同人・アニメ・萌えを斬る!           第4回 その1
by@シアトル 著者の紹介  @シアトル
2001年10月弁護士登録。以来コンテンツ(アニメ、ゲーム、音楽等)やインターネット関連の業務に主に携わる。今夏よりアメリカ留学中。 


  

 第4回 その1 コスプレ衣装制作と法律  

 今年も早いもので、もう12月。季節柄冬コミの到来を心待ちにしている人もいらっしゃると思いますが、コミケの華といえば、やっぱりコスプレ。多くの人の熱気溢れる会場で、マンガやアニメまたはゲーム等に登場するキャラクターを模した衣装やウィッグを身にまとい、颯爽と歩くコスプレイヤーの姿に、心を癒される人は少なくないでしょう。

 また、ビジネスサイドからみても、集客目的でコスプレ大会を開いてみようかと考えている方もいらっしゃるかもしれません。
 ただ、そのコスプレ姿、キャラクターの姿にそっくりであればあるほど、ある疑問が湧きでてきませんか。キャラクターの権利者に無断でコスプレしてもいいものか、という疑問が。

 というわけで、今回は、コスプレに焦点をあてて、法律上の問題点について検討してみたいと思います。

1.キャラクターに対する法的保護

 
 まず、コスプレはアニメやマンガその他に出てくるキャラクターのイメージを利用することになるので、キャラクターを利用するにあたっての権利、すなわち一般的に「商品化権」(マーチャンダイジングライツ)と呼ばれる権利との関係が問題となります。
 この「商品化権」という権利は、ご存知かもしれませんが、法律上明記された権利ではありません。この権利は、実務上便宜的に用いられている名称であって、具体的には著作権法や商標法、不正競争防止法に基づく権利が組み合わせられて成り立っています。

 したがって、コスプレに関する法律上の問題は、商品化権、具体的にはそれを構成する著作法、商標法および不正競争防止法に基づく権利との関係を検討することになります。

 ただ、コスプレをめぐる法律上の問題点は、意外と多く、かつ難解です。

 そこで、コスプレをめぐる法律上の問題点を前・後半2回に分け、今回は、(1)コスプレを自作すること、そして(2)そのコスプレを様々な会場で披露することに関連して生じる法律上の問題に焦点を当てて解説したいと思います。

2.コスプレ用の衣装を自作する行為

 
(1)商標法・不正競争防止法

 まず、商標法・不正競争防止法が適用されるのは、主にビジネスとしてこれらを販売する(販売するために製作する)場合に限られています。
 したがって、コスプレ用の衣装を自作する行為に関しては、それらを自ら着て楽しむ限りにおいて、これらの法律が適用されることはありません。

(2)著作権法

 次に、コスプレ用の衣装を自作することが著作権侵害になるかについて説明します。

ア 著作物性

 (ア)キャラクターの著作物性

 一般的に、マンガやアニメ等のキャラクターは、そのマンガやアニメ等の一部として表現されている以上、当然「美術の著作物」または「映画の著作物」として著作権により保護されることになります。
 ただ、マンガやアニメに出てくる全ての表現が著作物として保護されるわけではありません。著作権法上著作物として保護されるのは、創作性のある表現に限られているのです。これは、創作性のない一般的な表現まで広く保護すると、それ以降他人が同様の表現を行うことができなくなり、他人の表現活動に多大な支障を生じてしまうためです。

 したがって、創作性のない表現に関してはそもそも著作物として保護されることはありません。仮に創作性があってもその程度が小さい表現に関しては、著作物として保護される幅はきわめて低いものとなります。
 アニメに出てくる一般的なもの、例えば、一般的な形のビルや、学園もののアニメに出てくるような学習机や椅子、その他の普通の形を普通に描いたものについては、創作性がなく、著作物として保護されないか、創作性があっても非常に低いものとして、著作物としての保護の幅が極めて低いということになります。

 そのため、創作性がないか、創作性があっても非常に低いものを無断で流用したとしても、そのままのデッドコピーでもない限り、著作権侵害と判断される可能性は低いということになります。

 (イ)キャラクターの衣装の著作物性

 
では、コスプレの場合はどうでしょうか。コスプレとは、一般的にはキャラクターの衣装や髪形等を真似ることで、そのキャラクターになりきるものです。

 したがって、その衣装や髪形だけを見てそのキャラクターにどの程度創作性が認められるかが問題となるわけです。キャラクター全体として創作性が認められたとしても、当該キャラクターの衣装や髪形に創作性が認められない場合としては往々にあるわけです。

 たとえば、「ドラえもん」に出てくる「のび太」は、全体としてみればキャラクターとしては間違いなく創作性があり、その意味で著作物として保護の対象になりうることに疑いの余地はありません。しかし、その服装(黄色いセーターに青い半ズボン、そして大きな丸メガネ)に関しては、余りに一般的な表現すぎて、なかなかそれ自体に創作性があるとは言いにくいように思われます。

 したがって、「のび太」の服装自体が著作物として保護されるとまではいえないように思われます。(これをやる人がいるかは分かりませんが)

 では、それなりに趣向をこらしたものについてはどうでしょうか。ここからは、特段判例等がない世界ですので、当方の独自の見解であることをお含みおきください。


  ■ 日常生活には余り見られないもの

 まず、スターウォーズに出てくるダースベーダーや帝国軍兵士のようなもの(これをコスプレというかは別として)に関しては、単なる宇宙服とはかけ離れた非常に特異な衣装であって、これらに創作性を認め、著作物として保護したとしても、以後の創作活動に特段支障を生じさせないもののように思われます。
 また、デ・ジ・キャラットに出てくる「でじこ」や「うさだ」のように、頭に大きな鈴をつけたり、さいころをつけたりする場合も、この発想自体が特異なものであって、これらについても著作物性を認めるだけの創作性はあるように思われます。

 これらについては創作性があると判断されるものと考えられ、これらについてコスプレ用の衣装を作ると、著作権侵害の問題があるということになります。

  ■学園もののセーラー服やブレザーその他制服のようなもの

 これに対して、例えば、学園もののアニメに出てくるようなセーラー服やブレザーのようなものに関しては、創作性が認められるかというと非常に微妙(どちらかというと否定的)といわざるをえません。

 なぜかというと、セーラー服やブレザーというものは、結局その色調や襟のワンポイント等非常に狭い範囲でその差異を認識するものであって、その表現の範囲には限界があるからです。
 
したがって、学園もののセーラー服やブレザーその他制服のようなものについては、そもそもそれのみでは著作物の対象とならないと考えられるものも相当あるものと考えられます。

 また、「らんま1/2」の「らんま」(オレンジ色の胴着にオレンジ色のお下げ)や「うる星やつら」のラムちゃん(トラ柄のビキニ)についても、衣装自体はよくあるもので、色や柄についても通常存在する表現の範囲を超えないように思われます。
 これらについては、そもそもコスプレ用の衣装を作っても、著作権侵害となる可能性が低いということになります。

 もっとも、この辺りはセーラー服やその他コスチュームへの思い入れによって創作性を見出す範囲が異なるように思われますので、最終的には、「裁判官のコスチュームへの思い入れ」次第というところは否定できないでしょう。

イ 著作権の侵害行為及び制限

 次に、著作物の対象と評価される衣装を真似してコスプレの衣装を作成する行為は、著作権法的には、厳密には「複製」または「翻案」と評価されますので、複製権(著作権法第21条)または翻案権の侵害(法第27条)となりえます。

 もちろん、個人で楽しむだけのためにコスプレの衣装を作成する限りにおいては、著作物の私的使用となり、著作権の侵害とはなりません(著作権法第30条、第41条)。


ウ 注意点

  しかしながら、以下の点には十分ご注意ください。

 まず、ある企業が自社イベントその他で利用するためにコスプレの衣装を作成するような場合(外注する場合も含みます。)には、(たとえそれを販売しなくても)当然ながら著作物の私的利用とはなりません。
 したがって、このような場合には著作権の侵害が認められることになります。

 また、当初は個人で楽しむために作成したコスプレの衣装であっても、コスプレをする機会をなくしたか、または一旦自分で楽しんだかを問わず、そのコスプレ用の衣装を他人に販売したりすると、その時点で「著作物の私的使用」ではなくなります。

 最初の時点に遡ってコスプレの衣装を作成する行為自体が著作権侵害と評価されることになります。

          その2 コスプレイヤーと法律         
 
    

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