ライセンサーとクリエイターのWin-Winの関係を目指す Open‐Postの挑戦 その1
                   日本動画協会 清水義裕氏に聞く

既存の人気キャラクターと新しい才能とのコラボレーションを目指し、2007年11月に日本動画協会のもと始まったOpen Post。
Open Postでは、権利保有者の許可のもと自由なニ次創作の投稿が可能になっている。現在は『鉄腕アトム』や『ブラックジャック』、『リボンの騎士』など、手塚治虫のキャラクターを利用した作品を募集している。
これまでキャラクターを厳しく管理するのが、キャラクタービジネスの鉄則であった。一見、常識破りに見える今回のプロジェクトが目指す、ライセンサーとクリエイターの新しいWin-Win関係の秘密を日本動画協会
事業委員会 委員長の清水義裕氏にお伺いした。

■ 清水義裕 (しみず・よしひろ)
1958年1月12日東京生まれ。東京都立大学経済学部卒。
大学在学中の1978年に手塚治虫と出会い、手塚プロダクションにアニメーション制作のアルバイトとして勤務。81年卒業と同時にプロダクション入社、現在に至る。
名古屋デザイン博森村グループパビリオン、横浜博電力館、国立近代美術館「手塚治虫展」、宝塚市立「手塚治虫記念館」、朝日新聞「手塚治虫過去と未来のイメージ展」フィンランド「タンペレ映画祭」の手塚治虫展、ローマ「手塚治虫展」、映画「ブラックジャック」、映画「ジャングル大帝」、テレビシリーズ「アストロボーイ・鉄腕アトム」、テレビシリーズ「火の鳥」、テレビシリーズ「ブラックジャック」の企画、総合プロデュースを担当。
現在は映像、事業、海外、出版、商品化、著作権等のプロダクション業務全般の管理を担当している。進行中の映像企画では「アストロボーイ」3D版映画に携わり、日本動画協会事業委員長として日本のアニメーション業界全般の公益のための仕事に従事。


 OpenPost ホームページ http://openpost.jp/


 ■ ネットとコミケの変化がOpen Postのきっかけ

アニメアニメ
(以下AA)

オープンポストのきっかけから教えていただいて宜しいですか。従来のキャラクター管理の逆を行くどんなデザインでも自由というアイディアを日本動画協会が自らが行うことに驚きを感じているのですが。

清水義裕氏(以下敬称略清水)

私は何年もアニメの仕事をやっています。そうしたなかでキャラクタービジネスの理想は、ライセンサーとライセンシーの関係がきちっとした関係というのを見てきました。
つまり、ライセンサーはいいコンテンツを開発し、いいデザインを作って、ライセンシーはその許可を受けて利用するだけというものです。ふたつの間には、管理する側と管理される側の違いというのがあります。
ライサンシーは主に与えられたものを忠実に商品として再現して行くだけです。

AA

そうですね。ライセンサーの大きな仕事のひとつは、キャラクターのイメージの管理にありますね。

清水

しかし、例えば手塚プロダクションは、いつまでこの最高のコンテンツの開発を維持できるのかという疑問を持っているわけですね。
手塚プロダクションには優れたデザイナーもいれば、アニメの制作チームもいれば、イベントもしています。それでも、これまで果たしてファンが本当に喜べるものを十分供給出来てきたかという疑問がありました。これがひとつです。

AA

2点目は何ですか。

清水

インターネットの出現です。インターネットは登場して10年ほどですが、例えば検索エンジンに「アトム」と入れると、もう山のようにアトムの絵が出てきます。

本来は、これは送信化権の侵害だと、ライセンサーとしてはそうした管理を当然やらなくてはいけない。
ところがよくみてみると、優秀なイラストとか、非常に優秀なファンサイトもある。海外とかにもあったりします。果たしてこれを単純に、著作権違法だから止めなさいと言っていいのかという疑問も持つようになりました。

AA

確かに驚くような才能は多いですね。

清水

さらに別の状況がある。日本には800万サイトものブログがある。自分を表現したい人がそんなにいる。これは国別でみると世界一です。

そして夏冬に開催されているコミケです。日本動画協会がやっている東京国際アニメフェアは東京ビッグサイトの3ホールを利用しているだけですが、コミケは12ホール全部を使います。それに机だけがただ置いてある。その机に日替わりで2人ずつ座って自分の描いた漫画を売っている。
つまり凄い数の自分のマンガを見て欲しいという人がいるわけで、そこに表現したいというエネルギーはすごく感じるわけですよ。

AA

そうしたことが全て合わせられた結果ですか。

清水

そうです。ブログがそんなにあるし、マンガがこんなにある。それと手塚先生のキャラクターとの活用をなんとか結び付けたいと考えたわけです。
そして思いついたのが、投稿というシステムです。そうしたシステムを作ってプロデューサーがそれを受け止めて、ちゃんと評価をする。

また表現能力と意欲さえあれば、キャラクターやストーリーは貸してもいいのではないか。そこからデビューするというような最初のステップが築けるかもしれない。
また、文章やストーリーは描けるけど絵はかけないとか、逆に漫画はかけるけれどストーリーはうまく作れない。そうした人たちがなんらかのきっかけで、手塚治虫のキャラクターや著作権を利用して協力出来る方法はないか。そうしたサイトが出来たら面白いじゃないかなということでこの企画が始まっています。

■ ネットで展開するプロジェクト

AA


実際の実現にあたっては、動画協会の協力も大きかったと思いますが。

清水

去年の今頃に、今年の秋にコ・フェスタ(JAPAN国際コンテンツフェスティバル)という日本の誇るコンテンツを一堂に会したイベントをやるというプロジェクトが持ち上がりました。
その時に、アニメーションの分野でも参加できる方法はないのかとの話がありました。

AA

その時にオープンポストのプロジェクトが立ち上がったのですか?

清水

当初はこのオープンポストです。しかし、これはウェブ上のものでしたのでコ・フェスタというイベントのセクションではなく、別のセクションに移り、そこで構築が始まって今回オープンにこぎつけたわけです。

AA

当初からいまのような、作品投稿のスタイルが念頭に置かれていたのですか。

清水

基本的には、表現したい気持ちをいかに吸い上げるかからです。子供の似顔絵でもいいところから始まっています。
「手塚作品を自分だったらこう書く」、「この作品の終わり方もあるけど、こういうのはどう」と議論も出来るような場所になって貰えればと思っています。

AA

コミュニティにすると運営が大変なのかなと感じます。

清水

人間の善意と悪意は53%:47%で善意が勝つのではと思っています。3歳の子供の絵の素朴な真摯な作品からプロの目で評価出来るものまでいろいろさまざまなものがワイワイガヤガヤある。
そこでは自由に何か新しい表現の創造が始められる。そんなサイトになればいいなと思っています。
まだ、制約もいろいろありますが、まずは見てくださいという気持ちです。

              ■ 「手塚作品と区別出来るなら表現は守られる」に続く

                             
 page topへ