『東京オンリーピック』真島理一郎総監督インタビュー2
                     架空スポーツの「お祭り」制作の秘密 
  
4. いろんなスタッフの力を借りて作れる

アニメアニメ
(以下AA)

最初は『スキージャンプ・ペア』の個人制作、次はスキージャンプの劇場作での総監督。今回はオムニバス作品の総監督という立場ですが、そういった立場の違いは作品に影響しますか?


真島総監督(以下監督)

そうですね。個人で作ると思い通りできるんで、ストレスはないですし、細かい所までちまちま作り込めるという魅力はあります。でもスケール感やお祭り感を出すにはいろんな人と一緒にやらなくてはいけない。それはそれで面白いところがあって、スタッフの力や才能によって化学反応が起きたりと、1人では絶対に出せないものがたくさんあります。

ストレスも半端じゃないですが(笑)。 個人だと自分を喜ばせることを第一に作品作りをしますが、総監督という立場だったりすると、やはりみんなを喜ばせることを目指して作品作りをしている気がします。
そうは言っても、基本は頑固でワガママなので、最後は自分の感性を一番大切にしますね。

AA

今回『男子ヒューマニズム』で澤田監督とコラボレーションをしていますね。これはストップモーションの技術を使いたかったからでしょうか?。

監督

技術を使いたいというよりも、コマ撮りにしか出せない面白さってあるじゃないですか。CGでも実写でもない、独特の良さを活かしつつ、どうしようもない作品を作りたいと以前から思っていたのでトライしました。

今回、デジハリの学生で、たまたまパペットをやっている学生がいて、しょーもないものを作っていたんで(笑)。彼となら何か面白いことができそうだと思いました。
僕は、シュヴァンクマイエル(編注)が大好きなので、僕なりのオマージュですね。澤田君の独特のコマ撮りのセンスを生かしつつ、その中に僕のテイストもしっかり入れて作ったつもりです。
パペットって、結構無茶やっても痛くないというか、腕が飛んでも首がはずれてもグロくはならないので大げさに描けるんですよ(笑)。
そこで、暴力と戦争をテーマにして、行き過ぎたバカらしさを描いてみた感じですね。僕なりのベタな反戦映画。これはある意味、先日他界された水野晴郎さんへ捧げる作品でもあります。「戦争はいかん!」ということです。

(編注) シュヴァンクマイエル…チェコのアニメーション作家・映画監督。代表作に『アリス』、『ファウスト』など

AA

様々なクリエイターが参加されていますが、選んだ基準にはどういったものがあったのでしょうか?

監督

基本的には僕が尊敬する人、一緒にやってみたい人に声をかけました。僕には作れない世界を作れる人。それでジャンルはできるだけバラバラにしようとの考えがありました。

映画監督やCMディレクター人、PVをやっている人、個人制作のアニメーター、プロダクション等々 もう一つは実績にはこだわらずに、ベテランの人から無名の学生まで、同じ土俵でスポーツというテーマで作ってもらいたかったですね。ジャンルも経験も世代もバラバラの人がスポーツという場所でどんな風に遊んでくれるのかが僕自身楽しみでした。

AA

海外のクリエイターも参加されていますよね。

監督

日本人に出せないものがあるだろうと思って頼みました。海外の人が描く東京を舞台にしたスポーツってどんなものだろうという興味がありました。
国際スポーツ大会ですから海外クリエイターは必須だなと。実は大好きなビル・プリンプトン監督にどうしても参加してもらいたかったので、参加してもらえることになって天にも昇る気持ちでした。

 
(c)2008 東京オンリーピック連盟/国際オンリーピック委員会

5. 作家同士も競い合っている?

AA

競技をテーマしていますが、これだけの方が並ぶと、作家同士も競い合っているようにも見えます。

監督

そう見てもらえるのはうれしいですね。
監督によってはそういう思いもあるかもしれませんね。僕自身はライバル心というのは全くなくて、僕には作れないものを作る人に声をかけているので、それぞれ好き勝手に楽しもう!という感覚です。

僕と一緒に監督をやった澤田くん(『男子ヒューマニズム』共同監督)なんて、「負けたくない」っていつも言っていましたね。学生らしくて良いですね。
人によっては、あの人どんなのやるんですかと聞いてくる人もいますし、他の人が何をやるのか聞きたくないという人もいます。他人の作品に全く興味のない人もいます。いろんなタイプの監督さんがいて、それだけで面白かったです。

AA
今回、実写の監督も数人いらっしゃいますが、これは最初から実写を入れたいという意図があって、選んだのでしょうか?

監督

そうですね。声をかける段階でバランスを考えていました。僕は特別CGアニメが好きなわけではなくて、映像が好きなだけなんです。どの手法が好きというのはなくて、CGにも手描きアニメにも実写にもコマ撮りにも、それぞれの味と面白さがあるので、それぞれの技法でスポーツを描いてもらって、見る人にいろんな面白さを見てもらいたかったんです。
スキージャンプ・ペアの映画版でも質の違う実写とCGのシーンを混ぜてますし、僕自身こだわりがまったくないです。もちろんアニメは好きですが、だからこそアニメだけにしたくなかったですね。

AA

1つの作品の中にその両方を融合させることは、監督にとって難しいことではないんですね。

監督

難しくないというより、気にならないという感じです。見ているうちに慣れるだろうと。わりとその辺はアバウトな感じですね。それが気持ち悪い、許せないという人も中にはいるでしょうが。。。

僕の中で、3DCGってアニメか実写かっていったら、実写の感覚なんですね。リアルな世界をCGを使って自由にする、現実から抜け出すためのもの。 でも見た目を実写に近づけようとするCGにはあまり興味がないんです。いくらリアルに作っても「どうせCGだよね。よく作ったよね」って見られちゃう気がして。
それなら最初からCGに見える質感で作って、見る人が脳の中で「これは現実だ」というフィルターをかけて見てくれるのが一番いいなと思います。 逆に2Dのアニメは自分には絶対に踏み込めない神の領域です。単なる1アニメファンとして楽しんでます。

AA
『スキージャンプ・ペア』も、今回の作品もそうですが、スポーツ自身自体がお好きなのでしょうか? 
それとも、制作者として作りやすいというのがあるのでしょうか?

監督

スポーツが大好きなのはもちろんですが、作品作りをする上で、 人間の動きを使って何か面白い物を作りたいとよく思うんです。人間のおかしさや動きの面白さ、ばからしさを描くのに、僕の中ではスポーツが最も適しているなという感じですね。

スポーツってなくてもいいじゃないですか。なくても生きていける。でもそれに人生をかけている人間っておかしい。これは馬鹿にしているわけじゃなくて、無駄なことに必死になれる人間が、美しく、面白いと思ってるんです。その人間の美しさ、ばからしさの最たるものの1つがスポーツだと思ってます。

AA

最後に、作品が完成したときの監督のお気持ちはいかがでしたか?

監督
各監督さん達が、本当に色々な作品を作ってくれたおかげで、僕一人では絶対作れない面白い作品になり、本当にやって良かったなというのが第一印象ですね。
総監督として単なるオムニバス作品にはない世界観も出せたかな、『スキージャンプ・ペア』とは別のエンターテイメントになったかなと思ってます。

もし4年後にまたやるとしたら、今度はまた違うテイストの作品にしたいなとも思いました。今回はまったり、ゆったりとした作品が多いんですけど、次はよりスポーツらしくスピーディーで手に汗握るものもいいですね。本当のスポーツのようなエキサイティングな感じが出せると、さらに面白くなるかもですね。
[インタビュー構成:日詰明嘉]
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東京オンリーピック

公式サイト http://www.onlypic.org/
8月8日(金)劇場公開
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