| [ 0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ 第5回クールアニメ・マーケティング・ヒストリー ] |
|
斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」 第5回 クールアニメ・マーケティング・ヒストリー(1)前編 斉藤守彦 【ホワット・イズ・クールアニメ?】 その「ヤマト」のヒットから1年余。東京ムービー新社(現・トムス・エンタテインメント)が初の本格的長編劇場用アニメ映画として「ルパン三世」(ここでは他のシリーズ作品と区別するために、「ルパンVS複製人間」と呼称する)を製作。1978年12月16日より東宝配給によって全国公開される。 【故・藤岡豊が目指した、“大人のためのアニメ「ルパン三世」】 「ストーリーも、絵の展開も、いかにスケールアップ出来るかが映画のポイントとなった。つまりテレビ・シリーズとの差別化を第一義に考えた」とは、「ルパンVS複製人間」当時、東京ムービー新社で宣伝・営業担当を、現在はトムス・エンタテインメントのスーパーバイザーを務める熊井良助の証言だ。 実際に、この“原点回帰”を目指した劇場版の監督候補には、ファースト・シリーズ初期編を演出した、大隅正秋(現・おおすみ正秋)の名があがったという。ところが「映画としての新しい魅力を構築する意味から、吉川惣司監督が劇場用として打ち出した、“クローン”に勝負を賭けた。 当時のマーケット環境も考慮した上で、「ルパンVS複製人間」という作品のビジネス・パワーを検証すると、いくつかのユニークなマーケティング戦略を発見することが出来る。 そうしたマーケット環境を考えても、親会社と子会社という関係こそあれ、違う配給会社同士が2本立てを組むという事態は、極めて珍しい。当時の配給関係者によれば、この2本立てを提案したのは、親会社である東宝とのことだ。つまり、1979年の時点では、現在とは逆にマーケットでは洋画の力が強く、東宝としては洋画系に邦画、それも未経験の“大人向けアニメ”を公開することに不安があったのだろう。女性をメインターゲットに据えた「ナイル殺人事件」とのカップリングは、「ルパンVS複製人間」にとっても有効であり、豪華2本立てというお得感を与えることも出来る。 クールアニメ・マーケティング・ヒストリー(1)後編 [筆者の紹介] |
| posted by animeanime at 14:04 | コメント (0) | トラックバック (0) |
| [ 0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ 第5回クールアニメ・マーケティング・ヒストリー ] |
|
斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」 第5回 クールアニメ・マーケティング・ヒストリー(1)後編 【豪華2本立て番組は、その後のシリーズでも継承された】 配給を手がけた東宝と東宝東和が、この2本立てとその興行成果を高く評価したことは、「ルパンVS複製人間」に続いて製作された「カリオストロの城」が「Mr.Boo!/ギャンブル大将」、「バビロンの黄金伝説」が「ランボー・怒りの脱出」と、いずれも東宝東和配給の外国映画とのカップリングで公開されたことが証明している。 こうした「ロードショー公開時には話題にならなかったが、下番線で人気を集める」、いわゆる“名画座ヒット作”が、当時は存在した。ジョージ・ルーカスの「アメリカン・グラフィティ」しかり、タイムトラベルSFの名作「ある日どこかで」しかり。「カリオストロの城」の場合、その後押しをしたのは、アニメ雑誌での記事や、宮崎駿監督の特集でその面白さを、遅ればせながら知った観客たちの存在であることは間違いない。 当時の新聞広告を見ると、東宝邦画系のメイン館である千代田劇場こそ「零戦燃ゆ」を続映したものの、渋谷、上野、新宿といった都内をはじめ、川崎、小田原、横須賀、甲府、静岡、浜松あたりまでこの番組の公開が告知されていることから、全国的に上映されたと判断して間違いないだろう。 【映画のマーケティングとは、作り手の「意思」を拡大していく作業】 「ルパンVS複製人間」は、配給・興行各社のマーケティング戦略によって、商業的には成功を収めることが出来た。しかし、その成功は、果たして藤岡の「意思」を充分に反映したものであっただろうか? 原作者モンキー・パンチから、映像化にあたっては全権を委託されている、東京ムービー新社の経営者としての藤岡の「意思」は、成功を収めたが、クリエイターとしての思いはどうであったのだろうか? クールアニメ・マーケティング・ヒストリー(2)前編 |
| posted by animeanime at 14:03 | コメント (0) | トラックバック (0) |
| [ 0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ 第5回クールアニメ・マーケティング・ヒストリー ] |
|
斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」 第5回 クールアニメ・マーケティング・ヒストリー(2)前編 斉藤守彦 「皆さん、心地よい疲労感をお感じになっているようで…」。 今でもはっきりと覚えている。1988年7月。公開直前に行われた「アキラ」の披露試写会。それに続いて帝国ホテルで開催された、完成記念パーティ(バブル時代は、何かにつけてこの種のパーティが行われていた)における、松岡功東宝社長(現・会長)の、これが乾杯の挨拶であった。 −原作者の大友克洋さんを監督に起用したのは、当初から決まっていたのでしょうか? −こだわりのある原作者ですもんね(笑)。 −とにかく「監督に叱られないように」という気持ちで(笑)。 −当時「アキラ」は連載中でしたが、大友監督としては、映画版はどのようなストーリーにしようと考えたのでしょうか? −そうですね。山形が金田を迎えに来る。 −上映時間が、どれだけになるのか(笑)。 −「アキラ」が従来のアニメ映画と異なる、例えば声優さんたちの声を最初に録音するプレスコ方式や、芸能山城組の起用、CGの使用など、新しい方法論のすべては、大友監督の意向と見て良いのでしょうか? −その一言を言ったが最後(笑)…。 たかがポスターと言うなかれ。映画のマーケティング戦略上、ポスターは非常に重要な役割を果たすアイテムなのである。映画を製作する人々、配給に携わる人々、実際に映画館で観客に接する興行の人々。この三者が、どのような映画を作り、どのような映画でビジネスを行うのか。ポスターはそのシンボルであり、フラグシップなのである。 それでも宣伝プロデューサー一年生の芝には、ある種の確信があったという。 その芝が、「アキラ」の観客対象としてターゲティングしたのは、中高生から大人という層だった。さて実際にはどのような客層だったのか?芝が当時、上司に報告するために作成した「アキラ・レポート」には、客層や興行概況が詳細に記されており、このレポートの冒頭には、次のようなことが書かれている。 「心地よい疲労感」とやらを感じつつ、今ひとつ懐疑的な東宝のお偉方を尻目に、「アキラ」は絶好調のスタートを切ったのだ。芝の目論見は当たった。いや、実際は彼女が想定した以上に、大人の観客が多かった。都内上映館である渋谷パレス座(現・渋谷シネパレス)では、一般券の売り上げ枚数が全体の51%を占め、高校・大学は29%、中学は7%という比率であった。 クールアニメ・マーケティング・ヒストリー(2)後編 |
| posted by animeanime at 14:02 | コメント (0) | トラックバック (0) |
| [ 0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ 第5回クールアニメ・マーケティング・ヒストリー ] |
|
斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」 第5回 クールアニメ・マーケティング・ヒストリー(2)後編 斉藤守彦 【“アニメに強い”名古屋だけの逆転現象】 ■ 第1週(7/16〜22)=一般72%、学生23%、中学生4% この傾向は、他の大都市においても、名古屋を除いて同様の現象を見せている。 名古屋だけが大学・高校生の比率が60%を占めたのは、特にアニメが強い地域であり、「アニメ・ファンの高校生をよく集客したということか」と、レポートには記されている。観客の男女比は7対3で男性有利と、これまた芝が事前に予想した通りとなった。 また翌89年3月、“国際映画祭参加バージョン”と銘打った「アキラ・完全版」がテアトル新宿で公開されており、これが配収1億円をあげたと、当時業界紙記者であった筆者は記憶しているが、あいにくそれを証明する資料が見あたらない。 −結局「アキラ」の製作費は、いくらかかったんですか? −アメリカで、「アキラ」のリメイクが計画されているという情報が、何度か入ってきたのですが、現在の進行状況は? 最後にした質問から得られた回答は、実に意義の深いものだった。 −なぜ講談社は、大友克洋という作家を、そこまで守ったのですか?アニメ制作中にも、色々とトラブルや行き違いがあったと思います。しかし御社は、大友克洋の意向のみならず、全人格さえ尊重したように見えます。 作家の意向を尊重し、守る姿勢。「出版社とは、そういうものだ。それは映画を作る時でも変わらない」というこの意見を、筆者は以前も耳にしたことがある。それは、宮崎駿監督のアニメ映画を作り続けた、徳間書店の総帥である故・徳間康快にインタヴューした時だ。 いかにテクノロジーが発達した世の中になろうと、映画をオートメーションで作ることは出来ない。そこには血が通った人間の主義主張、思想感情が宿ってこそ、初めて人の心を打つことが出来るのだ。コンテンツ・メーカーたる作家を守る姿勢を、映画製作においても曲げなかった出版社に対して、プロデューサーが圧倒的な権限を持つテレビ局は、映画製作の面でも監督よりも出資企業、製作者の意向を最優先しているのは対照的だ。 (取材・資料提供にご協力いただいた皆様に、心から感謝を捧げます) 次回「特殊映像ラボラトリー」クールアニメ・マーケティング・ヒストリー その3に続く!! クールアニメ・マーケティング・ヒストリー(1)前編 |
| posted by animeanime at 14:01 | コメント (0) | トラックバック (0) |