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斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」
第12回 映画館の側から見た、アニメ映画戦略(3)
-東京テアトル・太田取締役&沢村番組編成担当に聞く-
斉藤守彦
【ネット主体の宣伝でヒットした「センコロール」】
−情報の出し方も、細心の注意を払わないと。
太田
たぶん。
−「センコロール」なんて本当にそうで、今、情報を出し過ぎないってことが、大切になってきていますね。
太田
それでさっき言ったコミュニティを上手に使っている。アニプレックスさんなんて、そういうコミュニティに対する情報を、実にうまく発信している。ファンは必ずコミュニティを形成しますからね。僕はそれが何かはよく分からないけど。
我々からすると「センコロール」っていったい何?ってことだったんだけど、それが初日から長蛇の列でいっぱいになる。たぶんそのコミュニティのところに、すぱーんと行ってることを彼らはやってるんでしょうね。
沢村
「センコロール」が受けてる要因というのは、もろん画の魅力もありますが、もうひとつは音楽なんですね。これはsupercellのryoさんが手がけていて、この人は「初音ミク」のソフトで話題になった人で、ネットの中ではアクセス数が高い。その人の曲に、PVのようについてるのがアニメだった。なので、普通のアニメよりは、音楽よりのところから来ている人が多い。
いつもより客層がファッショナブルだったり女の子が多かったり。初音ミクの客層に近い。いつものお客さんより、音楽のほうから来ている。その深いところをアニプレックスさんがうまくコラボした。それとネット型の宣伝展開なので、普通の宣伝をしてないんですよ。
−そうですね。僕も知らなかった。
太田
そういうコミュニティをくすぐる情報戦略が非常に必要になってきますね。情報を出し過ぎない。かといってくすぐる情報を出さないと、見向きもされない。
【「空の境界」大成功の秘訣は、まだ分析に時間が必要。】
「空の境界」「センコロール」に続いて、この秋から上映する「東のエデン」総集編+劇場版2作。東京テアトルという会社は、これからアニメ映画とその作り手たちに、どのような姿勢で関わろうしているのだろうか。
−今後アニメ番組を編成して行く中で、アニメって制作スタジオのカラーが強く出ますよね。配給会社や宣伝会社以上に出る。そのへんの見極めってどうなんですか?
沢村
うーん…もう作品本位だと思います。どこのスタジオだから絶対に入るということはありませんし。「ストレンヂア」はああでしたけど、同じボンズの「エウレカセブン」は入っている。全然どこだから安心ってのは、実写もそうですが、ないです。
−さっきのアニプレックスさんのように「こうやったらファンが動くんだよ」というノウハウを掴んでいるほうが安心できるでしょ?
沢村
それは100%活用させていただきます。ただ、僕らもお客さんのレベルで楽しむのが、「空の境界」を2年間漕いできた秘訣だと思います。そこを持ち続けないと、色んなことを打ち出すのが怖くなっちゃうんですよ。どんどんそういうお客さんと一緒に盛り上がっていきたいなと思っています。
−会社としては、「空の境界」の成功って、何が一番良かったんだと思いますか?
太田
うーん…もうちょっと時間が欲しい(笑)。というのは、私が映像を担当するようになってからヒットした初めてのアニメなんですよ。これと「エウレカセブン」、これから「東のエデン」があって、そこで自分なりに初めて見えてくるのかな、という気がします。
正直、今「空の境界」で何が良かったか、軽はずみに言ったら違ってたということにもなりかねないし(笑)。もう1本何かないと。「東のエデン」は違うんだよね、なにか。これはどちらかというと、一般的な、極端なことを言うと「サマーウォーズ」寄り。そうでしょ?
沢村
まあいってみれば、思いっきりテレビと絡んでいます。
太田
「空の境界」は全七章終えてみて、どうなんだろう?沢村も劇場のほうも、これだけの成果を残した。次なるポテンシャルがあるものを探してくる力が出来つつあるのかな?ってのは感じます。会社としてどうかは分かりませんが、さっき言った3Cということは検証出来たかな。それがダイヤの戦略に繋がっていくのはあると思います。
沢村にも言ってるんですが、これからダイヤと新宿を接点にしてやっていく時、場合によっては出資ということも考えなさいと。チャンスがあったら、500万円でも1000万円でもいいから。そうすると権利者になった時、マーチャンダイズは何か、配給は何かが、より深く見えてくる。私は市場の細分化の中で、これからアニメは欠かせないものになると思っています。その市場細分化はもう起こっていて、このコアな部分をもう1本見てみたい気がしますね。
ここまでオバケみたいに当たることは、そうないと思いますが、何かクールアニメの中で、一発当たる作品が出てくれば、さっきの3Cの中で、どういう戦略を我々が組み立てるられるかというのが出てくるでしょうね。その第一回作品で、なんとなく我々が見えてきたのが、「空の境界」なのかな?という感じです。
【「人狼」での出会いが、「東のエデン」に結実した。】
−沢村さんはかなり早い段階から、「東のエデン」をマークしていましたよね。でもまだ、海のものとも山のものとも分からない。会社として彼の戦略を受け入れたというのは、いかなる勝算があってのことですか?
太田
ぶっちゃけた話ですね、これから市場が細分化して我々が参入していくって時、まだどちらかといえば、テスト・マーケティング的な意味が、私の中では強いんですよ。出資も検討しなさい、配給もとれるんだったら取りなさいと言うのも、まだテスト・マーケティングなんですよ。我々の得意なジャンルをどこかに作っていく。
そういう意味では、彼がやりたいというものは、なるべくやらせてるんです。というか、こいつが(笑)「これ、ポテンシャルありますよ」って言ったら(冷たく)「ああそう。じゃあやれば?」って(笑)。その中で見えて来るものがあるんですよ。
−やらないと分からないですもんね。
太田
それで今回ダイヤを2スクリーンに出来た。池袋と新宿で、我々が展開する土壌がちょっと整った。あと2年から3年の中で、我々のテスト・マーケティングを通じて、どこまで本格的ビジネスモデルが形成できるか。これは戦略論ですね。まだちょっと分からないです。
沢村
実際コアなものになればなるほど、同じものがないという(笑)。確かに「空の境界」はビジネス的に成功しましたが、このパターンで、他に何か乗るのある?と言われると、思い当たらないんですよ。そうなるとまた、作品に沿った展開を次にやることになるので、いつもテストしてるようなことになるんですよ(笑)。
「空の境界」をやって「東のエデン」をやって、それぞれ興行のテーマも、やり方もまったく違う。コアなものをやっていくやり方だと、毎回がそんな感じになっていくのかな、という気もしています。
パターン化すれば良いんですが、なかなかコアな心も移り気ですし。見えないところに金脈があることも(笑)。それを探していかないといけない。
−結果的に「サマーウォーズ」は、ワーナーが配給しましたが、「うちが持っていれば」と考えましたか?
沢村
(小声で)めちゃめちゃ考えました。
−悔しがってましたもんね(笑)。
沢村
でも、実写映画でもそうなんですが、やっていくと繋がってくることがあるんです、この業界。「東のエデン」を早い段階でお話出来たのも「人狼」をテアトル新宿で上映していたからなんです。「人狼」で神山健治さんが演出をやっていた。で、神山さんと知り合って、その才能には注目していました。だからこれをやるって時は、即決しました。
−やっぱり「人」なんですね。人間関係。
沢村
何を見ているかといえば、もう作家ですね。
−そのあたりは、実写映画の単館と変わらない。
沢村
そういう意味では「時をかける少女」の細田監督の時も、そうでした。
【「また違う、深いタイプの作品を見つけてきてあります」】
−では、今後のラインアップを。
沢村
テアトル新宿と池袋テアトルダイヤですが、9月26日から「東のエデン・総集編」。その後11月28日から「劇場版東のエデンI」で、1月9日から「劇場版東のエデンII」。
その間に、12月19日から3週間、押井守監督の実写映画「アサルトガールズ」が入ります。その後も、色々と仕掛けております。また違うタイプの、深いヤツを見つけてあります(笑)。
−色んなヤツを見つけてきますよねえ(笑)。
太田
こればっか、やらせてますから(笑)。
沢村
アニメ作品を、池袋単体でも上映出来るようにしたいと考えてます。
−渋谷でアニメってことは、あまりないんですか?
沢村
やっぱりヱヴァは特例ですから。
−編成の方針としても、作家主義というものにこだわりますか?
太田
そうですね。そこが原点だと思うんですよ。テアトルが単館に行くと決めた時点で、それが原点。映画ファンをちゃんと維持して、ファン層を次の世代に引き継いで行きたいですね。
(1) アニメ・ファンの「3C」攻略が、コンセプト。
(2) アニメ・ファンと鉄道マニアの生態は、共通している?
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