『ストレンヂア 無皇刃譚』 安藤真裕監督インタビュー 2
                            刀を振ったら人は死ぬ。必然です。
  
4. 物語のテンションとスピード

アニメアニメ
(以下AA)

物語でもスピードがついて行くような感じです。

安藤監督
(以下監督)

そうですね。子供が奪われた時点から名無しが追いかけ始めて、どんどん進んで行きます。そこからストーンと終わるのは最初から考えていたんです。
100分ぐらいのアクションものの構成だと、お寺で子供が奪われた後、名無しは普通あそこで一回怪我をして、自分の人生を振りかえって「よしいくぞっ!」て、子供を助けに行くのが、大体の構成なんです。
けれど、ここでは始まったかなと思ったら、ぐんぐんとテンションを上げていく構成にしたいなというのがありました。

AA

映画を観ていて、非常に無駄のない映画、削ぎ落とされた映画という印象を受けました。
明の話があったり、戦国時代の話であったり、でもそれは説明しないでストーリーだけでどんどん引っ張っていく。

監督

ただ、それは賛否両論があります。特に今のお客さんは、きちんと説明しないと判ってくれないというのもあります。それをしなくてはいけないかと考えました。
しかし、最終的には自分の好きな映画と思った時に、俯瞰じゃなくてそこ置かれた状況だけで物語が進んでいく様にしたかったのです。時々状況が見えてくるという感じにしたいなというのがありました。

冒頭に字幕で、「古くから中国は・・・」とやって物語が始まれば若干分かりやすいとは思います。でも、それは嫌だなって、そういうのはあまり好きでないんですよ。

AA

シンプルになったことで逆にお話に入りやすくなったように感じるのですが。

監督

たぶんそれは僕と年が近いかたの意見ですね。僕のなかではシンプルな話なので、なるべく説明しない方向で行きたいと思いました。

この分かりやすい話を説明してしまったら、本当に分かりやすいというか、裏も表もない話になってしまいます。
70年代のアメリカとかでよくあったと思うのですが、ジャンル映画の刑事ものなら刑事もの、バックボーンはあるけれど見せずに、刑事アクションものの面白さを盛り込んで90分なり100分で、その間に全部見せてしまうようなものをやりたいなと思ったんです。


(c)BONES/ストレンヂア製作委員会2007

5.  刀を振ったら人は死ぬ

AA


物語についても伺いたいのですが。名無しと仔太郎、羅狼と風午、将監と重郎太と異なった三者三様の「大人と子供」のかたちが出てきます。これはどうした意味があるのですか?

監督

シナリオを書いた高(*)山(文彦)さんが巧妙にそういうのを仕組んでいています。尊敬とか憧れとか微妙に違うのですけれどあの時代の上下関係とか取り込んでいるんです。
それを深く説明するわけでなく、あの時代の特有の雰囲気を出しています。名無しと仔太郎が見えない絆だったり、羅狼と風午が憧れだったり、将監と重郎太が忠誠だったり、微妙に変えながらも、下の者が上の者を慕うというのを表現しています

(*)高は本来は(はしご高)です。以下同様。

AA

物語の中での動物の位置づけは重要ですか。犬の飛丸は重要な役柄と思いますが。

監督

それは深い意味はないですね。飛丸は物語上必要だった。名無しと仔太郎が初めて出会って100分のなかで親しくなっていくには、何か違う物語上のアイテムが必要で、それは人であってはダメ。それで犬でした。犬というのは好みの問題で入れたものです。

でも思いのほか犬の存在が好評なんで、びっくしりしました。本当に殺さなくて良かった(笑)
僕が、最初に考えた段階だと飛丸は死んでいたんですよ。それは高山さんのほうから「犬は殺せないな」って、人はこんなに殺しているのに(笑)。

AA

終盤に向かって登場人物がばったばったと倒れていくのですが、この展開は?

監督

「時代劇だから」としか言いようがないですね。刀を振ったら人が死ぬ。必然ですから。僕もシナリオが上がった段階で読んで、本当にこんなに人が死ぬんだ・・・と思いました(笑)。
当たり前だけれど、うーん、これは爽やかなアクション物にはならないなって。でもラストはなんとか爽やかに着地したい、これは至難の技だなって。

それは欲にかかれた人間の末路じゃないかな。手柄だったり、お金だったり、不老不死だったり、そうした人が集まってみんな死んで、最後に純粋無垢な者が残る。欲の中に最後に立つのは純粋な者のみ、という構図を出したかった。



(c)BONES/ストレンヂア製作委員会2007

6. 音楽そして声優

AA

話が変わりますが、声優の長瀬(智也)さんが非常に良かったのですが、名無しの声はどうでしたか。

監督

本当に良かったなと思いますね。キャラクターに声が引っ張られるというのがあるのですが、長瀬さんも最初はそうだったんですが、最後には声がキャラクターを引っ張りました。名無しは長瀬さん以外に考えられない。本当にベストキャスティングだったと思いますね。

長瀬さんは役者なので飲み込みが早く、勘どころがするどいんです。それと声優さん慣れしてなくて、時代劇慣れしていないところが、うまく現代的なテイストとして戦国のなかにいる異邦人、奇妙な男・名無しというのを表現してくれました。

AA

音楽も非常に素晴らしかったのですが、音楽についてはどういった指示を出されていたのですか?

監督

あれはもう作曲された佐藤(直紀)さんの才能であり、実力です。
僕は、作品は時代劇ですが、あまり時代劇めいたものは嫌だなと思っていたんです。若い人にも観てもらいたいというのがありました。佐藤さんには、出来れば無国籍ぽく、時代劇ぽくなく、でもアクションシーンに太鼓は欲しいといったかなり無茶なお願いをしたのです。音楽としては、こくがあるのではなく、季節も冬なので少し透明感のある感じで出来ないかなって。
あとは作曲家としての勘どころですね。こうした要望をうまく拾い上げて下さって素晴らしかったですね。

AA

日本以外の国の楽器を使われていますが。

監督

佐藤さんのアイディアです。名無しはストレンヂアであることを隠して生きている設定なので、そうしたことを踏まえて考えて下さいました。
日本の笛に聞こえるけれど、違う国の笛を使って日本の笛の音の雰囲気で非常に異国感がある。これは確かに笛だけれど日本の笛でない、太鼓だけれど日本の太鼓でない。微妙にずらしたアイディアに感動しました。

AA

時代劇で殺伐としているのだけれど、凄くクリアな音楽でしたね。

監督

ああした音楽が流れると浄化したような感じがあり、救われたなと思いました。本当に最後は爽やかに終われるのかなと思っていましたから。

作品自体も、映像の彩度を落として冬の澄んだ感じの透明感を出しているんです。それに音楽のほうでも寒い冬だけれど凍えるような感じでなく、響くような何かいい音楽になりました。
デモテープで聞いた時にこれだと思いました。

AA
ラストは希望の持てるようなかたち、ハッピーエンドと考えていいのですか?

監督

最後については僕の中ではどっちと決まっています。
ただ物語全体を隙がなく作ってしまったので、最後ぐらいは想像出来るような感じを残しておきたいと思いました。

AA

最後になりますが、映画の見所はどこになりますか。これが伝えたかったとかいった部分なのですが。

監督

観たまま受け取って欲しい。映画のなかであまり説明しなかったのは、観た人がそれぞれ答えを見つけるかたちがいいと思うからです。
純粋にチャンバラアクションだけで良かったという人がいれば、それはそれでOKです。自分なりに答えを出す人がいれば、それもそれでいいのかなと思います。

どうしてもいまは答えを用意しないと納得しない人も多いのですが、そうでないものがあっても良いと思うんです。
エンタテインメントとして面白いのが第一なので、楽しんで貰いたい。西洋とか宇宙ではない日本の地についた昔の時代劇を舞台にした東洋ファンタジーとして見ていただければ、凄く新鮮に観ていただけるのでないかなと思います。

AA

本日はありがとうございました。

                             


       『ストレンヂア 無皇刃譚』
        公式サイト http://www.stranja.jp/

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                                           (c)BONES/ストレンヂア製作委員会2007

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