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2010.06.25
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「宇宙ショーへようこそ」計算し尽された最高のエンタテイメント
舛成孝二監督に聞く

 6月26日、長編アニメーション映画『宇宙ショーへようこそ』が公開する。『おおきく振りかぶって』シリーズや『黒執事』などの数々の人気テレビシリーズを世に送り出して来たA-1 Pictures制作による初の長編劇場映画である。
 この記念すべき作品の制作スタッフは、第9回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞を受賞した『かみちゅ!』の制作チーム、舛成孝二監督、脚本の倉田英之さん、キャラクターデザイン石浜真史さん、音楽池頼広さんらだ。SFアクションの『R.O.D』シリーズから現代のお伽噺ともいえる『かみちゅ!』を経て、彼らが次に選んだのは、普通の小学生たちが宇宙旅行に出てしまい大事件に巻き込まれるSFファンタジーである。
 実力派のメンバーが集結した本作は、綿密な企画を経て製作期間は丸4年をかけた。じっくりと練られたストーリーは、子供のためのエンタテインメントであると同時に、大人が観るとまた別の楽しみ方も出来る多重構造。映画の壮大な仕掛けを企んだ張本人舛成孝二監督にお話を伺った。2010年夏の話題のアニメ映画はいかに生まれたのだろうか。

■ キャラクターを丁寧に描く地球パート

 『宇宙ショーへようこそ』でまず印象深いのは、全編136分という長さだ。映画はプロローグになる地球パート、それに続く月での話、急展開となる惑星プラネット・ワンのパート、そして怒涛のクライマックスと4部に分かれている。監督も意識して構成した4部構成だ。
 今回『宇宙ショーへようこそ』では、作品のプロローグ22分をテレビ放送やネットなどで先行公開している。この先行公開の部分は冒頭の地球パートが中心だ、そしてこれを見ると作画や背景は勿論、キャラクターそれぞれが非常に丁寧に描写されていることが判るだろう。

 これについて舛成監督は、「オリジナルの作品なので、キャラクターを理解して貰う必要がある。丁寧に描かなければいけなかった」と語る。作品は『ポケットモンスター』や『ドラえもん』のように既に世界が完成しているわけでない、だからこの地球パートではキャラクターを描く必要があるのだと。
 一見スロースタートに見える冒頭も、監督にとっては計算済み、そして映画を観終わった後には、そんな日常的な描写のひとつひとつが意味を持って伝わってくる。
 また同時に、こうした日常の芝居に対する監督の思い入れもあるのかもしれない。「最初は、宇宙の出て来ない普通の話の映画も考えていた」という監督だけに、日常の自然な演出は映画の見所のひとつになっている。

■ 明らかにされていない設定は山のようにある

 実はこうした細かな計算は、映画の至るところに張り巡らされている。監督に主人公が男の子でなく女の子の夏紀であることについて訊ねると「女の子が好きだから」とはっきりとした答えが返ってきた。勿論それは、監督の本音に違いない。しかし、さらに質問を重ねると、キャラクターづくりにも監督による周到な物語の設計が窺える。
 都会から引っ越してきた夏紀は異質存在である。そのことが物語にメリハリを与えるのだ。さらに今回の子どもたちの数が5人であることについて、「当初キャラクターは1年生から6年生までひとりずつ6人を考えていました。でも、それだとまとまらなかった」と話す。物語を進めるうえでベストな数として5人のキャラクターが設定されたわけだ。『宇宙ショーへようこそ』がより完成された作品であるために何が必要かが、十分に練りこまれた様子だ。決定稿まで13稿を重ねたというシナリオも納得だ。

 こうした物語の構築の一方で、実際には映画で描かれていない設定も多い。「(映画の中で出てくる重要な星)ペットスターについては、いろいろと細かな設定があります」と監督は、遥か昔に栄えたペットスターとその記録を書いた文字の関係などについて楽しそうに語ってくれる。そして、こうした設定は子どもたちには分らないかもしれないが、大人になってあらためて見直したら分ってくれるかもしれないと説明する。 
 また、物語の複雑さは敵役となっているキャラクターのあり方にも表れている。最初は悪者にしか見えないキャラクターだが、「ネタばれになってしまうので、あまり詳しくは言えませんが、彼らは信念に基づいて行動している。それぞれ彼らなりのきちんとした信念がある」と、決して単なる敵役キャラクターでないことを強調する。そして、こうした設定の重みがあるからこそ『宇宙ショーへようこそ』は、子どもにも大人にも面白い映画に仕上がったのだろう。 

■ 子どもが全員最後まで映画に没入したベルリン映画祭

 それでも、136分という上映時間の長さは、実際には監督にとっても心配だったようだ。必要な長さではあるが、「(映画を観る)子供たちの集中が続くか心配だった」と本音を漏らす。
 ところがこうした懸念は、今年2月のベルリン国際映画祭で見事に打ち消された。『宇宙ショーへようこそ』は、世界三大映画祭として知られるベルリン国際映画祭に今年2月に公式出品されている。映画が出品されたのはジェネレーション部門、子どもたちのための映画を紹介する部門だ。
 そして観客の大半は子供たちだ。『宇宙ショーへようこそ』のワールドプレミアは、大勢の子供たちが観る作品に相応しいものとなった。このプレミア上映会で、なんと来場者した子どもたちは、全員が最後まで席を立つこともなく映画に見入っていたのだ。

 「最後までみんな見てくれた。いや、一人だけ途中で席を立った子がいてね。そうしたら、しばらくして慌てて戻って来た。トイレに行っていたんじゃないかな(笑)」。
 上映終了後は拍手が鳴り止まないほどの大盛況、「あれはとてもうれしかった」と、子どもたちに認めらたことを監督は喜ぶ。そして映画はやすやすと国境を越えた。

 映画はいよいよ日本の子どもたちにも送り届けられる。アニメファンも待ちにまった作品として姿を見せる。きっとベルリンと同様に、大人から子どもまで多くの人の心を捉える作品になるに違いない。そうした観客の様子を見ながら舛成監督は、「実はまだ語られていない話が・・・」とまた語りだすかもしれない。
画像(c) A-1 Pictures/「宇宙ショーへようこそ」製作委員会

『宇宙ショーへようこそ』
http://www.uchushow.net/
6月26日(土) 新宿バルト9、シネ・リーブル池袋、渋谷シネクイント、立川シネマシティほか 全国ロードショー

監督: 舛成孝二
脚本: 倉田英之
キャラクターデザイン・作画監督: 石浜真史
音楽: 池 頼広
主題歌: スーザン・ボイル「フー・アイ・ワズ・ボーン・トゥー・ビー」(Who I Was Born To Be)
(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル)
制作: A-1 Pictures
製作: 「宇宙ショーへようこそ」製作委員会
配給: アニプレックス

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animeanime12:30 | (0) | (0)
2006.07.25
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 今年の4月からウォルト・ディズニーグループが開始したiTuneを利用した同社グループの映像コンテンツ販売は大きな衝撃だった。
 そうしたビジネスが今後起こることは十分予測出来たが、それが思った以上に早く、それを行ったのが業界では権利ビジネスの強硬派で保守的とされるディズニーであったからだ。

 しかし、ディズニーが著作権について驚くほど革新的な考えを持ってビジネスを進めていることが、7月22日の日本経済新聞のウォルト・ディズニーCEOボブ・アイガー氏へのインタビュー「そこが知りたい ネット時代のコンテンツ市場は?」から伺い知れる。
 アイガー氏はこのインタビューで、インターネットに非常にポジティブに今後積極的に利用する姿勢はっきりと示しているからだ。
 さらにアイガー氏の考え方は、国内外で違法なファイル交換やダウンロードが蔓延する日本のアニメ作品の今後のありかたにも大きな示唆を与える。

 例えば、アイガー氏はネット上のファイル交換についてこう述べている。
「消費者は明らかに音楽のネット配信を望んでいた。だが音楽業界はそれを無視して既存の流通を維持しようとしたためネットでの違法交換が流行した。」(7月22日日本経済新聞朝刊より引用)

 そして、iTuneの登場とビジネスの成功を必然と指摘する。違法な音楽ダウンロードは今でもあるが、多くの消費者はインターネット上の音楽は購買するものとして普通にiTuneを受け入れている。そこでは企業と消費者双方の利益が実現している。
 違法だった市場に有料で正規に進出することは、国内外の違法なアニメ作品のファイル交換行われている現状の問題解決に応用できるかもしれない。

 また、現在主流の動画の配信でなくダウンロード販売に移行することについても、アイガー氏の考え方は他の大手メディアよりもはるかに革新的である。
「とはいえ現在主流のコピー禁止のパソコン向け配信では消費者は満足しない。そのうち映画もダウンロードしてDVDなどにコピーして好きな場所で好きな装置で楽しむものになる。」
「だがネットで失うものより得るもののほうが大きい。~(中略)~より多くの人がコンテンツを消費するようになる可能性がある。」(同引用)

 現在の日本のアニメ作品のネットでの展開は有料、無料を問わず、まさにコピー禁止のパソコン向け配信である。多くの企業は、ダウンロード販売を視野に入れていない。しかし、今回の発言から海外ではかなり早い段階でダウンロード販売・売り切り型のビジネスが一般化する可能性が高い。
 日本企業も、消費者のニーズの重みをもう一度考える局面に近い将来直面するかもしれない。

 また、インタビューはインターネットが中心となっているが、キャラクターの利用についても興味深い発言をしている。
「誰もがコンテンツを楽しみ自由に創造活動が出来るように、コピーや(パロディなどの)二次利用に対する制限を今より柔軟にすべきだろう。」(同引用)

 キャラクターの2次利用に極めて厳しいとされる同社が、パロディなどの2次創作への規制は今より緩くしてもよいと考えていることは驚きである。
 
 現在のディズニーの革新性は、テクノロジーとコンテンツの両方を持っていながら、最後まで音楽のネット配信を拒み、インターネット上の巨大な音楽マーケットを失ったソニーと対照的である。たとえどんな大企業であっても時代の流れを変えることは不可能である。
 そうであればリスクがあり既存ビジネスの一部が失われると分かっていても、時代の流れを積極的に利用しなければいけない場合もある。現在のディズニーにはそうした確かな意志があるようだ。

ウォルト・ディズニー公式サイト  

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2005.07.29
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 サバンという会社がアメリカにある。米国の日本コンテンツ事情に詳しい人なら、この会社が日本の『戦隊シリーズ』に大胆な編集を行い『パワーレンジャー』というタイトルにより米国で放映し大ヒットさせた会社として知っているだろう。
 この『パワーレンジャー』の大ヒットが、米国企業に日本コンテンツへの関心を呼び起こさせ、その後の『ポケモン』や『ドラゴンボール』などのブームにつながったとの見る人は多い。つまり、サバンとその創設者ハイム・サバンは米国における日本アニメの歴史の中で欠くことの出来ない存在なのである。

 このハイム・サバンの名前が『フランスにおける日本アニメを中心にするコンテンツの浸透状況』で、別のかたちで触れられていて驚いた。このレポートによると、ハイム・サバンは1979年にフランスで大ヒットした日本アニメ作品『UFOロボグレンダイザー』のフランス版主題歌の作曲者(!)で、フランス国内で100万枚を越える売上げを記録したというのだ。米国の『パワーレンジャー』で名をあげたサバンの源流は、70年代のフランスにおける日本アニメの音楽ビジネスにあったわけである。

 あまりにも変わった経歴に興味を持ってハイム・サバンをさらに調べたのだが、そのユニークさにさらに驚かされる。サバンの出自はエジプト生まれのユダヤ人でイスラエルに移住後、さらにフランスに移住、その後米国籍を取得したイスラエルとの二重国籍所有者である。
 そして、メディアで語られるサバンは、“戦隊シリーズで莫大な財産を築いた”、“米国民主党の個人最大の献金者”、“米国メディア界の一のシオニズム(ユダヤ人の祖国復帰運動)の指導者”、“ドイツのメディア王”、“キング・キャッシュ”、“メディア界のミダス王”、“大の日本ひいき”、“戦隊シリーズの交渉時に、いきなりジェットマンの主題歌を歌いだした”などなど非常に多岐に亘る。

 サバンの個人史を追うと、彼のキャリアはイスラエル軍に勤務で始まる。イスラエルで旅行会社を設立したのが自分のビジネスの始まりで、1975年にフランスに移住し音楽ビジネスを手掛け、アニメ音楽の大成功で巨大レコード会社を作りあげた。その後、番組企画などにも進出し、1982年にはフランスで企画された日仏合作アニメ『ルパン8世』のフランス側の製作者でもあった。(企画は途中で頓挫した)
 米国に進出したのは1983年で、1993年には東映から権利を獲得した『戦隊シリーズ』を『パワーレンジャー』として仕立て直し、地上波放送局FOXで放映させ大ヒットさせた。これにより巨万の富を築いたのは有名な話である。
 1995年、サバンの会社はケーブルTVのFOX-Kidsと合併、1997年にはメディア王ルパート・マードックと伴にさらにFOXファミリーを買収した。2001年にこの会社をディズニーに転売することでさらに財産を増やした。(このためパワーレンジャーの米国の権利はディズニーの支配下にある。)
 そして、2003年に米国企業としては初のヨーロッパの大手放送局の買収であるプロジーベンSAT1の買収に成功し、現在はこの会社のオーナーである。ちなみに、この時のサバンのアドバイザーを務めたのは、フジテレビvsライブドア騒動でも登場した、米国の投資会社リーマン・ブラザーズだった。

 こうした波乱に満ちたサバンのビジネス遍歴だが、ビジネスを離れてもサバンがかなりな日本ひいきのオタクであることは確かなようだ。それよりも何よりも、アジア以外では日本アニメの2大国というべき米国とフランス両国の日本アニメコンテンツ普及の立役者ということになる。
 ドイツの主要放送局のオーナーにサバンが納まった今となっては、彼の日本アニメでの成功は急速に過去のものになっている。しかし、かつて日本アニメと特撮を基に巨大なメディア帝国を築き上げた人間がいたことは、これからも語り継がれていくだろう。

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