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2010年03月04日
0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ 特撮本ぶっちゃけレビュー ]
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斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」
第17回 特撮本ぶっちゃけレビュー

斉藤 守彦

●川北特技監督が存分に、そして赤裸々に語った「特撮魂」

 これも洋泉社が発行した書籍「特撮魂/東宝特撮奮戦記」。著者が川北紘一特技監督本人になっていることからも、川北氏の生い立ちから映画界入りまで、そして東宝での特撮修業から監督デヴュー、「さよならジュピター」「ガンヘッド」、ゴジラVSシリーズなどについて語り起こした、まさしくオール・ザット・川北紘一な一冊だ。
 これまで川北特技監督をフィーチャーした書籍には、「ゴジラVSスペースゴジラ」公開にあわせて徳間書店が発行した、冠木新一・著「君もゴジラを創ってみないか(ちょっと気恥ずかしくなるタイトルだ)/川北紘一特撮ワールド」があるが、これは冠木氏による川北特技監督へのインタヴューと「−VSスペースゴジラ」の撮影状況が交互に描かれたもので、純粋な自伝とは言えない。
 今回の「特撮魂」は、内容的にもこの種の芸談語り下ろしものにありがちな「あれもオレがやった」「これもオレが成功させた」といった、“手柄独り占め”(特に映画宣伝マンの本には、この傾向が強い)に陥ることなく、失敗は失敗と認め、なぜそうなったかを現在の視点で冷静に分析しているあたり、潔ささえ感じるほどだ。
 VSシリーズ最終作となった「ゴジラVSデストロイア」について触れた章では、メルトダウンを起こして溶解していくゴジラをどう撮影したかを、詳細に語っている。願わくば、こうした特殊撮影の“特殊”技術を解説した部分が、もっと欲しかった。掲載する写真も連動したものであればベストだ。何よりも川北氏は“特技”監督なのだから、著作においても、まず演出技術面での特徴・成果を前面に出すべきだろう。筆者が初めて特撮映画の撮影現場を取材したのは、2001年の「ゴジラ・モスラ・キングギドラ/大怪獣総攻撃」の時だが、その時既に東宝スタジオ第9ステージいっぱいにジオラマセットを組み、どのカメラポジションからでも撮影が可能な、東宝特撮のお家芸とも言うべき手段が用いられていなかった。川北特技監督の演出を、つぶさに研究・検証した書物を期待したいところだ。
 
●デカい。厚い。高い。「平成ゴジラ・クロニクル」

 その川北紘一特技監督が心血を注いだ、平成ゴジラ・シリーズ=VSシリーズのすべてが網羅されているのが、キネマ旬報社発行の「平成ゴジラ・クロニクル」だ。A4判、厚さ2.1cm(筆者実測)、価格4600円(税抜き)という、まさに大冊。しかも総ページ数272ページの半分以上がカラーページで、VSシリーズ6作品の内容に詳しく触れているばかりか、秘蔵のメイキング写真や資料も満載とくれば、ファンにはたまらない。 
 写真類の充実度は最高と言って良い。またチラシ、プレスシート、割引券などの再録は、当時を知る者の思い出をかきたてるだろう。インタヴューも特撮スタッフのみならず、幅広く関係者を網羅しているが、欲を言えばもう少し突っ込んだコメントを聞きたかった。取材に応じた人たちの中には、筆者と交流のある(あった)人も何人かおり、彼らから耳にしたエピソードのディープさに比べると、この内容では物足りない。神谷さん、あなたの「ゴジラVSビオランテ」への思いは、こんなものではないはずだ。
 資料的価値は満点…と思いきや、VSシリーズ最高のヒットとなった「ゴジラVSモスラ」の成績が「興収22億2千円」との記述。これはまったくの間違いで、「配収(配給収入)22億2千円」が正解。西暦1999年までは、映画の収入を表す単位は「配収」だったが、2000年からは「興収」に統一された。興収は映画館のチケット売上の総額であるのに対して、配収はそのうちの配給会社の取り分を指す。配収は興収の半分前後の額であることが多く、この記述では「ゴジラVSモスラ」が新記録を樹立することは、とうてい不可能だ。キネ旬ともあろう者が、こんなミスを犯すとは…。もうひとつ指摘すれば、マーケティング・宣伝実務や興行概況について、ほとんど触れていないのが不満だが、これは当「特殊映像ラボラトリー」の第13,14回「ゴジラVSシリーズの栄光」をお読みいただければよろしいかと。

http://animeanime.jp/special/archives/2009/10/13vs.html

 本書の奥付の協力者に、飯塚康行氏の名前があるが、彼こそVSシリーズにおける、取材者としての生き証人だ。朝日ソノラマ「宇宙船」がVSシリーズ公開時に刊行した、文庫サイズ(「ゴジラVSデストロイア」のみB5判)のメイキング本には、詳細な取材記事と共に、飯塚氏の撮影した現場写真、特写写真が多数掲載されている。実はこれは飯塚カメラマンが撮影したものの、ほんの一部。特撮現場に通って膨大な数の写真を撮影する飯塚カメラマンの仕事ぶりは、筆者が「宇宙船」のライターをやっていた頃、朝日ソノラマ社長室のあるフロアのロッカーに保管されていた。我々ライターは編集作業の合間に、VSシリーズの特撮現場を捉えた、飯塚氏の未掲載写真を、こっそりと見るのが楽しみだったのである。ソノラマ亡き後、あの膨大な(復活「ゴジラ」から、ミレニアム・シリーズまであるはずだ)写真の数々は、今どこに保管されているのだろう。あれこそ出版に値するものだ。なんとか写真集に出来ないものだろうか。

(3)あの時の少年たちは、感涙必至の好著「ウルトラマンになった男」
(1)時ならぬ、特撮本乱発の理由は?

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posted by animeanime at 2010.03.04
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