『ルネッサンス』クリスチャン・ヴォルクマン監督インタビュー
                光と影を強調するには3Dアニメーションが優れている
  

■ クリスチャン・ヴォルクマン (アニメーション監督)
アメリカ留学後、1989年、Ecole Superieure des Arts Graphiques (グラフィックアート高等専門学校)に入学し、デッサン、絵画、写真などを学ぶ。1994年、初の短篇アニメーション「Le Cobaye(モルモット)」を監督。その後「Le Jardinier dort」、「Paris sur Mer」の2本のビデオクリップを製作。1995年に「Maaz」というスーパー16でブルー・スクリーンを背景にしたSF作品にとりかかる。完成に3年 を要した「Mazz」は、大成功を収め、様々な映画祭で32の賞を受賞した。『ルネッサンス』は、彼の初の長篇作品となる。
《作品紹介》
『ルネッサンス』、それは実写とアニメーションの境界線を超越し、21世紀の映像をさらに過激に進化させる驚異の映像体験である。
2054年のパリ。世界的規模で成長を続ける医療関連の複合企業体アヴァロン社の女性研究者イローナが何者かに誘拐された。事件を追うカラス警部は捜査を進める中、その誘拐の背景に人類の未来を左右する禁断の研究を巡る、巨大な陰謀が隠されていることを知る。そして、物語は誰にも想像し得ない驚愕のクライマックスへと突き進んでいく…。

 1. 「不老不死」というテーマ

アニメアニメ
(以下AA)

 あまり広い話でなく、私が特に重要と感じたこの映画のテーマである不老不死についてから伺わせてください。このテーマはどこから出てきたのですか。

ヴォルクマン監督
(以下監督)

 最初から難しい質問ですね。不老不死というのはSFのかなり古典的なテーマだと思います。ですから練りに練って出てきたというよりごく自然に出て来たって感じです。

AA
 不老不死というのはそんなに幸せでないですよね。研究者であるイローナは名声が欲しかったけれど不老不死が欲しかったわけでなかったし、アヴァロンもお金が欲しかったけれど不老不死が欲しかったわけでなかった。映画のなかでは不老不死があまり幸せに捉えられていないですよね。

監督

 おしゃる通りです。この映画の登場人物といえば、アヴァロンはお金のために研究を奨励しているし、イローナは自分が世界で認められることを求めているわけです。
 それに対して私は反対の意見を持っているので、そうした研究がみんなにとって幸せになるのでないということを感じとっていただければうれしいです。

AA

 それが不老不死を取り上げた理由ですか?

監督

 私は哲学に関心があってヒンズー教と仏教とか、禅とかにとても興味があるんです。細かく言えば禅は宗教とはいえませんが、仏教のなかの一部分ですから。いずれにしろ思想的なものに強く惹かれています。
 そうした東洋的な思想のなかに神は全てのものを統括するものではなく、神を考えることは自分自身を考えることというのがあります。神というのは何かすぐに教えを授けてくれるものでなく、自分たちで見つけることを促す存在だと思っています。そういったことが私の興味を惹いています。

AA
 そうした考えは映画のなかにも反映しているわけですか?

監督
 映画のなかでは、極端なモノクロの白と黒の映像という、極端なカラーを使っているわけです。そうした非常に対比的な色をつかうことで、ふたつの世界を対比的に描いているわけです。

AA
 白と黒が善と悪といった感じですか?

監督

 世の中には4大元素という考え方がありますよね?水と火と大地と空という。地球を4大元素に分けて表現しているわけです。このように分けて考えるという点が『ルネッサンス』にもあります。
 『ルネッサンス』という映画のなかで、私は白と黒というふたつの極端な色、白の画面と黒の画面といった具合に分けることでそうした構造を考えたわけです。

 それは「白は善」、「黒は悪」と必ずしも分けているわけではありませんが、やはり白っぽい画面と黒っぽい画面で表しているものが違うわけです。

 人間は肉体を持ちいつかは死んでいく運命にあるのですが、そうしたものを超えた精神的なものを映画のなかで定義したいと思ったのです。ですから、白っぽいシークエンスがあったり、黒っぽいシークエンスがあったりしますが、それは意図的に分けているものなのです。

AA
 2元的な考え方は物語にもあるような気がしますが。

監督
 ラストのところで主人公のカラスとビスレーンが一緒になるところがありますよね。彼らは肉体的な不老不死を手に入れなかったけれど、精神的な平穏で安寧な境地に立つことが出来たわけです。それはある意味、肉体の不老不死でない精神の不老不死性を表しているわけでわけです。映画はビジュアルなものですから、そのように表しました。

 先程、不老不死の追及が幸せの追求にならないとありましたが、本当にそうだと思います。何が自分にとって幸せなのかということはそれぞれの人が自分自身で探求していかなければならない。すごく深く善と悪を考えることは難しいことですが、言葉にすると難しいですよね。私は映画のなかでそれを提案したつもりでいます。


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 2.モノクロ表現はアニメーションならでは
AA
 コントラストという言葉がたびたび出たのですが、映像の表現をする際に、なぜ実写でなくアニメーションを選んだのですか?やはりコントラストな演出をするのに必要だったのですか?

監督
 やはりモノクロ画像にこだわりました。光と影の感じをモノクロの実写で人々の表情を出すのは難しいです。ですから光と影を強調するにはやはり3Dのアニメーションが優れているわけです。

 そういう光と影のバランスをうまく取るというのが、非常に重要性でした。そうでなければ、話は違ったかもしれませんが、当初の目的がそういうことだったためにアニメーションになりました。

AA
 役者さんの反応はどんな感じでしたか?自分の演技がアニメーションに変わることについては?

監督
 今回は舞台の役者さんたちがほとんどだったんです。彼らは舞台でお客さんに観てもらうことになれているので、最初は少し戸惑ったところがありました。3Dアニメーションでこうなるんだと仮想の演技をしなければいけないわけです。

AA
 それでもお互いにうまくいったというわけですね。

監督
 協力関係は非常にうまくいったのですが、それでもやっぱり演じる側にフラストレーションが高まる部分はありました。彼らの動きがとても大切で、だからこそ本当のアニメーションでなくて、モーションキャプチャを使ったわけです。

 けれども彼らは顔を見せることは出来ないし、声も自分の声でなくなってしまったりするわけです。そういった部分で彼らの要求不満がたまるところはあったと思うのですが、それでも何とか克服出来たわけです。
 なかなか判ってもらうのが難しかったのですけれど、でもだんだんやっていくうちに結構これは面白いと楽しんくれるようになりました。

 3.日本のアニメ・マンガがルネッサンスを生みだした
AA
 もうひとつフランスのアニメーションについても伺いたいのですが。フランスのアニメーションが日本のアニメともアメリカのアニメーションとも違う何かというのはあるのでしょうか?

監督
 フランスのアニメーション界というのはおっしゃるように日本ともアメリカとも違っています。アニメーションというと子供とかファミリー向けのものを作っているというイメージが強いんですね。演劇とも文学とも違う少し複雑な判りにくい位置づけをされていると思います。

 例えば文学なんかは芸術のジャンルとしては高いわけですよね。小説家なんかですと「あー作家なんだ」と尊敬されるのですけれど、アニメーション作家だというとバイトでやっているみたいな感じに思われます。
 ですから7年間かかって『ルネッサンス』を作ったんですというと「本当の仕事はなんだ。」とか聞かれて、子供が落書きをして暇つぶしをしているように思われてしまうとか、アニメーション作家の位置づけは社会的にはとても低いですね。

AA
 そうしたなかでこうした大人向けのアニメーションの大作を監督されたわけですね。

監督
 最後につけ加えたいのですが、『ルネッサンス』は子供とかファミリー向けでなくて大人の青年以上の人を対象に作ったアニメーション映画です。これは日本のアニメとかマンガの影響を受けているんですね。

 日本のアニメ作家とかマンガ作家のかたがたは、本当の大人向けの作品を作っている。こうしたものがなければ『ルネッサンス』は出来なかったと思うし、そういう作品に匹敵するようなものがなかったので、フランスで大人向けのアニメーション作品を世に出したいという思いが生まれたと思っています。

『ルネッサンス』
オフィシャルサイト http://www.renaissance-movie.net
7月14日より、シネセゾン渋谷ほか全国にてロードショー!

《声の出演》
ダニエル・クレイグ(『007/カジノ・ロワイヤル』)
キャサリーン・マコーマック(『スパイ・ゲーム』)>
ジョナサン・プライス(『未来世紀ブラジル』『エビータ』)
イアン・ホルム(『エイリアン』『ロード・オブ・ザ・リング』)


《スタッフ》
監督・デザイン原案: クリスチャン・ヴォルクマン(短編アニメーション『Le Cobaye』『Maaz』)
製作総指揮:>ジェイク・エバーツ
作曲・編曲: ニコラス・ドッド
ストーリー原案: マチュー・デラポルト、アレクサンドル・ド・ラ・パトリエール
オリジナルヴィジュアルコンセプト: マーク・ミアンス
セットデザイン: シルヴァイン・デスプレッツ(『グラディエイター』『エイリアン4』『フィフス・エレメント』)、ヘレン・ジラウド(BD界の巨匠メビウスの娘)
アニメーションスタジオ: アティテュードスタジオ
技術サポート: IBM
フランス・イギリス・ルクセンブルグ合作(英語)2006/シネマスコープ/ドルビーSRD/106分/
提供: ハピネット、トルネード・フィルム、Yahoo!JAPAN
配給: ハピネット、トルネード・フィルム
 

 
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