検索

clear.gif



120_600_2.jpg
カレンダー
バックナンバー

2010年01月02日
0藤津亮太のテレビとアニメの時代 ]
clear.gif

第12回 前回の訂正と、ハイターゲットアニメの増加

藤津亮太

 今回は、まずは前回(第11回)について訂正と補足をするところから始めたい。
 まず一つは『ドラえもん』ブームについて。

「『ドラえもん』自体はアニメブームからは遠い作品だが、アニメブームの熱気とは別のところに「もう一つのブーム」があったことは、'90年代半ばにあった第2次アニメブームにはないことで、第1次アニメブームの豊かさの一つの所作といえる。」

 前回以上のように記したが、ライターの小川びい氏より、'90年代のブーム期にあっても『クレヨンしんちゃん』『ポケットモンスター』などの子供向けアニメの大ヒットがあったのではないか、という指摘を受けた。
 確かに
「'90年代半ばにあった第2次アニメブームにはないことで、第1次アニメブームの豊かさの一つの所作といえる。」
 の部分は勇み足の判定だったので、「第2次ブームにはないこと」という記述を取り消したいと思う。「子供向けアニメ」とアニメブームの関係については、やがて来るであろう'90年代編で、改めてちゃんと検討したいと思う。

 また松本アニメの隆盛の部分については、少し言葉が足りなかったので、あらためて補足しつつ概略を記しておく。
 '79年からアニメブームの終焉まで、ファンにとってアニメの“最前線”だったのは『機動戦士ガンダム』とそれを引き継いだポスト『ガンダム』的作品であったのは間違いない。
 だが一方で'79年に公開された映画『銀河鉄道999』もまた、明確にハイターゲットを見据えた劇場作品として登場しており、ヒットを記録した。つまり「ハイターゲット作品」の浮上には、『ヤマト』→『ガンダム』だけではなく、『ヤマト』→『999』という回路もまた同時に存在していたのだ。
 TVアニメとして放送された松本アニメは、劇場版『999』ほどハイターゲットではなかったが(むしろ、そこまでソリッドになりきらないところに、松本アニメの魅力の一端があった)、「アニメブームのにぎわい」という点では、『ガンダム』とポスト『ガンダム』と同じかそれ以上に、松本アニメの本数の多さが大きな役割を果たしていた。

 以上、当連載では、アニメブームを判定する一つの基準としてTVアニメの量的増大という視点を採用しているので、その量的な内実が『ヤマト』→『ガンダム』という単線によってのみもたらされたものではない、というところを強調したかったのが第11回の狙いであった。

 長くなってしまったがここから今回の本題に入る。
 今回はまず '80年代に入って、どのようにハイターゲット作品が増えていったかを確認したい。
 ここで問題になるのは「ハイターゲット作品」の定義だ。これには企画段階から明確に中高生をターゲットにしている作品もあれば、企画そのものはそうではなくても、作品のストーリーやキャラクターの見せ方でそうなっているものもある。
 どちらにしろ一つ大きなポイントは、「10代のファンの視線が作品の中に内在しているかどうか」ということはいえるだろう。
 ここを手がかりに、この時期に人気を集めたラブコメ漫画を原作とした作品を含めて、'79年から'84年までのTVアニメを並べ、「ハイターゲット」といえそうな要素のある作品に印をつけてみた。

'79年
野バラのジュリー/赤毛のアン/ゼンダマン/赤い鳥のこころ/花の子ルンルン/サイボーグ009/ドラえもん/未来ロボダルタニアス/くじらのホセフィーナ/ザ・ウルトラマン/●機動戦士ガンダム/りすのバナー/●マルコ・ポーロの冒険/新巨人の星II/巴里のイザベル/SF西遊記スタージンガーII/金髪のジェニー/円卓の騎士燃えろアーサー/こぐまのミーシャ/科学忍者隊ガッチャマンF/●闘士ゴーディアン/まんが猿飛佐助/●ベルサイユのばら/●宇宙空母ブルーノア
※5本

'80年
トム・ソーヤーの冒険/ベルフィーとリルビット/ニルスの不思議な旅/メーテルリンクの青い鳥/無敵ロボトライダーG7/オタスケマン/ふたごのモンチッチ/魔法少女ララベル/宇宙大帝ゴッドシグマ/●ムーの白鯨/スーキャット/燃えろアーサー白馬の王子/釣りキチ三平/がんばれゴンベ/ずっこけナイトドンデラマンチャ/●伝説巨神イデオン/●宇宙戦士バルディオス/がんばれ元気/怪物くん/とんでも戦士ムテキング/おじゃまんが山田くん/鉄腕アトム/鉄人28号/ほえろブンブン/●宇宙戦艦ヤマトIII/●あしたのジョー2
※5本

'81年
ふしぎの島のフローネ/最強ロボダイオージャ/ヤットデタマン/ゴールドライタン/百獣王ゴライオン/ハローサンディベル/おはよう!スパンク/愛の学校クオレ物語/めちゃっこドタコン/若草の四姉妹/名犬ジョリィ/Dr.スランプアラレちゃん/フーセンのドラ太郎/新竹取物語1000年女王/タイガーマスク二世/●戦国魔神ゴーショーグン/まんが水戸黄門/新ど根性ガエル/忍者ハットリくん/●六神合体ゴッドマーズ/じゃりン子チエ/ダッシュ勝平/●銀河旋風ブライガー/ワンワン三銃士/●うる星やつら/まいっちんぐマチコ先生/ハニーハニーのすてきな冒険/●太陽の牙ダグラム/
※5本

'82年
南の虹のルーシー/あさりちゃん/●戦闘メカザブングル/●逆転イッパツマン/機甲艦隊ダイラガーXV/●魔法のプリンセスミンキーモモ/トンデラハウスの大冒険/ゲームセンターあらし/ドン・ドラキュラ/●パタリロ!/科学救助隊テクノボイジャー/アニメ野生のさけび/●魔境伝説アクロバンチ/おちゃめ神物語コロコロポロン/とんでモン・ペ/太陽の子エステバン/●Theかぼちゃワイン/●銀河烈風バクシンガー/●超時空要塞マクロス/忍者マン一平/ときめきトゥナイト/●スペースコブラ/サイボットロボッチ/レインボーマン/新みつばちマーヤ/わが青春のアルカディア無限軌道SSX/一ツ星家のウルトラ婆さん/●さすがの猿飛/フクちゃん
※10本

'83年
●未来警察ウラシマン/わたしのアンネット/キャプテン/●亜空大作戦スラングル/●聖戦士ダンバイン/●愛してナイト/光速電神アルベガス/●みゆき/●装甲騎兵ボトムズ/●ななこSOS/キン肉マン/まんが日本史/ミームいろいろ夢の旅/スプーンおばさん/パソコントラベル探偵団/パーマン/●銀河疾風サスライガー/イーグルサム/レディジョージーィ/イタダキマン/●ストップ!!ひばりくん!/ベムベムハンターこてんぐテン丸/●プラレス三四郎/ピュア島の仲間たち/●魔法の天使クリィミーマミ/●超時空世紀オーガス/サイコアーマーゴーバリアン/●キャッツアイ/●機甲創世記モスピーダ/タオタオ絵本館/●特捜機兵ドルバック/まんがイソップ物語/ふしぎの国のアリス/キャプテン翼/●伊賀野カバ丸/●銀河漂流バイファム/子鹿物語
※17本

'84年
●OKAWARIBOYスターザンS/牧場の少女カトリ/●超攻速ガルビオン/●重戦機エルガイム/リトル・エル・シドの冒険/宗谷物語/●夢戦士ウイングマン/●ルパン三世PARTIII/とんがり帽子のメモル/ビデオ戦士レザリオン/Gu-Guガンモ/オヨネコぶーにゃん/●巨神ゴーグ/まんがどうして物語/チックンタックン/らんぽう/アタッカーYOU!/●ゴッドマジンガー/●超時空騎団サザンクロス/●魔法の妖精ペルシャ/ふしぎなコアラブリンキー/銀河パトロールPJ/●よろしくメカドック/●ふたり鷹/コアラボーイコッキィ/●機甲界ガリアン/森のトントたち/●超力ロボガラット/●あした天気になあれ/●レンズマン/星銃士ビスマルク/●キャッツ・アイ/タオタオ絵本館/●北斗の拳/名探偵ホームズ
※17本

 個々の作品の判定については、異論があるかもしれないが、大きなトレンドとして'82年を境に、「ハイターゲット作品」が急激に増加していることがわかる。
 まずこの急激な変化のベースとして考えられるのが、『ガンダム』ブームの過熱である。『ガンダム』の放送開始は'79年だが、そのブームが社会現象にまで広がるのは劇場公開が始まる'81年になってからのこと。'80年より発売された『ガンダム』のプラモデルもこの年にブームの頂点を迎える。
 『ガンダム』に熱狂するファン層が相当数のボリュームがあることが明確になったことが、翌年以降の企画に本格的に反映されていったと見ることができる。たとえばこれ以降のハイターゲット作品の商品展開に、(今思えばプラモデルに向いているとは思いづらい作品も)プラモデルが必ず盛り込まれていることからもうかがえる。
 また『ガンダム』以降に、アニメブームを牽引する作品が続けて登場したことも大きい。
 '81年に『うる星やつら』が始まり、翌年'82年には『マクロス』がヒット。どちらもファンと感性の近い若いスタッフの存在がヒットに結びついた作品だ。
 この2作の存在がさらに'82~'84年のハイターゲット作品の増加に拍車をかけた。
 一方、アニメ外部に目を向けると、漫画雑誌におけるラブコメブームの存在が無視できない。視聴ターゲットを上げてきたアニメの視聴者と、ちょうどラブコメ漫画の読者が重なり合うようになり、アニメが映像化の受け皿として機能するようになった。それもまたハイターゲット作品の増加の一因といえる。
 こうしてハイターゲット作品の隆盛を見ると「アニメブームのピーク」と呼びうるのは'83年か'84年のどちらかが妥当であろうということがいえる。
 では、これら「ハイターゲット作品」がTV局の編成の中でどう扱われていたかについて次回見てみたい。

[筆者の紹介]
藤津亮太
 (ふじつ・りょうた)
1968年生まれ。アニメ評論家。編集者などを経て、2000年よりフリーに。著書に『「アニメ評論家」宣言』(扶桑社)。編著に『ガンダムの現場から』(キネマ旬報社)など。アニメ雑誌、そのほか各種媒体で執筆中。
ブログ:藤津亮太の 「只今徐行運転中」 http://blog.livedoor.jp/personap21/

clear.gif
posted by animeanime at 12:00
0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ 2009年特殊映像総決算!! ]
clear.gif

斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」
第15回 2009年特殊映像総決算!! -1-

斉藤 守彦

【特筆すべき「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」の大ヒット!!…日本アニメ映画】

 1=「劇場版ポケットモンスター ダイヤモンド・パール/アルセウス 超克の時空へ」(配給:東宝/7月公開)=46.7億円
 2=「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」(カラー=クロックワークス/6月)=40億円
 3=「名探偵コナン/漆黒の追跡者(チェイサー)」(東宝/4月)=35億円
 4=「ドラえもん/新・のび太の宇宙開拓史」(東宝/3月)=24.5億円
 5=「サマーウォーズ」(ワーナー/8月)=16.3億円
 6=「劇場版MAJOR/友情の一球」(東宝/正月)=10.5億円
 7=「劇場版 NARUTO-ナルト- 疾風伝/火の意志を継ぐ者」(東宝/8月)=10.2億円
 8=「映画プリキュアオールスターズDX/みんなともだちっ☆奇跡の全員大集合!」(東映/3月)=10.1億円
 9=「映画クレヨンしんちゃん/オタケベ!カスカベ野生王国」(東宝/4月)=10億円

 2009年に劇場公開された日本製アニメ映画のうち、興行収入10億円を超えたのは、以上の9作品。2008年の「崖の上のポニョ」(興収155億円)に匹敵するビッグヒットこそなかったものの、昨年6本だった10億円以上の作品が、今年は3本増えたのは躍進と言えるだろう。
 9作品のうち大半は毎年公開されているファミリー・ターゲットの作品だが、2009年はこれらに加えて「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」「サマーウォーズ」といったクールアニメがヒットした。特に「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」は、調査時点で「興行収入40億円を突破した」という(前作「序」のジャスト2倍!!)。また米メジャー系配給会社であるワーナーの手で公開された「サマーウォーズ」の16.3億円は、昨年同じワーナーが配給した日本製アニメ映画「スカイ・クロラ」の7億円を2倍以上上回るもので、原作のない、オリジナルのアニメ映画としては特筆すべき成功と言える。
 また東映が毎年公開してきた「プリキュア」シリーズの新作「映画プリキュアオールスターズDX/みんなともだちっ☆奇跡の全員大集合!」は歴代ヒロイン総登場という話題性もあり、興収10.1億円と、シリーズで初めて大台を突破したことも、大きなトピックであった。

 シリーズ作品の推移を検証していくと、様々なシチュエーションが見えてくる。気になるのは「ポケモン」「ドラえもん」「NARUTO 」「クレヨンしんちゃん」「ケロロ軍曹」「それいけ!アンパンマン」ともに、ヒットはしているものの、総じて前年の実績を1〜2億円下回っていることだ。とりわけ「ドラえもん」は、同時期に公開された「ヤッターマン」の煽りを受けて、前作の33.7億円を大きく下回る24.5億円という興収に終始したが、東宝の春休み番組を30年に渡って支えてきた「ドラえもん」シリーズとしては、これまでも同時期公開の強力作品とのバッティングは何度もあった。そうした戦いに勝ち抜いてきた「ドラえもん」が、8億余円もの減収となったのは、果たして「ヤッターマン」だけが理由なのか。それともさらなるリニューアルの必要があるのか。2010年春のドラえもんは、シリーズ開始30周年記念作品であるという。その真価が問われるところだ。
 逆に10周年を迎えた「名探偵コナン」は、シリーズの根源に関わる部分を映画で描くという話題性で多くの観客を獲得。シリーズ新記録となる、興収35億円をものにした。
 このように、長く続いているシリーズ作品は、ちょっとしたテコ入れやリニューアルが、新しい観客や、かつて観客だった層の鑑賞意欲を再び呼び覚ます効果があり、その訴求点と戦略こそ間違わなければ、さらにロングライフなシリーズとなる可能性を秘めている。
 興収10億円以下の作品は、「仏陀再誕」9.7億円、「映画フレッシュプリキュア!/おもちゃの国は秘密がいっぱい!」8億円、「劇場版デュエルマスターズ/黒月の神帝」他約6.6億円、「ケロロ軍曹/撃侵ドラゴンウォリアーズであります!」4.6億円、「ゲゲゲの鬼太郎/日本爆裂!」4.1億円、「ホッタラケの島/遥と魔法の鏡」約3.6億円、「それいけ!アンパンマン/だんだんだんだんとふたごの星」約3.4億円といったところ。

【「アンダー200スクリーン」作品の、高稼働が光る!!】

 トップこそ例年大ヒットを記録する「ポケットモンスター」にとられたものの、2位の「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」の興収40億円は特筆に値する。しかもこの作品、オープニング時のスクリーン数が、わずか120スクリーンだったのである。昨今ではシネコンの増加によってマーケットが拡大。とりわけ米メジャー系配給会社の手がけるハリウッド映画の超大作は、ここぞとばかりに多くのスクリーンを占領。あたかも絨毯爆撃のようにフィルムを全国のシネコンに投下し、シェア獲得と市場の独占を狙っている。ところが「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」は、前作「序」の時と同様、1スクリーン1プリント(1本の上映用プリントを2スクリーンで上映することを禁止)、さらに先行上映の禁止を条件に、6月27日より全国120スクリーンで公開。オープニング2日間で35万4852名、興収5億1218万200円(1スクリーンあたり426万8168円)をあげる大ヒットを記録した。上映するスクリーンの数が少なければ、当然1スクリーンあたりの興収は上昇する。しかも「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」の場合は、ショップでの関連商品売り上げもかなりの額に上ることから、映画館としてはハリウッド映画の大作を拡大上映するより、遥かにうまみがあるというわけだ。
 同様に夏休みに公開された「サマーウォーズ」は細田守監督の新作で、米メジャー系配給会社のワーナーが、ローカル・プロダクション作品として配給した。その題材からして夏休み公開は必須といえる作品だが、事前にこの映画の興行価値を評価することは極めて難しく、しかも周囲は大作、話題作がひしめきあう市場環境。全国128スクリーンというマーケット・サイズは、ワーナーとしては同じ8月1日公開のアメリカ映画「そんな彼なら捨てちゃえば?」を優先させた結果だろうか。ともかくもヤング・ターゲットの作品であるにもかかわらず、都内は渋谷地区の上映館がないというスタートであった。オープニング成績は、128スクリーン計10万9250名、興収1億2753万8200円(1スクリーンあたり興収100万4238円)であったが、作品の内容が評判を呼び、長期に渡る興行を行った結果、興収16.3億円をあげるスマッシュヒットとなった。
 もう1本、興収10億円以上を記録した“アンダー200スクリーン”作品が、「映画プリキュアオールスターズDX/みんなともだちっ☆奇跡の全員大集合!」だ。東映では邦画系以外に、中小規模マーケットで展開する「アルファ・チェーン」を子会社ティ・ジョイとワーナー・マイカルを中心に編成しているが、そのアルファ・チェーンで公開された「プリキュアオールスターズDX」は、156スクリーンでオープニング3日間計22万2662名、興収2億4230万900円(1スクリーンあたり興収155万3211円)をあげた。これは同時期東映邦画系で公開された「釣りキチ三平」のそれを大きく上回る成績であるばかりか、毎年公開されている「プリキュア」シリーズ新記録。初の10億円大台突破作品となった。東映は、今後も「プリキュア」シリーズを3月と10月の、年間2作品のペースで公開し、そのうち3月は「プリキュア・オールスターズ」シリーズであることをアナウンスしている(2010年3月20日より「プリキュアオールスターDX2/希望の光☆レインボージュエルを守れ!」を、アルファ・チェーンにて公開)。

 3つの“アンダー200スクリーン”のヒット作について、さらなる共通項を上げるならば、コンテンツへの忠誠度が高い観客がコアとなっていることだろう。ヱヴァの場合は前作で若返ったファンをさらに拡大することになり、また「サマーウォーズ」はヱヴァと同じ貞本義行がキャラクターデザインを手がけていることから、ある種のイメージ・リンク、相乗効果を果たしたと見て良いだろう。もとより、あの「時をかける少女」の細田守監督の新作とあって、アニメ・ファンの注目度と期待度は当初から高かった。「プリキュア」シリーズも、これまでのTVシリーズと劇場版を積み重ねてきた蓄積あればこそ、大台突破という快挙をなしとげたのである。
 …と、ここまで原稿を書いたら、東映が12月12日からアルファ・チェーンを中心に、全国188スクリーンで公開を開始した「STRONG WORLD/ONE PIECE FILM」が、とんでもないオープニング成績をたたき出した。2日間計81万8738名、興収10億3843万9600円は、あの「崖の上のポニョ」を上回っている。1スクリーンあたりの興収は、実に552万3614円ときた!!
 これについては、機会を改めて検証することにしよう。

(2)「空の境界」と「マクロスF」「エウレカセブン」「東のエデン」の成功要因
(3)アメリカ映画離れの中で、「ハリポタ」80億円と健闘

[筆者の紹介]
斉藤守彦

1961年生れ。静岡県浜松市出身。
映画業界紙記者、編集長の経験の後、映画ジャーナリスト、アナリストとして独立。「INVITATION」誌で「映画経済スタジアム」を連載するほか、多数のメディアで執筆。データを基にした映画業界分析に定評がある。「宇宙船」「スターログ日本版」等の雑誌に寄稿するなど、特撮映画は特に得意な分野としている。

clear.gif
posted by animeanime at 06:00
そのほか ]
clear.gif

 2009年は、相次いで長編劇場映画が公開された。その中でプロダクション I.Gとマッドハウス、国内の長編アニメ制作を代表するアニメスタジオが相次いで3D CGアニメーションの作品を公開した。
 プロダクション I.Gが『ホッタラケの島 遥と魔法の鏡』、マッドハウスが『よなよなペンギン』である。いずれの作品も、3D CGでありながら、いわゆる米国のピクサータイプのアニメーションと一線を画しているのが特徴である。同時に、日本でも本格的な3D CGのアニメーションの制作が可能であることを示した。

 プロダクション I.Gとマッドハウスは、日本の2Dアニメ、手描きアニメのトップクラスの制作を行ってきたアニメスタジオである。国内ではこれまで日本のアニメの特徴は2Dアニメ、2Dアニメを制作することでその個性を維持出来るとの主張も少なくなかった。
 しかし、両スタジオが、今後は2Dと同時に3D CGでも積極的に作品制作をする意志を持っていることが明らかになった。今は日本のアニメ界では小さな一部だが、今後3D CGの活用がさらに進むことを感じさせる2作品の公開であった。

clear.gif
posted by animeanime at 02:30
そのほか ]
clear.gif

 テレビ東京は2009年4月に大手地上波テレビ局としてはじめてアニメ局を設立した。アニメ局は、制作局や編成局、報道局、コンテンツ事業局などと並ぶ経営会議の直轄部署となる。これまで制作や著作権など業務ごとにばらばらに他局にあった業務をひとつにまとめる。
 業務ごとに局部を編成するテレビ局において、報道を除けば、番組のいちジャンルが独立した局となるのは異例と言っていいだろう。

 テレビ東京はもともと、アニメ番組に強みがある放送局として知られてきた。そして、アニメではテレビ放映のスポンサー広告料だけでなく、作品の放映権やキャラクターなどの権利から生まれる利益が他の番組に較べて遥かに大きい。テレビアニメは放送いうよりも、放送と著作権・ライセンスを組み合わせた独自のビジネスとなっている。
 テレビ東京はアニメ局を立ち上げることで、このアニメビジネスをさらに深化、拡大させる。テレビ放映ビジネスの縮小傾向が明白になった2008年以後の現在、アニメの権利ビジネスに力を注ぐ。

clear.gif
posted by animeanime at 02:00
そのほか ]
clear.gif

 2009年8月、スイス・ロカルノで行われるロカルノ国際映画祭で、大規模な日本アニメ特集「MANGA IMPACT」が開催された。上映された作品はおよそ200本、最近の長編アニメ映画だけでなく、テレビアニメや戦前の短編アニメーション映画など、まさに日本のアニメの歴史を振り返るものとなった。
 近年、海外で日本のアニメに対する関心が高まっているが、ロカルノの特集は国外で行われた日本アニメのイベント、紹介では過去最大級のものである。

 ロカルノ国際映画祭は、ヨーロッパで有数の歴史の長さを誇る。カンヌやベルリンに次ぐ影響力のある映画祭とされている。
 また、映画祭開催期間中には、高畑勲監督、富野由悠季監督が名誉金豹賞を受賞したのも大きなトピックスである。日本の「アニメ」が、グローバルな映画の世界に大きな影響を与えるひとつのジャンルであることが認められたと言っていいだろう。

clear.gif
posted by animeanime at 02:00
そのほか ]
clear.gif

 アニメ制作企業は、東京都、それも西部地区に集中する傾向が強い。戦後日本の商業アニメの基礎を築いた虫プロダクション、東映アニメーションといったスタジオが東京都西部にあったこと、アニメの制作にはフィルムや原画・動画、セル画の物理的なやりとりが必要なことから、それぞれの企業が近隣にあることが有利という事情があった。
 しかし、2009年からこうした流れが大きく変わるかも知れない。地方に立地するアニメスタジオが相次いで誕生したからだ。

 2009年4月に日本を代表するアニメスタジオであるスタジオジブリが、愛知県豊田市のトヨタ本社の一角を借り受けて、若手アニメーター育成のための西ジブリを設立した。また、同じ4月には徳島市には『空の境界』で知られるユーフォーテーブルがアニメスタジオ分室を設立している、
 さらに産官学連携として、神戸市、神戸芸術工科大学、JAniCA、Wishが運営するアニメスタジオ アニタス神戸が2010年3月スタート、宮城県白石市でも旭プロダクションによるアニメスタジオの計画が明らかになっている。一気に地方のアニメスタジオが広がる。

 既存の地方アニメスタジオでは、京都アニメーション制作の作品から『けいおん!』の大ヒットが誕生している。『涼宮ハルヒの憂鬱』、『らき☆すた』に続くヒットで、スタジオのブランド力をさらに強化した。
 また、富山県のピーエーワークスは、2008年の『true tears』を最初に、元請制作に乗り出し高い評価を受けている。2009年には初の劇場映画の元請作品となる『レイトン教授と永遠の歌姫』を制作した。

 地方のアニメスタジオの利点は、都心では離職率の高いアニメ制作スタッフをじっくりと育てられることである。こうした実情は、若者の雇用や新規産業の育成に悩む、地方自治体の利益とも一致する。
 2009年に設立、設立計画が明らかになったスタジオは、何かしらのかたちで、人材育成、地域振興と結びついているのもこうしたことが理由である。

clear.gif
posted by animeanime at 01:30
そのほか ]
clear.gif

kaze.JPG 小学館、集英社、小学館集英社プロダクションの3社は、2009年8月にヨーロッパで日本アニメ事業を行う有力企業KAZEグループ(フランスKAZE、ドイツAnimeVirtual)を買収した。3社が出資する北米のアニメ・マンガ事業のVIZ Mediaのヨーロッパ子会社であるVIZ Media EuropeとKAZE、AnimeVirtualを合併し、ヨーロッパでアニメ・マンガ事業を手掛ける直接子会社とすることを明らかにした。
 北米に続きヨーロッパでも、100%子会社による直接ビジネスに乗り出す。DVDなどの映像パッケージ、インターネット配信、マンガ出版などを展開する。これまで小学館、集英社はヨーロッパ地域ではライセンス販売によるビジネスを行ってきたが、直接進出でより高い利益を狙う。

 日本のアニメ、マンガ、ゲームの海外の売上は、海外での人気の高さに較べて少ない傾向がある。これは海外ビジネスの多くは、日本からライセンス獲得した現地企業が大半のビジネスを行っているためである。
 日本企業がより多くの売上、利益を得るには、現地進出が不可欠となる。しかし、現地進出の鍵となる流通は短期間では築けない。2009年は、この問題を現地企業の買収 M&Aで解決する動きがコンテンツ産業で活発化した。

 アニメでは、一ツ橋グループ(小学館、集英社、小学館集英社プロダクション)によるKAZEグループ買収のほかに、2009年1月に東映アニメーションが、香港の合弁子会社の現地企業出資分を全額買い取る動きもあった。
 さらに、ゲーム業界ではバンダイナムコゲームスが、フランスのアタリ・ヨーロッパの流通部門、北米に開発・流通拠点を築いた数少ない日本ゲーム企業ディースリーを相次いで買収した。スクウェア・エニックスによる英国のゲーム会社Eidosの買収も、同社にグローバルな開発拠点、流通を提供することになった。
 2010年以降も、日本のコンテンツ関連企業が、海外進出の際に現地企業の買収を選択肢に入れる可能性は少なくないだろう。

clear.gif
posted by animeanime at 01:00
そのほか ]
clear.gif

 2000年代前半は、アニメ業界は制作の急激な増加で活況を呈していた。しかし、2007年をピークに、アニメ制作、映像パッケージのビジネスは下方トレンド入りしたとされる。
 こうしたアニメ業界の不況の影が明らかになったのが2009年である。その業界の不況を象徴する出来事が、2009年7月のアニメ製作会社ゴンゾ(旧GDH)の上場廃止であろう。

 ゴンゾは、旧ゴンゾとデジメーションの合併により誕生、2004年に東証マザーズ市場に上場した。アニメ作品の権利を自社で保有する、先進的な資金調達の仕組みを利用する、M&Aの積極活用など、これまでのアニメ企業には見られなかった経営手法が注目を浴びた。また、急速な経営拡大が、企業成長を期待させた。
 しかし、2008年に債務超過や急速な経営悪化が表面化した。グループ企業の売却や増資も行ったが、2009年7月30日に上場廃止に追い込まれた。

 ゴンゾの経営悪化は個別企業の問題だけでなく、アニメビジネスの環境悪化の影響も大きかった。新興企業である同社の事業は、マニア向け作品、そしてマニア向け作品の資金回収の中心である映像パッケージビジネスへの依存度が大きかった。また、海外市場の拡大を念頭に、海外展開を視野に入れた作品を多数製作した。
 ところが、急激な映像パッケージビジネスの採算悪化と市場の縮小、そして違法配信による海外のマニア向けビジネスの後退が、そうした分野に力を入れたゴンゾの経営に特に大きな影響を与えた。こうした市場環境の悪化は、他のアニメ関連企業にも同様の影響を与えており、2010年に多くの企業にとっての課題となっている。

clear.gif
posted by animeanime at 01:00
そのほか ]
clear.gif

 テレビアニメ『機動戦士ガンダム』が2009年で放映30周年を迎え、様々な記念企画が行われた。なかでも大きな話題を呼んだのは、東京・お台場の潮風公園に建設された高さ18メートルの1/1ガンダムである。
 このガンダムを見るために、わずか2ヶ月足らずで400万人を超える見物客が公園を訪れた。人気キャラクターの持つ力をあらためて確認させるものである。

 またガンダム30周年の盛り上がりは、近年、アニメ業界で活発化する周年ビジネスの可能性を感じさせるものである。キャラクターブランドの生誕○○周年は、これまでも多かったが、アニメでもキャラクター、作品、そしてビジネスの梃入れに、何周年記念といったストラテージが有効というわけである。
 これまでもキン肉マン生誕29周年、名探偵コナン10周年、アニメ「ONE PIECE」10周年記念など様々なイベントが行われている。
 新キャラクターを産み出すより人気キャラクターの活性化のほうがビジネスリスクは少ない。2010年以降も周年ビジネスは、益々活発化するだろう。

       gundum30.JPG
写真: 多数の人が訪れた潮風公園。立像自体は利益はほとんどないとされるが、30周年へのアピール効果は計り知れない。

clear.gif
posted by animeanime at 00:00
そのほか ]
clear.gif

 平成21年度補正予算に、117億円の資金を投入する国立メディア芸術総合センター建設計画が挙げられたことが、アニメやマンガ、ゲーム業界を超えた一大騒動を巻き起こした。メディア芸術とは、文化庁によるアニメやマンガ、ゲーム、インタラクティブアート、メディアアートを包括する呼称である。
 国立メディア芸術総合センターは、これらの展示や研究、情報発信を目的とした施設として計画された。しかし、実際の運営体制や施設の設備、内容よりも建築プランが先行したこと、建設予定地に東京都が土地を保有する臨海副都心が当初から想定されていたことから業界を超えて反発が広がった。

 「アニメの殿堂」、「国立マンガ喫茶」といった批判にさらされ、さらに衆議院選挙と重なり、選挙の争点のひとつにすらなった。結局、新政権の成立と伴に、計画は白紙撤回されることになる。
 しかし、批判の中にはいわゆる箱物行政批判と同時に、依然根強い「アニメ」、「マンガ」、「ゲーム」は文化として評価に値しないといった論調も見られた。ポップカルチャーに対する理解の広がりに限界があることが露になった。
 一方で、11月には明治大学による東京国立マンガ図書館構想が明らかにされた。施設の目的は、マンガ、アニメ、ゲーム、フィギュアの保存と研究、調査、情報発信とされている。国立メディア芸術総合センターが当初考えていた機能の多くがこの中に含まれる。
 国立メディア芸術総合センターの考えの一部は、かたちを変えて民間の手によって実現する可能性が高くなっている。

clear.gif
posted by animeanime at 00:00
そのほか ]
clear.gif

 2009年は劇場アニメの公開が多かった年である。本数が多いだけでなく、予想を超えるヒットとなる作品が多かったのが特徴だ。その中で特筆すべき存在は、『ヱヴァンゲリオン新劇場版:破』と『サマーウォーズ』の大ヒットである。
 120スクリーンで6月27日に公開をスタートした『エヴァンゲリオン新劇場版:破』の興行収入が、大ヒットと言われた前作『序』のさらに2倍 40億円の興収を達成したことは事件と言っていいだろう。
 また、完全オリジナルの劇場アニメ『サマーウォーズ』が、細田監督の前作『時をかける少女』の興収をこれも5倍以上16億円を超えたこともまた事件だ。スタジオジブリ以外のオリジナルの長編劇場アニメはこれまで興収10億円に壁があり、それを超えるのはかなり難しいとされていた。『サマーウォーズ』は、それをやすやすと超えた。

 両作品のヒットはアニメ映画がマーケティングのやり方次第では大きなムーブメント生み出し、予想外のヒットとなることを明らかにした。年末に公開され社会現象というほどの盛り上がりを見せた『ONE PIECE』の劇場版第10作『ONE PIECE FILM Strong World』も同様だろう。これも興収は前作の3倍以上は堅いところだ。
 こうした動きは、数館から数十館規模の小規模な劇場作品にも多数見られた。『劇場版 マクロスF』、『東のエデン 劇場版』、『交響詩篇エウレカセブン』、『テイルズ・オブ・ヴィスペリア』など、予想を超えるヒット作品が続出している。こうしたトレンドは2010年以降も続くのか?新しいビジネスモデルを模索するアニメ業界にとっても無関心でいられないはずだ。

clear.gif
posted by animeanime at 00:00
そのほか ]
clear.gif

 今年1月、米国・サンフランシスコのベンチャー企業クランチロールは、テレビ東京など日本の権利者の協力を得て『NARUTO』や『銀魂』などの人気テレビアニメの日本国外向けインターネット配信を開始した。配信は日本のテレビ放映からわずか1時間後、日本語の番組に英語字幕をつけたものである。長年、海外のアニメファンから要望の高かった日本と海外のアニメ作品同時展開の実現となった。
 この動きは他社に瞬く間に波及し、『鋼の錬金術師 FULL METAL ALCHEMIST』、アニメ『ONE PIECE』など有力作品が次々に国内外同時展開を開始した。わずか一年で、日本で放映されたかなりの作品が、ほとんど時差を置くことなく海外でも視聴出来るようになった。
 さらにVIZ Mediaが北米で行う『境界のRINNE』の様に、マンガにも波及し始めている。2009年に日本アニメの海外のビジネスは、インターネットを中心に全く異なる様相を見せ始めた。

 しかし、違法配信対策も含まれている海外同時展開は、ビジネス面では依然脆弱である。クランチロールは日本の権利者と話合うことで著作権に対する意識を飛躍的に改善させたが、サイトの有料会員は伸び悩んでいる。今後は、同時展開の利益化が大きな課題となる。
 それは、北米でやはり同時展開を手掛けるVIZ MediaやFUNimationにも共通する問題である。依然、残る違法配信、そして『ONE PIECE』の配信前の番組ネット流出事件に見られる違法配信利用者の合法配信に対する悪意の存在など解決されていない問題は依然多い。

       cr2009AX.JPG
  写真: 2009年米国ロサンゼルスアニメエキスポでのクランチロールの様子

clear.gif
posted by animeanime at 00:00