『真・女立喰師列伝』 神山健治監督インタビュー
          「Dandelion 学食のマブ」アニメの方法論は実写にも通用する その1



■ 神山健治 (映画監督)
1966年埼玉県生まれ。スタジオ風雅を経てフリー。当初は背景および美術監督として活躍、94年ごろからゲームのムービーパートなどの演出で才能を発揮し、美術出身の演出家として注目を集める。
『AKIRA』(88年)、『魔女の宅急便』(89年)、『人狼 JIN-ROH』(00年)など多数の劇場作品を経て、『ミニパト』(02年)で初監督。その後、TV『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』、『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』、『攻殻機動隊 STAND ARONE COMPLEX Solid State Society』(02〜06年)を監督、同シリーズのDVDセールスはミリオンを記録。
第9回アニメーション神戸個人賞受賞。監督・脚本を手がけたNHKアニメ『精霊の守り人』(07年)のヒロイン役(声)・安藤麻吹と組んだのが本作『真・女立喰師列伝/Dandelion 学食のマブ』(07年)で、初の実写監督にも関わらず、センシティブかつ安定した演出力を発揮した珠玉作となった。

 1. アニメの方法論は実写にも通用する 

アニメアニメ
(以下AA)

今回の映画に先立つ映画『立喰師列伝』にも出演されていますが、こちらはどのような経緯で参加されたのでしょうか?


神山監督
(以下神山)


前作の立喰師は予算も少なかったらしく、全員内輪のスタッフで、役者も含めて賄おうと。押井さんの人脈で役者も呼ばれていますので、そのうちの一人でした。
僕は立喰師ではないので、大したことはしないでいいと思っていたら、後で見たら意外と出ているし、尺も長い。

AA
今回の『真・女立喰師列伝』の中の神山監督の『Dandelion 学食のマブ』は、オムニバス中、唯一前作とのつながりをみせる作品ですが、つながりをつけることを決められていたのでしょうか?

神山

今回は全部「女立喰師」ということで、女優を撮ることが押井さんからの課題で、それ以外の縛りはなかったんですね。
他の監督が決まっていて、僕は最後の枠に呼んでいただいたのですが、どういう女優を撮りたいかをプロットで決めておくのが、この作品に参加する上でのルールだったんです。

僕は全然あてがなくて、話をいただいて2週間後ぐらいにプロットを書かなくてはならない状況だったんです。
女優さんのアイデアよりも最初に浮かんだのが、前作で自分が出ていた神山店長のその後ということにして、その上で神山店長がどのような女立喰師と戦うのかと、逆算で考えました。つながりを求められたのではなくて、僕なりにこの作品をやる上で、前作の設定を使わせてもらったという形です。

AA

主演の安藤麻吹さんは、『精霊の守り人』(バルサ役)での主役経験から今回も起用されたのでしょうか?

神山

アフレコで毎週会っていましたし、俳優座の女優さんでもあるのでね。すごく性格がさっぱりしていて気持ちのいい方です。
押井さんや他の皆さんも自分の好みの女優をいっていると思うんですよ。
安藤さんのそういう性格って素敵で、安藤さんを想定して脚本を書こうとしました。そこは全然悩みませんでしたね。

AA

キャラクターとしては映画のキャラクターと実際の安藤さんとでかぶるところはありますか?

神山

あると思いますね。
劇中で「蓮っ葉な物言い」というナレーションがありまして、それをやってくれたのは麻吹さんの俳優座の先輩の内田夕夜さんなんです。ナレーションを朗読している時に「安藤さんにあてたみたいですね」と言われました。

AA

『精霊の守り人』で主役に決めたときに、俳優座でのお芝居を観られたんですか?

神山
今回は主役のバルサという女性と、少年のチャグム役は実際に来て頂いて、アフレコのような形で、第一話、第二話あたりの重要な台詞をちょっと読んで頂くという形でオーディションをさせていただいたんですよ。

そのなか僕がひとつ重要視していた台詞があって、それは声を荒げるシーンなんです。語弊があるかもしれませんが、怒鳴る芝居ってある種、誰でもできるんですよね。
ただ、そこで怒っている裏側が見えてくる人がいいなと。愛情があるがゆえに怒っているんだというのが、説明しない段階で聞こえてくるという、かなりハードルが高い条件で僕は見ていたんですよね。

100人近いオーディションのなかで、そういう感覚が芝居に表れている人は数人しかいなくて、安藤さんは最初から説明する前にまず、本人の感覚で演じていただいたときからそれがあった方でした。

AA
その時に重要視された表現は今回の『学食のマブ』でも生きていますか?

神山

すごく生きていますね。実際アニメほど台詞がないので、ますますそういうところが出ていると思いますよ。

AA
今回も監督が出演ということですが、脚本と監督と出演と、なかなか両立するのが客観視する上でも難しかったのではないかと思いますが、これについてはいかがでしたか?

神山
自分が出ているカットは正視できないものがありますね(笑)

AA
そういう時に編集はどなたがやるんですか?

神山

最終的には自分で切ったりしているんですが、なるべく自分が出ているところを切ろうと。(笑)
アフレコはナレーションの内田さんにやっていただいたので、あくまで僕はアニメの方法論で、素材として出演していると思って頂ければと思います。
それもあって、台詞のない構成にしてあるので。

AA
今回の実写と普段のアニメとではいろいろ方法論が違うかと思いますが、どういうところを意識しましたか?

神山

意識的に変えたところはなくて、ある程度アニメの方法論が実写にも通用すると思って撮っていますね。
自分が出ているのも、水準以上の演技が必要だと思ってないから許せるわけです。そこに頼らないで、ある程度必要な画を撮ることができれば、一つの物語として成立させることができるはずだと思います。

やっぱりアニメって、ある程度記号で乗り切るしかない部分がいっぱいあって、それを毎回やってきたわけですよね。でも、実写ってアニメ以上に必要な画をその場で撮れるわけです。
その場で多少の軌道修正で、なんとか済んでしまうところがあれば、ちゃんと物語になるし映画になるし、アニメの方法論の延長でやれたんです。そんなに差はないなと感じましたね。

ただ、僕が実写の方のシステムをまだまだ理解し切れていないところがあるので、それがはじめから分かっていれば、もう少しできたのかなというのはありますけど。

AA

大学生の役をやられていますが、それを含めて役作りで考えられたことは何ですか?

神山

これもアニメの方法論といっしょで、髪の毛の長さを逆録りして、長い順に録っていくとか、大学生らしく見える服装だったりとか、アニメの方法論で、何となく大学生に見えるだろうと。アニメって若い頃になろうが、顔が同じじゃないですか。麻吹さんも大学生役やれるのかなぁって心配していましたけど、大丈夫でしたね。

■その2に続く 映画は意図的に欠落を獲得していくアートである

 
 page topへ