検索

clear.gif



120_600_2.jpg
カレンダー
バックナンバー

2010.03.04
0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ 特撮本ぶっちゃけレビュー ]
clear.gif

斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」
第17回 特撮本ぶっちゃけレビュー

斉藤 守彦

●時ならぬ、特撮本乱発の理由は?

 年末から年始にかけて、書店に特撮関係の本が増えていたのには、ちょっと驚いた。新作のTVシリーズはともかく、特撮映画の類はオリジナル作品がほとんど製作・公開されていない状況であるにも関わらず、これだけ特撮関係の書籍が書店に並んでいる。さては誰かが特撮書籍ブームでも企んでいるのか…と思い、特撮ライター氏に聞いてみた。
 「まあ特別な理由ってぇのはないんじゃないかなあ。ゴジラが近く復活するとも聞いてないから、そのための布石だとも思えないし」「どういう人が買ってるんでしょうねえ?」「そりゃあ、40〜50代の人たちでしょう」「呪われた世代ですからねえ、我々は。幼少期に『ウルトラQ』『ウルトラマン』『ウルトラセブン』の洗礼を受け、70年代には毎日TVで特撮もののシリーズを見て育った」「その70年代の特撮シリーズだって、全部ゴールデン・タイムにオンエアしたんだからね。今では信じられないよ」
 そんなやりとりをしながら、この際だから最近出版された特撮本のレビューを書くことを思いついた。ただし筆者の場合、ウェブや雑誌に映画関係の原稿を書いているが、この3年間で3冊の書籍を著した実績というか前歴・前科を持つ。1冊の本が世に出るまでには、著者と編集者=出版社のやりとりが不可欠だ。そのプロセスにおける、著者と編集者の役割分担や、どちらの意向が誌面に反映されたのか、経験則から内部事情を推察することが出来る。そんな視点に基づいたレビューをお送りしよう。
 
●新しいスタンダードになるであろう「東宝特撮総進撃」

 「映画秘宝」でお馴染みの洋泉社から、特撮本が続けて2冊刊行された。ひとつはムックで「別冊映画秘宝/東宝特撮総進撃」。タイトル通り、東宝特撮映画の名場面や見どころをダイジェストしたものだ。これまでにもそうした出版物は山ほどあったが、このムックの面白いところは、著名人やライター、特撮関係者らにアンケートをとり、その人気投票の順に(1位は「サンダ対ガイラ」!!)作品を解説しているところだ。しかも単に特撮ライターが解説を書くのではなく、その作品をこよなく愛する人物、時には映画監督や特撮スタッフがエピソードや熱い思いを吐露する。つまり観客の視点で特撮映画の名作・傑作を語っているあたりがユニークだ。
 この誌面作りは、特撮本のみならず、映画関係書籍の新しいスタンダード・パターンになるかもしれない。評論家による作品論は既に飽きられ、さりとて一番観客による感想や意見の羅列はクォリティの点で疑問がある。本書のような「オレ的ベスト・ムービー」についてスタッフや、特定ジャンルについて深い知識と愛情を持つ著名人がわいわいと語り合うスタイルは読んでいても楽しいし、語り手の思わぬ一面を発見できる面白さもある。
 総じて楽しい誌面作りになっているものの、写真の上に文字を乗っけているページがいくつかあり、これは少々読みづらい。またこの種のムックには必須の作品データにも間違いがある。P46とP157「ゴジラ×メカゴジラ」の特殊技術は、浅田英一ではなく菊地雄一が正しい。きくっちゃん、傷つくなあ…。

(2)川北特技監督が存分に、そして赤裸々に語った「特撮魂」ほか
(3)あの時の少年たちは、感涙必至の好著「ウルトラマンになった男」

[筆者の紹介]
1961年生れ。静岡県浜松市出身。
映画業界紙記者、編集長の経験の後、映画ジャーナリスト、アナリストとして独立。「INVITATION」誌で「映画経済スタジアム」を連載するほか、多数のメディアで執筆。データを基にした映画業界分析に定評がある。「宇宙船」「スターログ日本版」等の雑誌に寄稿するなど、特撮映画は特に得意な分野としている。

"「特殊映像ラボラトリー」第17回 特撮本ぶっちゃけレビュー" »
clear.gif
animeanime13:31 | (0) | (0)
0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ 特撮本ぶっちゃけレビュー ]
clear.gif

斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」
第17回 特撮本ぶっちゃけレビュー

斉藤 守彦

●川北特技監督が存分に、そして赤裸々に語った「特撮魂」

 これも洋泉社が発行した書籍「特撮魂/東宝特撮奮戦記」。著者が川北紘一特技監督本人になっていることからも、川北氏の生い立ちから映画界入りまで、そして東宝での特撮修業から監督デヴュー、「さよならジュピター」「ガンヘッド」、ゴジラVSシリーズなどについて語り起こした、まさしくオール・ザット・川北紘一な一冊だ。
 これまで川北特技監督をフィーチャーした書籍には、「ゴジラVSスペースゴジラ」公開にあわせて徳間書店が発行した、冠木新一・著「君もゴジラを創ってみないか(ちょっと気恥ずかしくなるタイトルだ)/川北紘一特撮ワールド」があるが、これは冠木氏による川北特技監督へのインタヴューと「−VSスペースゴジラ」の撮影状況が交互に描かれたもので、純粋な自伝とは言えない。
 今回の「特撮魂」は、内容的にもこの種の芸談語り下ろしものにありがちな「あれもオレがやった」「これもオレが成功させた」といった、“手柄独り占め”(特に映画宣伝マンの本には、この傾向が強い)に陥ることなく、失敗は失敗と認め、なぜそうなったかを現在の視点で冷静に分析しているあたり、潔ささえ感じるほどだ。
 VSシリーズ最終作となった「ゴジラVSデストロイア」について触れた章では、メルトダウンを起こして溶解していくゴジラをどう撮影したかを、詳細に語っている。願わくば、こうした特殊撮影の“特殊”技術を解説した部分が、もっと欲しかった。掲載する写真も連動したものであればベストだ。何よりも川北氏は“特技”監督なのだから、著作においても、まず演出技術面での特徴・成果を前面に出すべきだろう。筆者が初めて特撮映画の撮影現場を取材したのは、2001年の「ゴジラ・モスラ・キングギドラ/大怪獣総攻撃」の時だが、その時既に東宝スタジオ第9ステージいっぱいにジオラマセットを組み、どのカメラポジションからでも撮影が可能な、東宝特撮のお家芸とも言うべき手段が用いられていなかった。川北特技監督の演出を、つぶさに研究・検証した書物を期待したいところだ。
 
●デカい。厚い。高い。「平成ゴジラ・クロニクル」

 その川北紘一特技監督が心血を注いだ、平成ゴジラ・シリーズ=VSシリーズのすべてが網羅されているのが、キネマ旬報社発行の「平成ゴジラ・クロニクル」だ。A4判、厚さ2.1cm(筆者実測)、価格4600円(税抜き)という、まさに大冊。しかも総ページ数272ページの半分以上がカラーページで、VSシリーズ6作品の内容に詳しく触れているばかりか、秘蔵のメイキング写真や資料も満載とくれば、ファンにはたまらない。 
 写真類の充実度は最高と言って良い。またチラシ、プレスシート、割引券などの再録は、当時を知る者の思い出をかきたてるだろう。インタヴューも特撮スタッフのみならず、幅広く関係者を網羅しているが、欲を言えばもう少し突っ込んだコメントを聞きたかった。取材に応じた人たちの中には、筆者と交流のある(あった)人も何人かおり、彼らから耳にしたエピソードのディープさに比べると、この内容では物足りない。神谷さん、あなたの「ゴジラVSビオランテ」への思いは、こんなものではないはずだ。
 資料的価値は満点…と思いきや、VSシリーズ最高のヒットとなった「ゴジラVSモスラ」の成績が「興収22億2千円」との記述。これはまったくの間違いで、「配収(配給収入)22億2千円」が正解。西暦1999年までは、映画の収入を表す単位は「配収」だったが、2000年からは「興収」に統一された。興収は映画館のチケット売上の総額であるのに対して、配収はそのうちの配給会社の取り分を指す。配収は興収の半分前後の額であることが多く、この記述では「ゴジラVSモスラ」が新記録を樹立することは、とうてい不可能だ。キネ旬ともあろう者が、こんなミスを犯すとは…。もうひとつ指摘すれば、マーケティング・宣伝実務や興行概況について、ほとんど触れていないのが不満だが、これは当「特殊映像ラボラトリー」の第13,14回「ゴジラVSシリーズの栄光」をお読みいただければよろしいかと。

http://animeanime.jp/special/archives/2009/10/13vs.html

 本書の奥付の協力者に、飯塚康行氏の名前があるが、彼こそVSシリーズにおける、取材者としての生き証人だ。朝日ソノラマ「宇宙船」がVSシリーズ公開時に刊行した、文庫サイズ(「ゴジラVSデストロイア」のみB5判)のメイキング本には、詳細な取材記事と共に、飯塚氏の撮影した現場写真、特写写真が多数掲載されている。実はこれは飯塚カメラマンが撮影したものの、ほんの一部。特撮現場に通って膨大な数の写真を撮影する飯塚カメラマンの仕事ぶりは、筆者が「宇宙船」のライターをやっていた頃、朝日ソノラマ社長室のあるフロアのロッカーに保管されていた。我々ライターは編集作業の合間に、VSシリーズの特撮現場を捉えた、飯塚氏の未掲載写真を、こっそりと見るのが楽しみだったのである。ソノラマ亡き後、あの膨大な(復活「ゴジラ」から、ミレニアム・シリーズまであるはずだ)写真の数々は、今どこに保管されているのだろう。あれこそ出版に値するものだ。なんとか写真集に出来ないものだろうか。

(3)あの時の少年たちは、感涙必至の好著「ウルトラマンになった男」
(1)時ならぬ、特撮本乱発の理由は?

"「特殊映像ラボラトリー」第17回 特撮本ぶっちゃけレビュー-2-" »
clear.gif
animeanime13:30 | (0) | (0)
0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ 特撮本ぶっちゃけレビュー ]
clear.gif

斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」
第17回 特撮本ぶっちゃけレビュー

斉藤 守彦

●あの時の少年たちは、感涙必至の好著「ウルトラマンになった男」 

 最後にウルトラマンのスーツアクター(という呼び方は、当時なかったが)であった、古谷敏氏の回想録「ウルトラマンになった男」を取りあげたい。
 河崎実監督が、本書を読んで「泣いたよ。涙がぽろぼろ。ウルトラマンを好きでよかった、と心底思った」と、自身のブログに感想を書かれていたが、まったく同感。少年時代に「ウルトラマン」「ウルトラセブン」を見た者にとっては胸が熱くなる、感涙必至の好著である。
 平成ウルトラ放映中に、スーツアクターの存在が注目を浴び、特撮雑誌等に登場することはあったが、それはどちらかといえば、新作のパブリシティ的な扱いであり、旧作映画やTVシリーズでのスーツアクターの仕事ぶりということになると、初代ゴジラ・中島春雄氏への取材記事、きくち英一氏や平成ゴジラ・シリーズの薩摩剣八郎氏による著書等はあるが、彼らの演技と映像的な効果を客観的な視点で捉えた研究や、掘り下げた検証は行われてこなかった。そういう意味では「ウルトラマンになった男」の刊行は、遅すぎた感さえある。日本人であれば知らない者はいないであろうビッグ・タイトル「ウルトラマン」の、タイトルロールを実質的に演じた俳優が、自ら舞台裏や撮影中のエピソード、苦心談などを書き記したのだ。後にも先にもこれほどリアルな記録が、世に出ることはないだろう。

 本書での白眉は、古谷氏がウルトラマンという“主役でありながら、顔を出して演技が出来ない”ことに対する、俳優としてのジレンマが描かれていることである。苛酷な撮影に耐えかね、降板を申し出る決意をした古谷氏は、円谷プロへ行くべく渋谷からバスに乗る。ところが車内にいた4人の子供たちが、ウルトラマンの話題に夢中になり、興奮している様子を見て、降板を思いとどまる。このくだりは、素晴らしく感動的なエピソードだ。「ウルトラマン」をリアルタイムで見た読者の多くが、この時の4人の子供たちと自分を重ね合わせたことだろう。
 発見も多々ある。ウルトラマンのスペシウム光線を発射するポーズが、実は「理由なき反抗」のジェームズ・ディーンに影響されたものだとか、古谷ウルトラマンにとって、最強の怪獣はゼットンでもメフィラス星人でもなく「中島さん」だったこと等々…。
 ちょっと照れくさそうで、しかし気配りを忘れない丁寧な文章は、爽やかで気取りがなく、読みやすい。ただし「ウルトラセブン」終了後に立ち上げた催事会社ビンプロモーションを撤収したあたりから2007年まで、一気に文章が飛んでいるのが気にかかる。無論その時代は、直接ウルトラとは関係なく、筆者としても胸に留めておきたいであろう。その気持ちは分かるのだが、空白の時間を“ウルトラマンを演じた男”が、どう過ごしていたかは、ぜひとも知りたいところである。

 本書の誕生は、2007年秋に古谷氏が成田亨展を見に行った際、成田夫人あてに名刺を置いて来たことが発端となった。その後取材を受けたことから、アンヌ=ひし美ゆり子が古谷氏と再会を果たし、彼女の勧めで“フルヤちゃんしか知らないウルトラマンの話”を語ることになり、それを書籍として実現させたのが、現在円谷プロでプロデューサーを務めているフジ・アキコ=桜井浩子だ。本書の執筆中も、アンヌは「アマギ隊員、ちゃんと書いてますか?」と連絡をし、著者を激励したという。「ウルトラマン」ではスーツアクターとして、「ウルトラセブン」では俳優として、古谷氏の人柄と仕事ぶりを知る、ふたりのヒロインの努力なかりせば、本書が世に出ることはなかっただろう。
 ウルトラマンを好きで、本当に、本当に良かった。

(1)時ならぬ、特撮本乱発の理由は?
(2)川北特技監督が存分に、そして赤裸々に語った「特撮魂」ほか

"「特殊映像ラボラトリー」第17回 特撮本ぶっちゃけレビュー-3-" »
clear.gif
animeanime13:29 | (0) | (0)