『咲-Saki−』 小野学監督インタビュー その1
                 美少女で描く本格派麻雀アニメ誕生の秘密

■ 小野 学 (おの まなぶ)監督 (アニメ監督)
代表作: 『ドラゴノーツ』、『トランスフォーマー ギャラクシーフォース』

■ 『咲‐Saki‐』
「ヤングガンガン」(スクウェア・エニックス刊)で大人気連載中の原作をアニメ化。美少女が多数登場し、麻雀対決の中で友情、愛情を盛り上げていく、かつてないコンセプトが人気と話題を呼んでいる。

制作はGONZO第5スタジオが担当。代表作である「ストライク・ウィッチーズ」で培ったノウハウを最大限に活用する。
また、セガの運用するオンライン麻雀ゲーム「セガネットワーク対戦麻雀MJ4」の新バージョン「MJ4 Ver.C」に『咲-Saki-』シングルモードが搭載される予定もある。この春全国アーケードゲーム稼動予定だが、監督専用カードをセガが制作予定もあり「MJ4に度々監督も参戦するかも!?
今回は実際に麻雀も大好きという小野学監督に、『咲-Saki-』の魅力を伺った。
スペシャルサイト http://www.saki-anime.com

 『咲-Saki−』の監督は運命的だった

アニメアニメ
(以下AA)

はじめに作品として『咲-Saki-』を初めて知られたきっかけから伺わせてください。


小野学監督
(以下敬称略)


作品を最初に知ったのは、主にネット上でこのマンガが話題になっていたのを見てです。こういうマンガがあるんだと知って、そこで読み始めました。

AA
そのときは、作品を監督するという前提ではなくてですか?

小野

いや、全然関係ないところです。個人的に麻雀が好きなので、麻雀マンガとかもよく読んでいるので、こういう麻雀マンガがあるんだって、当時は思って読んでいました。

AA

その時はどのように思いましたか。監督というのはまた別にして、作品の魅力はどうでしょうか?

小野

麻雀シーンがきっちり書かれているなというのは、読んですぐに分かりました。その上で女の子がかわいいというので、新たなジャンルの可能性があるなと思いました。
当時はドラマCDが出ることが決まっていた時期で、ドラマCDが出るんだから、きっとどこかほかの会社でアニメ化の企画で動いていて、もう準備しているんだろうと思っていましたね。


(c)小林 立/スクウェアエニックス・清澄高校麻雀部

AA

その後、アニメはどうですかという話が来たわけですが、これはどういうかたちだったんですか。

小野

当時、別の作品で、GONZOに入っていまして、月曜日の朝に入りましたら、GONZOの企画の人から、こういう作品をうちで動かしているので、監督どうですかと言われたのが最初です。

AA

そのときはどのように思いましたか。

小野

実はその前日の土曜日の夜から日曜日の朝にかけてですけど、麻雀を打っていました。その麻雀を打っていた仲間がアニメ業界の人たちで、ここにいる人たちでいつか麻雀アニメとかをやりたいねみたいな話が本当にたまたま出たんですよ。
どういう作品だったらアニメに出来るだろうかみたいな話が出た時に、僕は『咲-Saki-』を知っていたので、実はこういう作品があって、話題になっているんだよと話をしていました。ただその時も、でもたぶんアニメ化はどこかで動いているなと話をしていたんです。その話をした翌日に、本当に話をもらったので、ちょっと運命的なものを感じました。

AA
アニメ化をする時に、では、自分はどこをどうしようというのはすぐに思いつかれたんですか。

小野

そうですね、闘牌シーンがかなりしっかりしていたので、そこは大丈夫だなと思いました。あとは、いかに麻雀を打っている女子高校生がいる世界観を、普通に描けるかということ。麻雀を打っているシーンは、アニメーション的な見どころをつくるのが難しいんですよ。
アニメーションは動いている絵という魅力があるのですが、麻雀は打っている時、基本的な動作以外はない。アニメにするには、それほど向いている題材ではないとは思いました。そこを見せていくうえで、どういうふうにしたら観ている人を退屈させずに出来るかを考えました。

AA
確かに麻雀は動きがないですね。漫画だったら止め絵で対決をみせるというのはありますが。アニメではそれをどういうふうにクリアしていけると思ったんですか。

小野

実際にシナリオや絵コンテと始めてみるまで、具体的な案というのがなかなか浮かばなかったんですよ。コンテを描く段階で、ちょっと見せ方については悩みまして、多少時間はかかってしまったんです。

動きもそうですけれども、マージャンを打っている時間のコントロールみたいなものがアニメーションでは大事かなと思っています。
麻雀を打っている時は、基本的には4人で打つもので、1人がつもって、切ってという動作を繰り返すわけです。けれども、そこをアニメーションで全部書いていったら、尺はいくらあっても足りない。アニメを見ている人もそこを観たいわけではないので、時間をうまくコントロールしつつ盛り上げるにはどうしたらいいんだろうということを考えながら、1話のコンテを描きました。

 作中の牌譜が全て存在する緻密さ

AA

テレビで観ていて麻雀の役とかが出てくるのですが、ぱっと出て流れていってしまいます。あの牌はきちんと揃えられているのかとても気になっています。

小野
書かれないところでも、全局、全ゲームの牌譜は作ってあります。

AA
それはどなたが組み立てているんですか。

小野

原作の小林(立)先生も、自分であの牌譜を作っているんですよ。僕はあまりにもしっかりした闘牌シーンなので、プロ雀士の監修がついているんだろうと思っていました。初めてお話をした時に、プロの方が監修に付いているんですかと聞いたら、いや、自分で作っていると話されたのでちょっと驚いたんです。

そこで、小林先生から原作にある牌譜をいただいて、それの足りないところをスタッフでやっています。山本浩憲という人間に牌譜監修を頼んでいます。
実はその山本も、この監督の話をいただく前日に麻雀を打っていた仲間の1人であったりするんです。牌譜を全部作りまして、1カット、1カット写真起こし、カットを作る人に渡しています。

AA
それは咲のプラマイゼロで和了るに匹敵する緻密さですね。

小野

カットを作る人とか、アニメーションの原画を描く人全員が麻雀を知っているわけでもないし、詳しいわけでもないですから。それこそ一手一手、写真を撮って間違いのないようにしています。


(c)小林 立/スクウェアエニックス・清澄高校麻雀部

AA

麻雀というとわりと今のイメージだとおじさんのゲームというものもあります。一方で、女の子が麻雀で活躍というそのずれが魅力だと思います。その時に作品は誰に向けて作っているというのはありますか。

小野

もちろん深夜にアニメーションを見てくれる人をターゲットに、作っているつもりです。ただそういう人たちが、必ずしも麻雀に詳しいわけでありません。麻雀を全く知らない人たちにも向かってアニメを発信する時に、どういう作りにすればいいのかというのは、散々話し合いました。結果、麻雀のルールを事細かに作中で説明する必要はないだろうとなりました。

麻雀入門のアニメではないので、それをしちゃうと蛇足過ぎるだろうと考えました。麻雀を知らない人でも、何が起こっていて、どういう状況なのかというのを、映像の表現できっちり分かるように作りたいなと思っています。
凄いことをしているんだったら、演出でこれは凄いというのを分かってもらえる作りを目指しています。

AA

例えば、役満でアガルという、その勢いが出ればですか?

小野

そうですね。役満が何か分からない人も、当然アニメを見ているわけです。
その人たちに向けて役満というのはこういう役なんだよという説明をしなくても、何かすごいことが起きたんだなと分かる演出を目指しています。

AA

するとあんまり説明は入れないけど、楽しそうなことが起きているということで、逆にそれが麻雀への導入になるかもしれないですね。

小野

そうですね。本当に最小限の説明とかは入れたりはしていますけれども、基本的に4人で打つものだとか、サイコロを2回振ってとか、そういうことはまったく説明していません。
アニメやマンガの『咲-Saki-』を見て、麻雀を覚えたいなとか、打ってみたいなと思ってもらえると、個人的にはすごくうれしいです。

■その2に続く

 
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