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斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」
第15回 2009年特殊映像総決算!! -2-
斉藤 守彦
【「空の境界」と「マクロスF」「エウレカセブン」「東のエデン」の成功要因】
アンダー200どころか、さらに小規模なマーケット展開を行ったアニメ映画のうち、その小規模さ故に観客の飢餓感を煽り、確実な成績を上げた作品もあった。
アニプレックスの「空の境界」は、いよいよ完結となった第7章「殺人考察(後)」が8月に公開。これまで通り1日1〜2回の上映ながら、熱心な観客を集めて高稼働。劇場版「空の境界」全7章とREMIX、旧作上映をあわせた累計成績は、11月10日現在26万1145名、興収3億219万6200円となっている。ある種のイベント展開的な上映を行った例としては、前例のない成績であり、この作品の成功に刺激された制作会社やスタジオが、高額な“ナミ代”を支払うことよりも、映画館での興行を選択する例が相次ぎ、こうした小規模展開のアニメ映画のラッシュ現象を招いている。
こうした現象を招く背景としてあげられるのは、映画公開の際に必要となるP&Aなる費用の問題だ。P&Aとは「プリント・アンド・アドバタイジング」=つまり上映用プリントと宣伝費のことを意味する。このP&Aが、大手配給会社に配給を委託した場合、製作委員会負担となるケースが多いのだ。現在のところ配給会社が仮払いして、精算時にトップ・オフしているのは東宝だけで、他社はこのP&Aを委員会に負担させ、その範囲内で営業・宣伝活動を行うというやり方をとっている。このため製作サイドとしては、作品の製作費以外に大きな出費を強いられることになり、全国公開を行おうとすれば、このP&Aの額が著しく膨張してしまうのだ。
上映用プリントの作成には、2時間の映画で1本あたり約30万円かかると言われており、宣伝費もTVスポットなどを打とうとすれば、やはり大きな出費となる。つまり製作サイドとしては、作品を大きなマーケットで公開しようにも、それに伴うリスクが大きすぎる。また全国各地にシネコンが出来たことで、大手配給会社に配給を頼まなくても、ブッキングが可能になったことも、理由としてあげられるだろう。
クロックワークスが配給した「マクロスF(フロンティア) 虚空歌姫 〜イツワリノウタヒメ〜」は、30プリント体制で11月21日より公開を開始。本稿執筆時点で「動員25万人を突破」し、現在でも続映されていることから、かなりの高稼働になりそうだ。
同様に東京テアトルがゴールデン・ウィークに公開した「交響詩篇エウレカセブン/ポケットが虹でいっぱい」も、プリント6本がフル回転。26ブックで興収約1億円をものにした。同じくG.W.に公開された「劇場版 天元突破グレンラカン 螺巌篇」も「興収1.5億円を上げた前作『紅蓮篇』以上の成績」という。また10月に入って角川映画が配給した「テイルズ・オブ・ヴェスペリア〜The First Strike〜」は、当初プリント数34本だったが、これを37本に増やし、述べ74ブックで12月16日現在、興収1億8253万6600円を計上。2億円突破は確実だろう。11月28日より公開された「東のエデン劇場版I The King of Eden」も、プリント6本でスタート。今後もブッキングの伸びが期待でき、興収1億円を上回ることは間違いない。
【「20世紀少年」74.1億円、「仮面ライダーディケイド」26.8億円…日本・特撮映画】
特撮映画、あるいは“特撮シーンが重要な意味を持つ映画”の、2009年における実績は、以下の通り。
1=「20世紀少年最終章・ぼくらの旗」(東宝/8月)44億円
2=「ヤッターマン」(松竹=日活/3月)31.3億円
3=「20世紀少年第二章・最後の希望」(東宝/1月)30.1億円
4=「K-20/怪人二十面相・伝」(東宝/正月)20億円
5=「感染列島」(東宝/1月)19.1億円
6=「劇場版仮面ライダーディケイド/オールライダー対大ショッカー」「炎神戦隊シンケンジャー銀幕版/天下分け目の戦」(東映/8月)19億円
7=「BALLAD 名もなき恋のうた」(東宝/9月)18.1億円
8=「252/生存者あり」(ワーナー/正月)16.7億円
9=「GOEMON」(松竹=ワーナー/5月)14.2億円
なお興収10億円以下の作品は、「劇場版 超・仮面ライダー電王&ディケイド/鬼ヶ島の戦艦」が7.8億円、『新春スーパー戦隊祭』「炎神戦隊ゴーオンジャーVSゲキレンジャー」3.1億円、「トミカヒーロー・レスキューフォース」2.2億円といったところ。
驚くべきことに、上位4作品が日本テレビ製作作品だが、これは偶然だろう。昨年から続いた「20世紀少年」3部作は、「最終章・ぼくらの旗」を持って完結。2009年に公開された「第二章」と「最終章」で、計74.1億円、08年公開の「第一章」を合わせると実に113.3億円という額になる。日本映画の大作には、もはやCG、VFXを駆使したスケールの大きいビジュアルメイクは欠かせないが、「20世紀少年」3部作の場合、それらを「特殊技術」と呼びたくなるのは、その時代背景と設定故だろう。特に「最終章・ぼくらの旗」における、“特撮映像”の数々は、出演した佐野史郎をして「これは、東宝特撮映画へのオマージュだ!!」と言わしめたほど。そういえば堤幸彦監督、「『海底軍艦』のリメイクをやらせてくれるのならば、いつでもスケジュールを空けます!!」と、以前インタヴューで言っていた。祈願実現。
「ヤッターマン・ショック」という言葉が、業界内部でまことしやかに囁かれた・・・かどうかは知らないが、やはりこのヒットには驚いた。「ヤッターマン」。深キョンにドロンジョを演じさせるという飛び道具が、お父さんたちの鑑賞意欲をどこまでそそったかは分からないが、この種の映画の話題の盛り上げ方として、ひとつの成功例を示したことは間違いない。特撮映画に怪獣とミニチュア、エッチなおねいさんは必須なのである。
第一章よりかなり出来が落ちる「20世紀少年第二章・最後の希望」とは対照的に、見てみたら「意外に面白いじゃん!!」と、試写を見て誉める人が続出した「K−20/怪人二十面相・伝」。後者の発見は、間違いなく高島礼子が、これほど可愛らしい演技をするか!?ということにつきる。今度は佐渡先生に代わって、ヤマトで女医を演じるそうだ。さず可愛らしい、それでいてドスの効いた女医姿を見せてくれることだろう。
「アニメ!アニメ!」がすっぱ抜いた(笑)、岡田裕介東映社長の「東映が困ると、ライダー、プリキュア、戦隊はいつでも助けに来てくれます」発言。それを実証するかのように、2009年は5月に「劇場版 超・仮面ライダー電王&ディケイド/鬼ヶ島の戦艦」が、8月に「劇場版仮面ライダーディケイド/オールライダー対大ショッカー」、そして12月に「仮面ライダー×仮面ライダーW&ディケイド/MOVIE大戦2010」の、計3作品が製作・公開された。ファンにとっては夢のような、現場にとっては悪夢のごとき年であった。特に「仮面ライダーディケイド/オールライダー対大ショッカー」は、夏休みに東映邦画系にて全国一斉公開され、興収19億円と、劇場版「仮面ライダー」シリーズの最高記録を樹立した。これまた「ヤッターマン」同様、昭和ライダー勢揃いの大サービスに、かつてのファンは感激の涙。歴代ライダーが横一列に並んだポスターの前、熱い目つきで立ち止まったままのスーツ姿の人。映画館付近で、よく目撃した。5月と8月のライダーで、計26.8億円の稼ぎ。そして12月12日からスタートした「−MOVIE大戦2010」が、「ONEPIECE」の影に隠れた格好となってしまったが、これまた好調なスタートを切っている。オープニング2日間の成績は、292スクリーン計39万5984名、興収4億5261万2800円と、「−オールライダー対大ショッカー」の出足対比94.6%であることから、かなりの稼働が見込まれることだろう。「うちの孝行息子ですから…」とは、某東映関係者の弁。どうやら2010年も、孝行息子の出動は少なくなさそうだ。
(1)特筆すべき「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」の大ヒット!!
(3)アメリカ映画離れの中で、「ハリポタ」80億円と健闘
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