3DCGアニメ『Funny Pets』 増田龍治監督インタビュー
                3DCGのキャラクターアニメーションとは何か

 2. 3Dアニメーションを作る理由

アニメアニメ
(以下AA)


 監督自身のことも伺っていいですか?アニメーションを作るきっかけは何だったんでしょうか?

増田監督
(以下敬称略)

 僕は学生のときに自主映画で、実写映画を作っていたんです。就職活動をする時に自分の作品をCM会社とか映像会社に配っていて、その中の一つがアニメーションの会社でした。
 『あらいぐまラスカル』の遠藤監督というかたが「お前はアニメ向きだよ!」とおっしゃって、何がアニメ向きだったかわからなかったですけど(笑)。
 子どもの頃から慣れ親しんだ作品なので、やってみようかな…というかたちでアニメに入ったんです。
 

AA
 そのころは2Dでやられていたんですか?

増田

 その時は、入ったのはいいんですが、制作が全然動かなくて、ずっと設定を書いていました。
 「サンタクロースがクリスマス以外に何をしているか」っていう話をずーっと。彼がどんなところに住んで、どんなものを食べて、周がどんな環境でこういう性格になっているから、プレゼントを配るようになったんじゃないかという設定を書いた。それが面白くて、絵本のようなサンタクロース辞典といったかたちで出版されました。

AA

 そのあとにきっかけが?

増田

 そのころちょうど、『ジュラシック・パーク』が公開されて、CGってのはすごいなって感動しました。日本で当時アニメーションをやっていたかたは、コンピューターで絵を描くなんてって毛嫌いしていたんです。一方で、ゲームのかたは、非常にCGを進化させていた。
 僕はそれを見て、アニメーションにだけずっといるのは危険かもしれないと思って、ゲーム会社に入りました。そこでCGとは何かを横で見ながら勉強していきました。

 そうしていると今度は『トイ・ストーリー』が公開されて、やっぱりCGでできるんだと確信のもとに前のアニメ会社に、出来ますよって企画を出したんです。
 キッズステーションに5分の枠が空いていたので「僕に作らせてくれ、コンピューターで作るから」って言ったんです。そうして出来たのが『ポピー・ザ・ぱフォーマー』です。

(C)2006「Funny Pets」製作委員会
AA
 当時『ジュラシック・パーク』とか『トイ・ストーリー』はとてつもない時間とお金がかかっていました。それが小規模でも出来ると確信したのはなぜですか?

増田

 当時、プレイステーションだとかサターンだとかゲームのほうが非常にビジュアル面に力を入れ始めていました。ゲーム会社を視察して開発中のゲームを見せてもらうと、「あ、いけるかなと…」ぼんやりとしたものが生まれてきました。
 しかも、あの当時はゲームの人たちは映像の演出を知らなかったんですよ。いまでこそ映像の演出もテクニックもありますけど。

AA
 真ん中にいたから両方分かったというわけですね。

増田
 アニメとCGを合わせればできるだろうと。特にトイ・ストーリーを観たので余計に思いました。
 僕の作品は小さな箱庭みたいなところで展開するので、一度箱庭を作ってしまえばいいんです。ちっちゃなセットみたいなもので、その中で舞台設定を考えて物語を制限した縛りを自分で決めていくと予算が少なくて済むんです。
 演劇的と言われることが言われることもありますが、かなり近いですよね。

AA
 制限があるくらいが面白くできるとのことですが、最近はマシンのスペックに余裕が出てきていると思います。そうした変化は作品に影響がありますか?

増田
 マシンもソフトも段違いで進化しました。演出的なのもあるんですけど、一番はレンダリングのスピードですね。たとえば、『ステイン』の場合は、ガラクタ通りっていうビル街が舞台ですけど、こういう直線的なものは処理速度が速いんです。でも、『Funny Pets』は曲線の軟らかさを再現できるので、曲線的な風にデザインの幅が広がった感じですね。
 技術だけじゃなくて、アニメーターが上手くなったというのもあります。

AA
 今回の見どころについて教えてください。

増田
 クレセントの孤独さですね。
 ファミリーもので共通するものを考えた場合に、たとえば愛だとか言ったときに、僕は何でも愛で片付けるのはなぁ、と思います。
 本当に美しい愛を語るには自分にそれがないとだめだと思うんですよ。

AA
 それが孤独ですか?

増田

  じゃあ、なんだろうと思ったときに、生まれてから老人まで、影のように付きまとうのは孤独じゃないかと思ったんです。人間ってどこか孤独を影のように引きずる存在なんじゃないかなと。

 それはどういうときか分かりません。たとえば友達に裏切られたときにかもしれない。ただ、孤独が必ずつきまとうと思ったときに、それを中心に展開すると全年齢層が理解できて、気持ちがキャラクターに投影されると考えました。
 なおかつそれをユーモラスに、笑うことでカタルシスみたいなものが生まれるんじゃないかと、自分の孤独を笑う、さみしさを笑うみたいな。

(C)2006「Funny Pets」製作委員会
AA
 それは子供にも受け入れられるわけですね。

増田
 僕には8歳になる息子がいるんですが、その友達がやってきて『Funny Pets』を観たときに「このお月様は僕みたいだ」と言った瞬間がありました。
 「あー、お前も」みたいな(笑)
 その子はお母さんはお花屋さんでお父さんが警察官ですごく忙しくて、おばあちゃんに育てられているんですね。やっぱりそういう家族の中で、居場所がありづらいのかなって。できればそういう人に観て欲しい。

AA
 むしろ大人のほうが好き、嫌いと分かれるかもしれませんね。

増田
 そうなんですよ。うちの嫁さんのお姉さんは、「痛々しくて見られない」っていうんですよ(笑)
 そういうのを笑えるかどうかは、人それぞれだなと思いますね。少なくとも僕は自分の中の孤独を笑うという観点で作っています。

AA
 作品は海外の映画祭でも紹介されていますが、海外の反応はどうですか?

増田
 前作ステインの場合は、ホームページにイギリスの方からメールが来ますし、海外のアマゾンのレビューなんか見ますと星が高い。反応で言うと奇妙って言われています。
 好きな人は好きだなって感じです。その辺は日本とそんなに変わらないですね。

 『Funny Pets』では、メルボルンの国際映画祭に行ったときに「お月様は幸福になるんですか?」っていう質問があったんです。僕は「なりません。孤独はずっと続くんです。それはなぜならお月様は僕本人だからです」って言ったんですよ。そうしたら観客がバーッって拍手したんです。
 いやいや、拍手するところじゃないよって(笑)、そう思いながらも作家と作品の接点がたぶん彼らの中で見えたのかなと思いました。
 そういう意味でも「あれ、俺ちょっと浮いてる?」とか「ちょっと寂しいな」とか思う人が観てくれるほうが共感すると思います。

AA
いま思ったのですが、逆にコロナはなぜあんなに幸せそうなんでしょう?

増田

 それは対比かな。実はコロナにも優等生の孤独というものがあるんですよ。完璧がゆえにそれを装う寂しさを感じている。コロナの裏の面は2クール目に描かれるんです。

 ただ、今回はDVDの同梱される絵本に救いを出したてみました。ちっちゃな孤独の中から最終的には抜け出たような結論を、僕は絵本で決着をつけたんです。

(C)2006「Funny Pets」製作委員会
AA

次のプランというのはあるんですか?

増田

いま、ちょうどこれが終わって、次の企画を出さないとなぁ…って追い詰められているんです。(笑)

AA

本日はお忙しい中ありがとうございました。

                  ■ 『Funny Pets』の制作までの道

                       
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