるようになった。その後も『イノセンス』、『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』などの話題作の監督を続ける一方で、小説やコミック、ラジオドラマ原作、舞台演出などの多彩な活動を続ける。

■『宮本武蔵―双剣に馳せる夢―』 公式サイト http://musashi-souken.com
巨匠押井守を原案・脚本に迎え、宮本武蔵が映像化された。 監督は数々の押井作品の演出を手がけた西久保瑞穂。キャラクターデザインは、斬新なキャラクターを描き続ける中澤一登など、豪華なスタッフが結集する。
究極のアニメ映画を制作し続ける押井守×プロダクション・アイジーの最新作。押井守が武蔵の記した「五輪書」を軸に、真実の宮本武蔵像に肉迫する。ハイクオリティなアニメーションで描かれた『宮本武蔵―双剣に馳せる夢―』は、押井節満載の全く新しいエンターテイメント作品だ。

■ 宮本武蔵は日本のダ・ヴィンチだ 

アニメアニメ
(以下AA)

テーマについてですが、日本人なら誰でも知っている宮本武蔵を、今回取り上げた理由から教えていただいてもよろしいですか。

押井守氏
(以下押井)

そもそもの始まりは、海外のある会社から発注があったんです。2年ぐらい前かな。侍の番組を作りたいという話だった。侍の番組を作るんだけれど、何をやればいいのかそれを含めて考えてくれという話だった。そこで宮本武蔵でいいかという話から始まったんです。
それが回り回って、今回の映画になったわけです。僕個人は、昔から宮本武蔵に興味があった。10年ぐらい前からかな、ぽつぽつ資料を集めたり、調べ物をしたりとかしていた。今回の企画が通ったのでこの機会に、自分なりに集めてきたものや、読んできたものをまとめてやってみようと思ったんです。

AA

押井監督は、世間は宮本武蔵の真実を誤解していると話されていますが、誤解というのは、具体的にはどういうことなのでしょうか。

押井

今のみんなが思う宮本武蔵というのは、たぶん90%以上、吉川英治の武蔵のことでしょう。

AA

そうですね。

押井

それはあくまでもフィクションなので。実際に歴史上に存在した宮本武蔵という人間は、基本的に違うもので、そちらの方に興味があった。
剣なら剣の道、一芸に秀でることで精神的な高みに立ったとか、一芸を究めることで宗教性を帯びているとか、僕はないと思っている。そんなことあるわけないじゃんと。

日本人はそういうふうに思いたがるよね。一芸に秀でることで突出した人間になれる、精神的な何かを掴むという。それは楊枝を作っている職人だろうが、野球の選手でもそう。みんなそう思いたいわけだよね。
でも、そうじゃないわけ。みんな実はそんなことはないんだとどこかで思っているのに、そうあってほしいと思っているんだよね。
僕が武蔵に興味を持ったのはその逆なんですよ。あの人は一種の万能人だったと僕は思っている。

AA
万能ですか?

押井

よく例えで日本にダ・ヴィンチみたいな人がいると言うんだけれど。剣も強かったかもしれないけれども、絵もうまかったし、彫刻もやったし、築城術という土木工学の知識もあったとかね。哲学はあったかというと、もしかしたら哲学はなかったんじゃない。
あれもこれもやる人間を、日本人はあまり信用しないんだよね。

AA
万能人というのは押井監督にも通じるものがありますが。

押井

僕も、あれもこれもやる方なんだけど。大体いつも、それで評判を落としているわけでね。アニメだけやっていればいいのにって。
それでも構わず30年近く、いろいろあれこれやってきたわけ。実写も撮ったし、舞台もやった、小説も書くし、ゲームの編集もやったし、興味があるからあちこち余計なことをやっている。
そういうふうな全方位に興味があって、またアニメーションに戻ったときに、世間とは違うアニメーションが作れるんだよね。アニメだけをやっていてアニメがうまくなるかって、うまくなるわけがないじゃん。


(C)2009 Production I.G/宮本武蔵製作委員会

■ 芸に生きている以上は、頭がなくなったら終わり

AA


そういったことは今回の映像に影響していますか?2Dアニメだけでなく、実写あり、3Dあり、パタパタアニメーションあり、そういったものをごっちゃにされていますが?

押井

たぶんそういうところもあるでしょう。アニメーションというと、多くは紙の上に描いて、色を塗って、背景と重ねて合成して動かすんだという、セルアニメーションだよね。本当はアニメーションだけに限って言っても、人形を動かすのもあれば、粘土をこねくり回すのもあれば、CGだってあるし、別に写真を撮ってそれを動かしたって構わないんだよ。
机の上で映画を作れば、全部アニメーションだよね。でも、なかなかそういうふうに考えられない。

AA

それはアニメーション以外でも同じでしょか?

押井

いつも自分のやっていることの中でスキルを上げていくとうまくなる、それは分かりやすいし、特定の脳しか使わないから非常に日常化しやすいんです。
でもそれは特化していくだけであって、本質を極めていくとか、理解していくことと関係ないんだよ。 職人というのはそういうものだよ。だから、基本的に職人というのはあんまり好きじゃない。たぶん頑固になっていき、ほかのことを認めなくなるだけ。

押井

僕も言ってみれば芸に生きている人間だから。映画監督なんて要するに芸事でできているだからさ。芸に生きている以上は、頭がなくなったら終わりなんだよ。
今、やっていることはこういうかたちになっているけれどもなぜこういうかたちにしなきゃいけないのかと、やっぱり理由がある。その理由を考えずにそこから先を訓練したって、結論に到達するのが人より早くなるだけ。その結論にどうやって導いていくのかというのが、永遠に理解できないし、理解できないということは他人に教えられない。

■その2に続く 西久保監督への期待




(C)2009 Production I.G/宮本武蔵製作委員会

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