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2010年01月23日
アニメ・映画 ]
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文;氷川竜介(アニメ評論家)

 奇跡のパワーを秘めたアイテムで美少女が変身! ステッキを武器にバトル! 「魔法少女もの」は女玩(女児向け玩具)の販促企画の作品群からスタートし、いつの間にか「大きなお友だち」向けにひとつのジャンルを形成するようになった。本作『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st』(原作・脚本:都築真紀/監督:草川啓造)も、そんなジャンル作品がファンに支えられて成長し、ついに劇場版にまで登りつめた映画だ。合計3シリーズが制作されたTVアニメ版「なのは」を表紙にするとアニメ雑誌の部数が確実に伸びるという定説があるほど、堅実で熱い層をつかんでいる。
 そんな人気シリーズを改めて新シナリオ・新作画で映画としてリメイクする試みという点では、ファンムービーの典型とも言える。だが、それを突きつめたところにある種の迫力、高みのようなものが感じられた。

 『なのは』を愛するファンのために、作り手が「良かったところ」を抽出し、新たな見せ場として再構築する。それは当たり前のことだ。そして、一般にクリエイターたちはやや冷静で客観的な立場になって、観客をさらなる高みへとリードしようと試みるはずだ。ところが、この劇場版では映画が進行するにつれ、明らかに作り手の側も『なのは』を溺愛していることが伝わってきて、それに圧倒されてしまうのである。
 「これが、なのはだ!」「これが見たいだろう? そうだ、自分も見たい!」とでも言わんばかりの、輝かしき情熱の発露。それはもはや「愛」としか表現できない。その波動や輝きが映像に転化し、カットごと、シークエンスごと、セリフごとに燃えあがって、スクリーンから放散されて観客の全身を震わせる。『なのは』に強い興味のなかった筆者でさえ、評価検分という職業病を封じられて「これはすごい」と感じたのだから、ファンを満載した映画館ではどんな熱気が生まれるのか、かなり興味がある。
 鑑賞前は「えっ、130分?」と尺の長さにも思わずたじろいだが、実は映画の中身は濃厚だから心配はない。主人公である9歳の少女なのはが初めて魔導端末レイジングハートを手にして魔法少女に変身するきっかけ、最初の戦い、さらにそのミッションを妨害しようとするライバル魔法少女フェイト・テストロッサとの出逢いなどなど、舞台を変え、手を変え品を変えて、バトルを中心にアクセル全開のスピードで物語が進行する。

 劇場版として特筆すべきは「音響」だ。なのは役の田村ゆかり、フェイト役の水樹奈々とダブルヒロインの声の明瞭度が増し、戦闘シーンにおけるギミックの作動音、爆発や着弾などの迫力向上は言うまでもない。一番の注目ポイントは、バトルを支える魔導端末レイジングハートのクールビューティなボイスだ。設定的には小道具の無機質な応答音声なのだが、なのはにネイティブな英語でチュートリアルを指示し、ともに戦って苦難を乗りこえていく、そのパートナーシップのけなげさには、思わず涙なのである。
 劇場版「1st」では人気に火をつけたTVアニメ第1期全13話(2004年)の「ジュエルシード」編をまとめた。この映画の凝縮度は、『なのは』をまだよく知らない観客に魅力のエッセンスを訴求するエントリーフィルムの役割もはたすはずだ。「ビジュアルは知ってるけど、どんな作品?」と知りたい方にはオススメの130分である。

『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st』
http://www.nanoha.com/

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アニメ・映画 ]
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文: 柿崎俊道

2010年1月23日公開の劇場版『Fate/stay night UMLIMITED BLADE WORKS』の試写会へ行った。
『Fate/stay night』は熱烈なファン層を獲得している作品だ。
2007年にテレビシリーズが放送され、人気を博した。
とはいえ、原作はテレビシリーズではない。
原作は同名のアダルトゲームである。

原作の『Fate/stay night』はゲームであるがゆえに、
複数の攻略ルート(といっても少ないけども)があり、
どれを選ぶかはプレイヤー次第だ。
映像作品として起用されるエピソードも、そうしたルートのひとつを中心にしている。
たとえば、テレビシリーズでは
主人公・衛宮士郎と美少女セイバーを中心に構成されたストーリーだった。
劇場版ではキービジュアルのとおり、
遠坂凛と美形の弓兵アーチャーを中心に描かれる。

本作はテレビシリーズと対になるように構成された作品だ。
そのため、映画館に足を運ぶお客さんはすでにテレビシリーズを見ているだろう
という制作姿勢からか、世界観の説明は一切ない。
とくに衛宮士郎とセイバーの契約のシーンはとても重要だと思うが、
サッと描かれ、あっさりと次のカットへ移行する。
しかも、戦闘シーンが多い本作では、
登場人物は数々の強敵から無数の傷を負わされる。
だが、それも包帯を巻かれたくらいで、いつの間にか元気に歩いている。
そうした戦いの目的である「聖杯」は、
どんな願いでも叶うという代物らしいが、
登場人物たちはそれを手に入れてどうしようというのか。
最後まで見ても、まったくわからない。
そもそも、ふつうの高校生であろう衛宮士郎が
なぜ魔法が使えて、サーヴァントと呼ばれる使い魔を受け入れているのか。
劇場版だけではよくわからないことが盛りだくさんなのだ。

これは、作品を否定しているのではない。
知っているファンにこそ見てほしい、まずファンを満足させたい、
という制作側の姿勢がはっきりと打ち出されている証拠だと私は理解した。
公開予定の上映館リストを見ても単館が多く、
広く一般向けには考えていないことがよくわかる。

本作はアダルトゲームが原作と前述したが、
劇場版もあたかもゲームのようである。
気の利いたアダルトゲームにはスキップ機能や早送り機能があり、
自分の好きなシーンへすぐに飛べるようになっている。
分岐点が多いゲームではとくにこの機能が重要だ。
全ルートをすべて攻略したいのがプレイヤーの性である。
その際に、一から順に進めていたのでは、面倒くさくてかなわない。
体験済みのシーンはサッとスキップ、もしくは早送りしてしまうのだ。

劇場版『Fate/stay night UMLIMITED BLADE WORKS』も同じだ。
ファンがよく知っているエピソードは軽く流して、
新しいシーン、派手な戦闘シーンに力を注いでいるのがよくわかる。
決められたスケジュールと予算の中でできることは限られている。
ファンが一番見たいであろうシーンを中心に構成する、
というのは間違ってはいない。

ただ、個人的に気になることがある。
アダルトゲームが原作なのに、アダルト要素が少ないことだ。
ファンのみなさんは満足できるのだろうか。
過去を見ても、人気のアダルトゲームが商業アニメになるたびに、
そうした要素が削られる傾向にある。
一般向けにするためには仕方のないことだとは思うが、
本作のように回りまわってマニア層に特化した劇場作品は
原作のアダルト要素を加味してもよかったのではないか。
それとも、Hシーンはゲームで何度もやっているので、
それで満足というわけなのか。
アダルトゲーム、美少女ゲームが好きな人からよく聞くのが、
「Hシーンを見たいわけじゃないんだよ!
 ドラマに感動したんだ!」
という言葉だ。
そこには、どのようなファン心理が働いているのか。
私はアニメ業界で長く仕事をしているが、
いつになっても、そこだけがよくわからずにいる。

劇場版『Fate/stay night UMLIMITED BLADE WORKS』
http://www.fatestaynight.jp/

◆柿崎俊道 (かきざきしゅんどう)
1976年生まれ。著書に『聖地巡礼 アニメ・マンガ12ヵ所巡り』、『Works of ゲド戦記』、『Kirari 痛車コレクション』など。Twitterは「syundow」、mixiは「柿崎俊道」で登録。

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アニメ・映画 ]
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文:  柿崎俊道

同名カードゲームとともに子どもたちに人気の『遊☆戯☆王』が
映画『劇場版 遊☆戯☆王 ~超融合!時空を越えた絆~』として、
2010年1月23日(土)より全国で劇場公開される。
本作の注目すべき点は「3D立体映像」だということ。
「3D立体映像」はジェームズ・キャメロン監督作品『アバター』
を通してご存知の方も多いだろう。
立体メガネでスクリーンを覗くと、
まるで映像が目の前に迫ってくるように立体感を持つというアレである。
3DCGの技術が実写映像と見分けがつかぬくらい向上した今、
「3D立体映像」へと向かうのは自然の流れといえる。
そうした流行の中、
『劇場版 遊☆戯☆王 ~超融合!時空を越えた絆~』が
「3D立体映像」として登場するのは当然ともいえるかもしれない。

……と思ったのだが、
作品を見終わり、本作における「3D立体映像」の立ち位置に悩んだ。
劇中では「デュエルモンスター」と呼ばれる、カードから飛び出す怪獣がいる。
主人公たちはこの怪獣を操り、強力な敵を打ち倒す。
こうした怪獣のほとんどは3Dデータで描かれているため、
「3D立体映像」として見るのに違和感はない。

問題は主人公たちである。
アニメ業界でセル画調と呼ばれる従来の方法で描かれたキャラクターが
画面の奥、手前、中間といったポジションで配置され、映し出される。
その立体感は立体メガネを通してくっきりと体感できる。
しかし、なんだか居心地が悪い。
その悪さをまとめると以下のようになる。

●セル画調のキャラクターには、動画、仕上げにより、
すでに陰影や線といった立体感が施されている

●手描きで施された立体感の上に、
3D立体映像による立体感が加わっている

●そのおかげで双方の立体感がぶつかり合い、
セルのレイヤー構造がくっきりと見えてしまう

押井守監督の映画『アヴァロン』のような書き割り感といえば、
ご理解いただけるだろうか。
『アヴァロン』は違和感を敢えて演出としていた。

本作はセル画調アニメの3D立体映像化という果敢な挑戦に臨んだ。
その意欲は、次のことを気付かせてくれたように思う。
従来のセル画調で作られたアニメの自然な3D立体映像化を目指すなら、
レイアウト、原画といった画面設計の段階から、
最終的な3D立体映像を計算して描かなければならない。
つまり、アニメーターの脳内で3D立体映像というデジタルな計算をしながら、
手描きというアナログ作業を行う必要があるということだ。

アニメは残像を利用したメディアである。
複数の絵を高速でめくることで動いているようにみえる、
という錯覚を利用している。
手描きなのに、3D立体映像と自然にマッチしているように見せるには、
今まで培ってきた残像の技術を一段掘り下げる必要があるのでは、
と『遊☆戯☆王』は気付かせてくれたのだ。
本作はスタッフクレジットを見ると「立体3Dデザイナー」をはじめとした
3D立体映像に向けた新しい役職が複数設けられている。
実験的な要素が多く詰まった野心作といえるだろう。
また、上映時間は49分という短いものなので、
気軽に3D立体映像を体験できる。
今後のセル画調アニメの行く末を占う意味でも、
映画『劇場版 遊☆戯☆王 ~超融合!時空を越えた絆~』を見て損はない。

映画『劇場版 遊☆戯☆王 ~超融合!時空を越えた絆~』
http://www.yugioh10th.com/

◆柿崎俊道 (かきざきしゅんどう)
1976年生まれ。著書に『聖地巡礼 アニメ・マンガ12ヵ所巡り』、『Works of ゲド戦記』、『Kirari 痛車コレクション』など。Twitterは「syundow」、mixiは「柿崎俊道」で登録。

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